「勝ち切れたのは後半のディフェンスだと思う」
名古屋ダイヤモンドドルフィンズは信州ブレイブウォリアーズとの第1戦に苦しみながらも勝利した。第3クォーターを終えた時点で53-53の同点と、言わば信州が得意とするロースコアゲームに持ち込まれたが、第4クォーターを29-12と圧倒し、最終的にはリーグ2位の得点力を見せつける完勝となった。
終盤で違いを生んだのが司令塔の齋藤拓実だ。齋藤は最終クォーターの約5分30秒の間に、逆転の3ポイントシュートを決め、3アシスト、2スティールを記録し、ビッグクォーターを作り出す中心にいた。齋藤は「フルコートマンツーやゾーンのチェンジングをしながら、上手くディフレクションしてスティールできた部分がありました。そこから点数に繋げられたのが良かった」と話し、特にディフェンス面での充実を強調した。
また「クラッチタイムでも(伊藤)達哉さんが出られるのはウチの強みでもあります」とも語り、自分がベンチに下がっても同じ強度を保ち、ゲームクロージングができる伊藤の存在を心強く感じている。
勝負を分けた最終クォーター中盤には、自身のスティールから走り、バックビハインドパスでオヴィ・ソコのダンクをお膳立てした。この日一番会場が盛り上がったシーンだが、齋藤はあくまで冷静だった。「相手ビッグマンが2人ディフェンスにいて、彼らの視界に入ってないと感じたし、オヴィは身体能力が高いので、ピンポイントで出せたらダンクに持っていけると思っていました」
この勝利で名古屋Dは23勝10敗とし、チャンピオンシップ進出圏内の西地区3位を守っている。自慢の得点力が不発となる中、ディフェンスから勝利を手繰り寄せたこの一戦は、チャンピオンシップを見据えるチームにとって大きな価値がある。齋藤は言う。
「チャンピオンシップにはディフェンスの良いチームが多く出てくると思う。オフェンスがリーグ2位でもディフェンスが上手くいかないと得点にも繋がらないし、これだけ速い展開でやっても、(第3クォーターまで)53点しか取れていなかったので、勝ち切れたのは後半のディフェンスだと思う。オフェンスじゃなくディフェンスにしっかりフォーカスした結果がこれで、タフな試合を勝ち切れたのは良かったです」
「ポイントガートからすると、頭の良い選手は助かります」
名古屋Dは滋賀レイクスターズで平均20.1得点を挙げたソコを獲得し、戦力アップに成功した。ソコは広島ドラゴンフライズ戦で12得点、今回の信州戦で16得点を挙げたが、スペーシングに問題が見られるなど、完全にフィットしたとは言い難い。チームに合流したばかりのため、それは当然のことだが、指揮官のショーン・デニスも「正直、4週間から6週間くらい、ウチのシステムに慣れるのに時間が必要」と語った。
「特にスコット(エサトン)と一緒にプレーする時間が多かった。スコットが外に出なきゃいけなかったが、スコットがまだそれに慣れていない、どういうスペーシングでお互いにプレーするか、そこに慣れるのに時間がかかると思う。フルで練習できのは一回だけ。これから週に3回の試合が続くため、もう少し時間がかかるかもしれない」
治療に専念するためにアメリカへ帰国することになったシェーン・ウィティングトンは3ポイントシュートを得意とするビッグマンだった。一方のソコは強靭な身体を生かしたドライブなど、ゴールに近いところでプレーするスタイルを好む。両者のスタイルに違いがあるため、周りの選手がそれに合わせることに時間がかかるのも当然だ。それでもデニスコーチは「賢い選手だから大丈夫」と、ソコのフィットに自信をのぞかせた。
「焦りはない。彼もヨーロッパの高いレベルでやってきている。ウチのコンセプトを以前にやったことがあると思うし、理解は早いと思う。バスケットをよく研究し、試合前にもビデオを見ている。考えながら準備する選手だから大丈夫」
司令塔の齋藤も「理解力がかなり高い選手」とソコを称賛する。「ポイントガートからすると、頭の良い選手は助かります。シェーンと違って外で勝負するタイプじゃないですけど、かなり身体も強いです。ディフェンスを見て良い判断ができる選手ですし、リバウンドに安定感が出てきてました。彼もコンディションを整えている最中ですし、それでこのクォリティーでできているから今後が楽しみです」
ソコのフィットは名古屋Dにとって大きな伸びしろとなり、さらにここに来て、ディフェンスの完成度も高まりつつある。過去に2度出場したチャンピオンシップではいずれもクォーターファイナルで敗れているが、現在のチームはその先へ進めるポテンシャルを有している。