シェーファー・アヴィ幸樹

「自分で取るのも大事なんですけど、取らせないことのほうが大事」

今週末のワールドカップアジア地区予選のWindow2に臨む男子日本代表の中で、東京オリンピックを経験しているのは富樫勇樹とシェーファー・アヴィ幸樹の2人のみだ。その経験の差は大きく、他の選手と比べて一つのアドバンテージとなっている。それでもシェーファーは、リーダーとしてチームをまとめるというよりも、貪欲にステップアップを重ねている感覚で代表活動を行っているという。

「年齢的にはかなり下の方ですし、正直に言うと、まだチームを引っ張るという形ではないです。代表に慣れているというのもあって、初代表で入ってきている選手とコミュニケーションを取ったり、オフコートの部分でやりやすいように意識していますが、プレーの中では圧倒的だったり、自分の地位が確立しているという感覚ではないので、ガムシャラに1つずつステップアップするためにやっています」

高校からバスケを始めたためバスケ歴こそ長くないが、シェーファーは常に高いレベルに揉まれることで急激に成長を重ねてきた。自身でも「代表に慣れている」と語ったように、競技歴わずか3年半でU19代表に選出され、そこから代表の常連メンバーとなった。さらに言えば、日本人ビッグマンが活躍しにくいBリーグにおいても、所属するシーホース三河の不動の先発として、2シーズン連続で25分以上のプレータイムを勝ち取っている。それでも、シェーファーは謙虚な姿勢を崩さず、自身を高める努力を続けている。短い合宿のため「ピンポイントで成長しているところはよく分からない」とシェーファーは言うが、チームとしての成熟度は以前よりも確実に高まったという。

「前回よりも自分の役割が明確になり、それをチーム内でどうやって上げていくかという段階には入ってきています。そういう面ですごく頭を使いますし、引き続き勉強できているという感じです。チームとしての連携をもっと意識してやっていきたいです」

206cmのシェーファーにとって一番の仕事は激しいインサイドでの攻防で勝つことだ。特にリバウンドはトランジションバスケを目指す面でも、シンプルにポゼッションを増やす面でも重要な要素となる。シェーファーもリバウンドの大切さは重々承知だ。「リバウンドが取れれば、それだけポゼッションが増えて相手のポゼッションも減らせるのですごく大事です。世界レベルの試合、チームになってくると、僕よりも大きい選手ばかりになってきます。僕がしっかり身体を張ってリバウンドを取れるようになれば、チームとしてももっと良くなっていきますし、リバウンドは自分の中でかなり大事にしています」

身体を当ててスクリーンを徹底したとしても、簡単にリバウンドを確保できないのが世界のレベルだ。それを分かっているからこそ、「自分が取れなくても弾いて、他の選手に取らせるくらいの気持ちで意識しています。自分で取るのも大事なんですけど、取らせないことのほうが大事になってくる」と、シェーファーは言う。

チャイニーズ・タイペイもオーストラリアもベストメンバーではないが、もちろん簡単な相手ではない。トム・ホーバスヘッドコーチは「結果が大事」と話し、必勝態勢で臨む。シェーファーは「自分の役割を全うすること」が勝敗のカギを握ると語った。

「各々が役割をしっかり全うすれば勝てると思います。自分はとにかくディフェンスで相手に簡単にやらせないことと、リバウンドをもぎ取ること。オフェンスでは、自分がアグレッシブに狙っていくことも大事なんですけど、他の選手がより打ちやすいように、より動きやすいようにバランスを整えていく。頭を使ってプレーすることが大事になってくるので、そこを意識してプレーしていきたいと思います」

バチバチの肉弾戦を繰り広げつつ、冷静さを保ってプレーすることは難しい。それでも日本が勝利するためには、シェーファーがその重要な任務を完了させる必要がある。