日越延利

沖縄県は日本を代表する『バスケの地』だ。しかし、その由来を県外の人が知る機会は多くない。FIBAバスケットボールワールドカップ2023の開催地として、沖縄×バスケットボールの注目度が右肩上がりに高まっていく中、長きに渡って沖縄バスケの発展を支えている沖縄県バスケットボール協会専務理事の日越延利に、街の公園にバスケットボールのリングがあり、そこで老若男女を問わずプレーを楽しむ光景が当たり前となるまでにはどんな背景があったのか、沖縄にバスケが浸透している理由と、来年に行われるワールドカップについて語ってもらった。

「離島での試合で『キングスはやってくれる』との思いが強くなりました」

──現在の沖縄バスケを代表する存在として、琉球ゴールデンキングスがあります。木村達郎社長が一番最初に「沖縄でプロバスケチームを作りたい」と言ってきた時は、どんな受け止め方をしましたか。

17年くらい前ですかね、bjリーグのコミッショナーだった河内敏光さんから「沖縄にプロバスケチームを作りたい人がいる」と紹介されて会ったのが最初です。そこで木村さんは沖縄でチームを作りたい理由を語るだけでなく、17年前から今の沖縄アリーナのイメージを映像で作ってプレゼンテーションしてくれました。

そこで私も県バスケットボール協会の会長、副会長など理事の皆さんを集めて、木村さんに「自分の気持ちを言いなさい」と伝えました。そうしたらiPadを持ってきて、イメージ図から音響からすべての理事の皆さんに説明しました。あの時のギラギラした「とにかくやってやる」という気合いが協会の皆さんに通じて、先輩たちから「日越、手伝ってやれ」と言われ、私も沖縄の子供たちのために手伝うことにしました。彼の熱い気持ちには最初から感銘を受けていました。

──チーム創設1年目は負けが続いていました。そこに不安などはなかったですか?

スタートから華やかになると思っていなかったですが、あんなに弱くていいのかなとは感じていました。今では絶対に考えられませんが、沖縄市民体育館とか宜野湾市の体育館で試合をすると、お客さんが横になって寝てもまだ席が空いている。1人で5席くらいとってもガラガラの時がありました。ただ、そこからだんだんと地域に根付いていき、前年の地区最下位から2年目で奇跡のリーグ優勝を果たしました。bjリーグでは最終的に優勝回数は最多でしたし、Bリーグになっても西地区優勝を続けています。さらに沖縄アリーナ誕生と、木村さんは『持っている』と思いますね。

──キングスが今のように沖縄で愛されるチームになれる、と確信できたようなエピソードはありますか。

木村さんがチームを作る時、「沖縄本島だけを沖縄と思ったらダメだよ。与那国島から大東島まで離島も全部含めて沖縄だから、離島の子供たちも支えてほしい」と伝え、大変かもしれないけど離島でも試合を開催してほしいと頼みました。

そして実際に、何年も石垣島でホームゲームを開催してくれました。最初に石垣で開催した時は、木村さんからハグされて「約束を守りました」と言われましたね。費用は非常にかかるし、収入も減りますが、キングスはコート、リング、音響設備をすべてフェリーで石垣島まで運び、沖縄本島でやっているのと全く同じ形で試合をやってくれました。それが本当にうれしかったです。

こうやって最初に約束したことを沖縄の子供たちのためにやってくれたのは非常に評価すべきです。リーグ優勝した強いチームが離島にも目を向けてくれる、そうやって沖縄のためにいろいろなことをやってくれたことで私も含めて、みんなのキングスに対する評価は高くなりましたし、離島での試合で「キングスはやってくれる」との思いが強くなりました。

琉球

「すべてのカテゴリーの選手たちにあのコートでゲームをさせてあげたい」

──今、日本で一番バスケットボール観戦に適していると評価されている沖縄アリーナの誕生について、どんな思いですか。

沖縄アリーナは沖縄市民の皆さん、木村さんの頑張り、みんなの熱い気持ちによって完成したもので、沖縄のバスケからしたら非常にありがたいことです。日本のバスケ界全体にとっても、こういうアリーナができたことは評価されるべきではないでしょうか。ただ、アリーナはバスケだけのものではないので、上手く活用してアリーナを中心に沖縄の経済面、スポーツをより発展させていければと思います。

沖縄アリーナでは男子日本代表の試合がすでに行われています。ただ、男子だけでなくWリーグなど女子の試合もやりたい。それに小学校、中学校、高校、大学、社会人からプロまで、すべてのカテゴリーの選手たちにあのコートでゲームをさせてあげたいです。そのためのチャンスを作ってあげたいです。

また、沖縄県バスケットボール協会の専務理事としては、離島の子供たちにもあそこでバスケをさせてあげたい、アリーナで行われる試合を見せてあげたいと思います。そして沖縄アリーナをバスケットボールの聖地にしたい、日本全国のバスケ選手が沖縄アリーナでプレーしたいという場所にしたいですね。

──沖縄県が2023年ワールドカップ開催地となったことへの感想を教えてください。

私がJBAの評議員だった時に「沖縄アリーナでやりたい」と言った時に、周りの方々も「どんどんやった方がいい、やろうじゃないか」と応援してくださいました。そこで「子供たちのために大人が汗をかかないといけないのなら、いくらでも私は動きます。やれるのなら、沖縄で是非やりたい」と伝えました。

いつの間にか私が沖縄県の専務理事になり、今は苦労していますけど、来年の開催に向けて沖縄県、沖縄市、沖縄観光コンベンションビューローの皆さんが本当に力を貸してくれています。皆さんのおかげで県バスケットボール協会としてワールドカップの開催地に決まりました。とにかく来年の大会を成功させるために、みんなの力をお借りしています。そこに私たちはボランティアなどバスケファンの方々にこれから協力してもらえる体制を作り、参加型のワールドカップにしていきたいです。

──実際、沖縄が開催地に決まった時はどんな気持ちでしたか。

ホントかなという感じでしたね。もしかしたら、NBA選手が何人か見られるだけでなく、NBAのスター選手が集まるアメリカ代表が来るかもしれない。本当のワールドクラスの代表がこの小さい沖縄の島に来てくれるかもしれないです。これをみんなでいろいろな知恵を出し合うことで、離島を含めた沖縄全体から子供たちを招待して見せてあげたいです。

子供のため、沖縄のバスケの将来のため、自分たちが力を注げる時に大きなチャンスが来きます。私たちができることはすべてやるつもりです。最初はこんなに大きな大会を沖縄でできるのか心配もありましたが、沖縄アリーナが実際に完成して代表の試合などいろいろな経験をしていくことで「やれる」という気持ちに今はなってきています。ただ、沖縄だけでなく日本バスケ界の一大イベントなので、失敗は許されないという緊張も感じてきています。

日越延利

「バスケだけでなく、この小さい島に凝縮された様々な魅力を体験してほしい」

──世界大会を開催する責任は大きいですが、沖縄で開催する上での強みはどこにありますか。

沖縄の人たちはこれまでも本土復帰によってドルから円に変わる、交通が右側から左側になるなど、社会情勢の中でいろいろな変化に対応してきました。沖縄サミットのように、ここまで大きなイベントをこなしてきた歴史もあります。だからワールドカップも絶対に成功させるし、させないといけない。バスケ関係者だけでなく皆さんの知恵をお借りして成功に導きます。そして沖縄の県民性である温かい心で出迎えて、世界各国から来る選手やファンの方たちが「沖縄に来て本当に良かった」と思ってもらえるような大会にしたいですね。

──コロナ禍が終息していれば、世界中からバスケファンが集まります。沖縄のどんなところを知ってもらいたいですか?

沖縄には『世界のウチナーンチュ大会』という、世界何十カ国から沖縄にルーツがある方たちを世界中から招待するイベントがあり、沖縄県、コンベンションビューローの方など外国から来る人に対しての『おもてなし』はたくさん経験しています。そして『スポーツアイランド』として、県が推奨しているスポーツツーリズム(スポーツを軸とした観光)など、楽しんでいただけるカリキュラムがすでに準備されています。

大会の観戦に来られる方々にはバスケだけでなく、沖縄県民の温かさ、沖縄独特の芸能、文化、豊かな自然やリゾート地など、この小さい島に凝縮された様々な魅力を体験してほしいです。これらを満喫できるプログラムを作っていきます。

──2023年のワールドカップはどんな形で盛り上げたいですか?

成功とは何かと考えた時、まずは子供たちの財産となるものにしたいです。そしてバスケ関係者だけでなく、開催地の沖縄市だけでなく離島も含め、より多くの沖縄県民の皆さんにワールドカップの存在を知ってもらう。そしてボランティアや、子供たちを招待するなど、とにかく多くの人たちが参加できる形にする。そして後々に「あの時、ワールドカップをやって良かった」とみんなが記憶し、何かを残せる大会にしたいです。

──最後に、日本全国のバスケファンにメッセージをお願いします。また日越さん個人として、特に沖縄のどういったところをお勧めしますか?

沖縄はバスケに熱い地域で、キングスの試合から伝わるかと思いますが相手に対しても敬意を表しています。すべてにおいて沖縄全体で、日本中、世界中から来た人々に対して、とにかく敬意を持って熱い気持ちで歓迎いたします。だから是非、沖縄アリーナで行われるワールドカップに期待して、見に来ていただきたいです。

北のやんばる、宮古、石垣、慶良間のビーチなどの自然を私はお勧めしたいです。そして県外、海外から来られる人たちには、コロナ禍が終息した際には沖縄の人々と触れ合ってもらいたいです。例えば北谷のビーチ近くのリングなど、皆さんでも普通にプレーできる場所がたくさんあります。そこでシューティングをしていると、子供たちが集まってきて2対2、3対3を一緒にやろうという流れになります。そういった文化が沖縄にはあります。北谷のビーチを見ながらバスケをして、沖縄アリーナに行く。そして自然遺産、ビーチを訪れるのはいかがでしょうか。

スポーツアイランド沖縄

取材協力=スポーツアイランド沖縄