川崎ブレイブサンダースの藤井祐眞は2021-22シーズンのBリーグでレギュラーシーズンMVPを受賞した。3年連続となるベストディフェンダー賞と合わせ、名実ともにBリーグ最強ガードとして大暴れした一年となった。新たにキャプテンに就任し、自己ベストを更新する1試合平均14.1得点、5.5アシストと充実のシーズンを送ったが、一方でチャンピオンシップでは中心選手のパブロ・アギラールが直前になって欠場となるアクシデントに見舞われセミファイナルで敗退。Bリーグ初年度以来のファイナル進出を再び逃す悔しさを味わった藤井に、この濃密なシーズンを振り返ってもらった。
初めて務めたキャプテンについての自己評価は「70点から80点」
――MVP受賞おめでとうございます。あらためてシーズンを終えてどんな気持ちでしょうか。
Bリーグアワードが終わり、いろいろな方たちからおめでとうと言ってもらえたのはすごくうれしかったです。シーズンを振り返ってみると、個人的には良いシーズンだったと思います。初めてキャプテンを務め、先発ポイントガードとして一年を通して使ってもらったのも初めてでした。本当にいろいろな経験をさせてもらって楽しかったです。良いことだけでなく、調子の悪い時、コンディションがあまり良くない時もありましたが、そこを乗り越えてシーズン終盤戦は自分のパフォーマンスが上がっていきました。
――不動の先発ポイントガードとなり、名実ともに川崎のエースとしてコートに立ち続けました。そのことへのプレッシャーを感じたことはありましたか。
そういうことは気にせずに、楽しんでプレーしていました。気持ちのところはこれまでと変わっていないです。昔との違いはプレータイムが15分か、25分かの違いなだけで、25分出ている方が楽しいです。
――今シーズンからキャプテンになりました。前任者の篠山竜青選手は、スピーチ力に優れていてコート内外で目立つ存在です。コート外の部分で不安はなかったですか。
それはなかったです。そもそも(佐藤)賢次さんから「今シーズンのスローガンであるMOVEを一番体現してくれるのが祐眞だと思っているので、キャプテンとしてチームを引っ張ってほしい」と言われました。その時に「はい、分かりました」と返事をしましたが、同時に「コートの中では頑張りますが、コート外のコメントとかそういう部分は無理です。そこはできないですけど大丈夫ですか?」とはっきり伝えました(笑)。そうしたら賢次さんは「俺もそこまで考えなかったので、お願いします」と言ってくれて、プレーで頑張ってくれとのことだったのでキャプテンを承諾しました。だから、コート外の面についての不安は全くなかったです。
――では、キャプテンとしての自己評価を教えてください。
個人としてはシーズンMVPもいただけましたし、スタッツも上がって非常に良かったと思います。チームとしても昨シーズンよりも良い勝率を残し、地区2位でチャンピオンシップをホームで開催できました。そこは昨シーズンよりステップアップしたと感じています。ただ、優勝できる力はあったのに、そこへと導くことはできなかったので70点から80点くらいだと思います。
――今年は30歳のシーズンでした。もう、若手ではなくベテランになったという意識はありましたか。また、20代前半の時と比べて、体力面で落ちたと感じたことはありますか。
若手と思っていただいて全く問題ありませんし、若手のつもりで頑張っていきます。個人的には体力が落ちたと感じることはないです。24歳、25歳の時と比べるとプレータイムが増えましたし、自分の役割も変わっていて比較するのは難しいですが、個人的には今の方が動けているんじゃないかと思います。
CSセミファイナル「いつものラインナップで戦い抜く力があれば結果は変わっていた」
――チャンピオンシップについて聞かせてください。セミファイナルで宇都宮ブレックスに敗れましたが、パブロ・アギラール選手が直前での欠場となりチームの大きな強みであるビッグラインナップを使えませんでした。
これは言い訳にしかならないですが、パブロがいなくて痛かったのは事実です。宇都宮の(チェイス)フィーラー選手はオフェンスリバウンド、スティール、要所の3ポイントシュートとマルチに活躍していましたが、それをウチでやってくれるのがパブロです。そういった意味でも結果論になってしまいますが、彼の不在で苦労したところはありました。
ただ、僕らのビッグラインナップはオプションであり、25分、30分と使うわけではないです。武器が減ったのは大きいですが、シーズンを通してメインでやってきたわけではないです。いつものラインナップで戦い抜く力があれば結果は変わっていたと思うので、そこが足りなかったと思います。最後はちょっとパブロ、ニック(ファジーカス)に頼ってしまった部分がありました。セミファイナルで長谷川(技)さんとパブロ、ディフェンスを支えてくれていた選手2人がいなかったのは大きかったですが、その分チームでステップアップして、みんなで穴を埋めていく力が足りなかった。最後にこういうことが起こったのは残念でしたが、その影響以上に宇都宮さんが強かったと思います。
――これで宇都宮相手に2年続けてセミファイナルで敗退となりました。結果は同じですが、内容について昨シーズンとの違いを感じるところはありますか。
昨シーズンは本当に圧倒されました。ブレックスアリーナで第1戦の出だしで離され、そこから追い上げてなんとかくらいつきましたが届かなかったです。2戦目は前半こそ良い勝負ができましたが、後半は相手がすごくて、力負けした感じでした。今シーズンは運がなかった部分もあり、不完全燃焼なところはありますが、着実にチームがステップアップしていると感じられました。そこは来シーズンに繋がると思います。
新シーズンに向けて、「そろそろ優勝させてくれと思います」
――ちなみにファイナルは見ましたか、それとも見ることはできなかったですか。
ファイナルは『バスケットLIVE 』で見ていました。正直、セミファイナルが終わった直後は興味が持てなかったですが、いざ試合が始まったら気になって見てしまいました。感想は、比江島(慎)選手がすごかったです。(高校時代にウインターカップ3連覇と)東京体育館では負けなしの男で、彼の舞台だったなと。シーズンを通してベストなパフォーマンスをしたかといえばそうではなかったと思いますが、チャンピオンシップはずっとベストなパフォーマンスを続けていました。シーズン中はフリースローの確率で苦戦していましたけど、僕らとの試合はパーフェクトでした。ファイナルの琉球(ゴールデンキングス)戦は最後に数本外していましたが、それまでずっと決め続けていました。チャンピオンシップで力を発揮できる選手は本当に素晴らしいと思います。あとはお互いにタフだと感じました。琉球も並里(成)選手がいなくて、不運だったと思いますが、それでもタフに戦っていた。すごく良い試合でした。
――早々に川崎は10選手との契約継続を発表しました。また気の早い話ですが、新シーズンも充実の戦力で優勝候補の一角として大きな期待を寄せられると思います。あらためてタイトルへの思いを聞かせてください。
そろそろ優勝させてくれと思います。本当に優勝できると思っていて、昨シーズンと全く違う手応えでした。コロナ禍で打ち切りになったシーズンもそうでしたが、「優勝いけるでしょ」という雰囲気がチームにありました。だから、今シーズンこそ「またか、マジか」という気持ちでした。
そして、ニックがゲームMVPを受賞した時に「僕も歳なんで」とよく言います。今も素晴らしいパフォーマンスを維持していますが、年齢も年齢です。彼を優勝させたい気持ちは強く持っています。
――いろいろなチーム活動も終わり、オフに入ってやりたいと思い浮かぶものはありますか。
本当に今は休みたいです。そこからバシオ(小林遥太)、船生(誠也)選手など仲が良い選手たちと集まって競馬や麻雀をやりたいです。
――最後にファンの方たちへのメッセージをお願いします。
今シーズンもたくさんの応援ありがとうございます。皆さんをファイナルの舞台に連れていけず、優勝もできなかったですが、来シーズンこそは必ず優勝する姿を見せたいと思うのでまた一緒に戦ってください。
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