辻直人

文=丸山素行 写真=野口岳彦

記念すべきファーストゴールとなった長距離砲

千葉ジェッツと川崎ブレイブサンダースによる先出し開幕戦は、千葉のお株を奪うトランジションオフェンスを見せた川崎が81-72で勝利した。

立ち上がり、開幕戦の重圧のせいか両チームともにシュートが決まらず重たい展開となったが、それでも辻直人が得意の長距離砲で今シーズン最初の得点を記録すると、続けて2本目の3ポイントシュートも成功させ8-0と走り、川崎が主導権を握った。

辻は4本の3ポイントシュ―トを含むゲームハイの20得点を挙げ、チームの勝利に大きく貢献することに。「そんなに気負いすぎず、良い形で1本目が入ったので、それでより一層ゲームに対して集中できたのが良かったのかな」と試合を振り返った。

この試合、ケガの回復が遅れたニック・ファジーカスが出場できなかった。それでも結果的にはファジーカス頼みにならずチームプレーが浸透したことが勝利につながったと辻は言う。「ニックがいなかった分、と言ったらニックに申し訳ないんですけど、ニックのポストアップに頼ることもなかったです(笑)。その分、全員バスケットでパス回しが良かったです。バーノン(マクリン)以外の4人はすごくゴールにアタックしていたので、今日は良かったと」

辻直人

「アシストでも得点でも、どっちでも大丈夫です」

ファジーカス不在の影響が大きいのかもしれないが、昨日の試合では辻がピック&ロールからクリエイトするシーンが昨シーズンよりも減少していた。チーム全員がリングへのアタックとパスアウトを繰り返すことで、千葉のディフェンスを揺さぶり、辻がよりシューターの役割を果たした印象を受けた。

「やりやすいというのは特にはないんですけど」と前置きするも、「でもクリエイトしてくれる選手がいるので、自分がクリエイトせず、より一層アウトサイドシュートに専念できますね」と辻は言う。

また「自分がクリエイトするのが少なくなる分、体力的にも楽にはなります。相手のディフェンスにとっても自分が外で待っていることによって、周りに良い影響を与えると思う」とシューターの役割に徹することで生まれるメリットにも言及した。

視野が広く、抜群のパスセンスを併せ持つ辻は、これまでも試合のハイライトとなるような『キラーパス』を何度も繰り出してきた。そうしたプレーはチームに勢いをもたらし、個人としても気分が乗るものだ。今シーズンは華麗なアシストが少なくなるのではと問いかけると、「自分は単純なので、アシストでも自分が点を決めても、気持ちは乗る方なのでどっちでも大丈夫です」とプレースタイルの変化に動揺は見られない。

ファジーカス不在の中、強豪の千葉を撃破したことはチームの自信につながる。ファジーカスをシーズン始めから帰化選手として起用でき、新外国籍選手と併用するビッグラインナップ構想など、川崎の新しいバスケットへの期待は膨らむ。ただチームのスタイルが変われど、辻の存在感はこれからも不変に違いない。

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