宮澤夕貴

ホーバス体制と違うスタイル「遠征の後半になってチーム的にも噛み合ってきている」

9月下旬から開催されるワールドカップに向けチーム強化を進めている女子日本代表は、5月にかけて本大会の開催地オーストラリアに遠征し、オーストラリア代表と強化試合を行った。そこで攻守に渡り、抜群の安定感を見せていたのが宮澤夕貴だ。2月に大阪で行われたワールドカップ最終予選を欠場していた宮澤にとって、恩塚亨ヘッドコーチ体制では初の代表だったが、引き続きチームに欠かせない存在であることを証明した。

選手の自主性、創造性を重視する恩塚ヘッドコーチの指向する戦い方は、前任者のトム・ホーバスとは大きな違いがある。その点については宮澤も強く感じており、新しいスタイルの可能性と課題を次のようにとらえている。「トムさんの時は個々の役割が明確だったので、自分のやるべきことがはっきりしていました。今は自由に一人ひとりの判断でプレーしているので、それが噛み合った時は良いプレーができますが、そうでない時に『えっ、何をするの?』と止まってしまうこともあり、戸惑いも多かったです。ただ、遠征の後半になってくると、チーム的にも噛み合ってきていると感じてきたところです」

また、ワールドカップと同じ舞台を経験できたことは、本大会に向けて様々な面で収穫があったと続ける。「オーストラリアは日本にはない強さ、高さがあるので、『ここで、ブロックに来るんだ』といった感触は久しぶりでした。このプレーはオーストラリアだったら対応されるといったことをあらためて確かめられたと思います。また、本番と同じコートで試合をできたことでイメージしやすくなりました。他にもオーストラリアはどういう食べ物があるなど、自分のコンディショニングを考える面で良い材料になったと思います」

宮澤夕貴

東京五輪決勝で何もできなった悔しさ「もっと日本の力になれる選手になりたい」

リオ五輪から東京五輪までの5年間、宮澤は代表の中心として走り続けてきた。心身ともに大きな負荷がかかっていたのは間違いないが、銀メダルという大きな成果を勝ち取った後でも再び代表の舞台に戻ってくることを決断した。「東京五輪前、大会が終わった後の代表はそんなに考えていなかったです。でも決勝でアメリカに負けた時、『もう1回やりたい』と思いました。その後はENEOS(サンフラワーズ)から富士通(レッドウェーブ)に移籍した1年目で新鮮な気持ちでWリーグに臨み、そのまま代表活動に入れているのでモチベーションには影響はなく、いつも通り代表は代表で頑張ろうという気持ちです」

決勝の後、すぐに代表継続の思いが湧き上がった理由は悔しさだと宮澤は言う。「決勝は何もできなかったです。シュートだけではアメリカ相手に通用しない。もっと自分がドライブとかパスができたら日本の力になれたという思いもありました。その部分で悔しさはありました」

東京五輪も含め、ここ数シーズンはコンディションに苦しんでいた宮澤だが、「ひざのケガなどがあって、今までウェイトトレーニングができていなかったです。それが今年は重いものも持てるようになって、基礎作りから始めています」と、状態は確実に良くなっている。

また、代表でのキャリアに加え、年齢も上となってきたことで若手の指南役としての働きも意識している。「(第2次強化合宿の参加メンバーでは)年齢が上から2番目となり、チームを引っ張っていきたい気持ちもあります。代表経験のない選手も多いのでその分、『こういう動きをした方がいいんじゃないか』といったフォローをするように率先してプレー中に気づいたらやるようにしています。オリンピックに比べるとチームが若くなったのでいろいろなコミュニケーションを取りながら前向きにチームとしてやっていきたいです」

宮澤夕貴

トルコ戦は「良くなってきている成果をどう表現できるかのチャレンジ」

今週末はワールドカップに向けた貴重な実戦となるトルコ代表との強化試合を行う。宮澤は次のテーマを持って臨みたいと語る。「試合や練習を重ねるにつれて段々、良くなってきているのは分かっています。その成果をトルコ戦でどう表現できるのか。相手はディフェンスが強いチームで、相手の動きに対してどのように動くのかを日々練習しています。それを自分たちの判断でどうやってプレーしていけるか、そのチャレンジだと思います」

そして、次のように意気込みを語ってくれた。「自分にとってファンの皆さんの前で初めて恩塚さんのバスケットをすることになります。それをうまく表現したいですし、自分の役割である3ポイントシュート、ディフェンス、リバウンドの役割をしっかり果たしてチームに貢献する。日本の皆さんにバスケットをもっと楽しんでもらえるように頑張ります」

本人がそう語るように、宮澤の大きな武器は『3&D』だ。それでも、創造力を重視する新しい代表の中で、宮澤がより多彩なプレーでチームを牽引することができれば、それこそが代表の新たな強みとなるはずだ。