伊集南

沖縄は日本屈指のバスケ王国で、琉球ゴールデンキングスのホームゲームはリーグ屈指の観客動員と熱狂度を誇る。昨年には『沖縄アリーナ』がオープン。日本バスケ界の今後の指針となる夢のアリーナは、来年夏に行われる男子ワールドカップの開催地であり、沖縄バスケットボールの存在感はどんどん高まっている。

だからこそワールドカップをより楽しむためにも今、沖縄とバスケットボールの結びつき、沖縄という土地の魅力を紹介すべく、所縁のある人物たちへのインタビューを行っていく。今回登場するのは沖縄県八重瀬町(やえせちょう)出身、現役時代はWリーグの強豪デンソーアイリスで司令塔として長らく活躍し、引退した今もバスケットボール界に深く関わっている伊集南さんだ。

「日常生活でバスケに触れる場面が増えるようにしていきたい」

──愛すべき沖縄バスケットボール界とは、これからどんなかかわりを持っていきたいと考えていますか。

地元である八重瀬町役場さんのスポーツ課と連携して地元にクリニックを開いたりとか、直接高校の指導者から連絡をいただいてクリニックを行ったりとは今でもやっています。最近ですと、西原高校がウィンターカップに行く前に沖縄に呼んでいただいて自分の経験を伝える機会をいただきました。今後、沖縄での活動では1人で何かをしていくより、きちんと周囲の方を巻き込んでいく。県協会を通してなど、地元の人たちと一緒になって沖縄に貢献していくことが最優先事項です。

例えば今、Wリーグの理事をやらせていただいているので、沖縄アリーナでWリーグの試合をできるように働きかけるなどいろいろと沖縄のためにできることはあると思います。そして試合をしたら成功だとは考えていません。試合をやるために沖縄に来るチームのヘッドコーチに子供たちを対象としたクリニックをしてもらうとか。そういうイベントを通して、沖縄の子供たちに大きな変化を与えられる機会を作ってあげるための力になりたいです。

──伊集さん自身はデンソーの選手として沖縄で凱旋試合ができた時、どんな思いでしたか。

私が引退したシーズン、デンソーの試合がトヨタ自動車を相手に初めて沖縄本島でありました。その時はもう引退を決めていたので、地元で試合ができたのは本当にありがたかったです。日越(延利)専務理事を始め沖縄県協会の方々には本当にお世話になりました。今はコロナ禍によって難しいですが、日常が取り戻せた時には毎年一度「この時期にWリーグの試合が沖縄である」というサイクルにしたい。「そろそろWリーグの試合があるね。今年はどこが来るんだろうね」という会話が学校で、家庭で行われるようにしたいです。何をもって成功とするかは難しいですが、人々の間でバスケが話題になることが増える。皆さんが日常生活でバスケに触れる場面が増えるようにしていきたいです。

伊集南

「沖縄アリーナには、私も今すぐにでも行きたいです」

──2023年のワールドカップでは日本、そして世界から多くのバスケットボールファンが沖縄アリーナを訪れます。

沖縄アリーナにはまだ行ったことがありません。先日のBリーグオールスターで行く予定で、それに合わせてクリニックをする話もあったので延期は残念です。経済的な損失も大きいと思いますが、一観客として見たかったですね。逆に家族は2度ほど琉球ゴールデンキングスの試合を観に行ったよ、と自慢するぐらいなので、私も今すぐにでも行きたいです。

──バスケ観戦を目的に多くの人が訪れると思いますが、バスケ以外で沖縄のどんな部分を楽しんでほしいですか。

沖縄の一番の良さは、何と言っても人の温かさだと思います。コロナ禍の状況が改善されていたら観光で来られる皆さんには、沖縄県民の方々とコミュニケーションを取ってほしいです。たくさんの観光スポットはありますが、街中をふらっと歩いてそこで出くわす人々と接してほしい。どんな人たちが、どういう生活をしているのか。そういう下町感みたいなところに私は触れてほしいなと思います。

買い物や食事をするのに国際通りとかアメリカンヴィレッジに行くのも良いですが、街中のスーパー、個人商店で沖縄の人たちの温かさに触れてほしいです。例えばサンエーとかAコープといったスーパーで働いているのは地元の方なので、「これはどうやって食べるんですか」とか質問をしてもらいたいです。沖縄の人たちにはおしゃべり好きが多いと思うので、そういった質問をきっかけに交流してもらいたいです。

あとは道の駅もお勧めです。私の地元は南部の具志頭(ぐしかみ)ですが、市町村合併で八重瀬町になった際、具志頭役場だったところに、『南の駅 やえせ』が誕生しました。近くの農家が作ったものが売っていて地元の人たちと触れ合えます。中部や北部にも道の駅はあるので、是非訪れてほしいです。

──ご自身はどこに行くと沖縄に帰ってきたなと感じますか?

地元は那覇空港から20分くらいの場所ですが、途中で海が見える橋を車で走っている時に「帰ってきたな」と思います。景色も良いですし、瀬長島で少年野球をやる時によく通っていた場所でもあるので、いろいろな思い出がよみがえってすごく気分転換になります。後はニライカナイの絶景も好きですね、やっぱり海からエネルギーをもらいたいので、海の見える場所がお気に入りです。

──最後に沖縄バスケットボール界へのメッセージをお願いします。

沖縄は本当に可能性が溢れた島国だと思っています。まずバスケを愛してる皆様には引き続きバスケを楽しみ、沖縄アリーナを含め沖縄にあるいろいろなツールうまく利用して活動してほしいです。子供たちにはバスケに限らずいろんなスポーツをすることで、たくさんの人に出会って様々な経験を積み重ねてほしい。それが自ずと人間性を培う行動になると思います。そして、私も関係者の一人として子供たちのためになるものを作っていく、残していくことが使命だと感じています。みんなが一体となり、同じ目的を共有して沖縄が、沖縄バスケットボール界がさらにステップアップできるサポートをしていきたいです。

スポーツアイランド沖縄

取材協力=スポーツアイランド沖縄