文=大島和人 写真=B.LEAGUE

五分五分の状況を打開する『クリエイト』と『得点』の能力

22日の同じ栃木ブレックス戦は9ポイントにとどまった田中大貴が、23日の再戦では25ポイントとチーム最多得点を記録し、勝利の立役者になった。

アルバルク東京も22日には、76-96の敗戦を喫している。「自分たちの良いところを出せず、やりたいようにやられた」と田中が振り返る悔しい展開。審判の判定、雰囲気に普段は流されるタイプでない田中も、この試合では珍しく自分をコントロールできず、不甲斐ない出来に終わった。

「攻める回数が少なかったので、行けるところは思い切りいこうと思いました。新しいメンバーが入って自分たちのやりたいオフェンスがなかなかうまく機能しないところがあるけれど、個人の力で打開できるところは打開しなきゃいけない」という反省があった。

田中は190cmとフォワードも務まる体格だが、強みは『クリエイト』『得点』の能力。ドリブルで切れ込んで、五分五分の状況を打開することのできる個人技の持ち主だ。加えて外からの長いシュートも田中の強みとなる。A東京は違いの出せる個が多く、相手が並のBリーグクラブが相手なら個人にそこまでのアグレッシブさは求められない。しかしB1東地区のライバル・栃木を倒すために、田中の『個』が必要だった。

試合展開は厳しいモノだったが、彼は「点数は少し離れていましたけれどみんな集中していた。しっかり我慢すれば最後はこういう結果になるんじゃないかという気持ちはあった」と振り返る。最大17点ビハインドまで点差が開く展開の中で、少なくとも田中は追い込まれず、切れずにプレーしていた。

東海大からアルバルクに加入して3年目となる田中は、Bリーグと日本バスケの『顔』として期待される存在だ。そんな男がこの試合の『ザ・ショット』を放った。第4クォーターの残り0分56秒、彼のスリーポイントシュートで、A東京は同点に追いついた。田中は「オープンになったところにいいパスが来た。別に何も考えてなかった」とその場面を振り返る。

残り1分を切ってから80-80の同点に追いついたA東京は、そこからさらに4ポイントを加点。84-80で栃木を下し、チームと田中は前日の悔しさを晴らした。

今後の伸びしろを大いに残す田中とギャレットの関係

今シーズンの田中大貴は元NBAのディアンテ・ギャレットとプレーをともにする時間帯が長い。どちらもクリエイトと得点の能力が高く、B1でおそらくもっとも華やかなアウトサイド陣だろう。

「去年まではどうしても、自分が持った状態で(クリエイトを)やらなきゃいけないことが多かった。ギャレットがチームに入ったことで彼にマークも寄るようになったし、自分がクリエイトして最後に彼が攻めてもいい。そういうオプションが去年より増えたのは間違いない」と田中は言う。

ギャレットの加入により田中は『作る』側から『使われる』側に回る場面が増えた。この試合の同点3ポイントシュートも「彼がクリエイトして、自分がオープンになったところにパスをしてもらった」という形から。

田中は「もっとお互いに息を合わせられると思うし、良くなる」とも口にする。バスケがチームスポーツであり、1+1が『2以上』になることも往々にしてある。そういうポテンシャルが田中とギャレットの関係においてはまだ残っている。

栃木との連戦は、彼らに1勝1敗という結果にとどまらない価値を持つものだった。

田中は言う。「昨日あれだけ叩きのめされてから立ち直ったのは、一歩成長できた部分。小さなことでもいいので、成長をレギュラーシーズンの中で繰り返して、最後どこよりもいいチームになることが自分たちの目標です。こういう強いチームとこういうか戦いができて、自分たちのチームにはいい勉強になったと思う」

強敵と対峙し、課題を得てそれを乗り越える──。成長を強く欲する田中とチームが、望むものを手に入れたブレックスアリーナの2日間だった。