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「苦しいことから逃げようとするな。乗り越えろ」

幼い頃に苦しいこと、辛いことを経験すると、人は物事をネガティブに考えてしまうのが常。しかし、マイナス志向がポジティブな結果を生む可能性は限りなくゼロに近い。ポジティブ・シンキングこそ、モチベーションアップの動機になる。今シーズンのNBAには、それを体現したルーキーがいる。ドラフト全体12位でジャズから指名され、後にホークスにトレードされたトリアン・プリンスだ。

プリンスは、4年を過ごしたベイラー大時代には、2年目の2013-14シーズンにビッグ12カンファレンスのシックスマン賞にも輝いている。彼は学位を取得した上で、NBA選手になるという夢を実現させた。

幼い頃には、父親とホームレス専用シェルターでの暮らしを経験するなど、ごく当たり前の生活ができない環境で育った。しかしプリンスは、決して夢をあきらめることなく、何事にも一生懸命に取り組み続け、すべての経験を自分の糧に変えた。

「苦しいことから逃げようとするな。乗り越えろ。その姿勢が人格を形成する」

人生のスローガンとも呼べる一文を、プリンスはTwitterに投稿している。幼い頃の経験から、この姿勢を身に着けたプリンスは、念願のNBA選手となった今も謙虚さを失わず、日々の出来事、周囲に感謝する気持ちを忘れていない。

辛い出来事をポジティブにとらえて自らを成長させたプリンスは、NBAという夢の舞台へとたどり着いた

「人生においての基準や期待値を低く見積もる必要はない」

『SLAM』とのインタビューで、「ドラフトで指名されてから、これまでの人生についてじっくり考えたことはあった?」と質問されたプリンスは、「日々、考えている。昔のことを振り返っているよ」と答えた。

「ルーキーの雑務をやることだって苦とも思わない。ここにいられるのには理由があると分かっているから。新人選手としてのポジションを勝ち取らないといけないからね。すべての経験に感謝しているよ。何もかもが当たり前だなんて思わない。毎日のように、ここまでたどりつくのに経験してきたことを思い返している。昔を振り返ることで、もっと良い行ないをしようという気持ちになるし、周りの人のために、もっとハードに取り組もうという気になるんだ」

自分と同様に、困難に直面している子供たちへの助言を求められたプリンスは、「良くないことが人生で起こっても、それで悪い人間になってはいけない。何かのせいにしてはいけない」と言う。

「僕はこれまで、ネガティブなことをポジティブに考えてきた。いつだって目上の人には丁寧な言葉を使ってきた。『そんな言い方をする必要はない』と言ってくれる人もいたけれど、これが僕の知る言語だから。人生で経験するのは辛いことばかり。そこに勝ち負けはない。自分自身を卑下する必要もなければ、人生においての基準や期待値を低く見積もる必要もない。辛い経験をすれば、より欲するはずだから」

プリンスは、10月27日に行なわれたウィザーズ戦で、出場時間わずか4分ながらも公式戦デビューを飾った。29日のセブンティシクサーズ戦では6分のプレータイムを得て、4得点を挙げている。ルーキーとしては上々のスタートと言えるだろう。

大学時代からの持ち味である守備でチームに貢献したいと言うプリンスは、今シーズンからスパーズのエースとなったカワイ・レナードを目標に挙げている。

「カワイ・レナードのプレーは参考している。彼とは似たような道を歩んでいける気がするんだ。これからも色々と学びながら経験を積めば、彼のようなキャリアを築き上げることができるかもしれない。焦らず取り組んで、いつかホークスで彼のような存在になれればいいね」