勝久マイケル

「個々の思いや家庭の事情や健康、いろいろなものを尊重するのもチーム」

1月19日、信州ブレイブウォリアーズは天皇杯クォーターファイナルで、琉球ゴールデンキングスに67-91で敗れた。ただ、この試合の信州は『現況の諸事情を鑑みて』との理由でアンソニー・マクヘンリー、ウェイン・マーシャル、岡田侑大、西山達哉、栗原ルイスが欠場。攻守の要を欠き、ベンチ入りわずか8名であることを考慮すれば健闘が光ったと言える。

信州の勝久マイケルヘッドコーチは、こう振り返る。「8人で挑んで非常に厳しい状況でよく頑張ってくれたともちろん言いたいですし、とても頑張ったシーンもいくつかありました。ただ、反省点もとても多い試合で、人数関係なしにやるべきことをやらないといけないです」

信州にとって天皇杯の6強入りはチーム初だ。だからこそ、致し方ないとはいえベストメンバーで戦えなかったことに指揮官は「この人数で挑んだのは悔しく、残念です」と率直な気持ちを明かす。

同時に5人の欠場について「とても繊細なことですが」と慎重に言葉を選びながらチームとして納得した結果であると続ける。

「誰もが初めての状況であり、チーム内で話してベストだと信じていることを自分たちで決めて進んでいくしかない。一つとなって物事をやっていくのもチームだと思いますし、個々の思いや家庭の事情や健康、いろいろなものを尊重するのもチームだと思います」

今の情勢にあって、沖縄遠征に参加しなかった選手たちの決断を責めることはできない。それよりも「信州さんがこうやって沖縄に来てくれなかったら試合はできなかった」と、琉球の桶谷大ヘッドコーチは様々な困難を抱えつつ試合を成立させた信州の尽力を称えた。

この日、12得点5アシストを挙げた前田怜緒は「どんな状況でもどんな人数でも試合はやるべきことで、それがプロだと思います」と語る。コロナ禍で先行きが不透明な今、それは決して簡単なことではない。そんな環境にあってもコートに立った信州の8人は、敵将の「点数以上に内容は厳しい部分がありました」という言葉が示すように、ハードワークで琉球にプレッシャーをかけ続け、見る者の心に響くプレーを見せた。

天皇杯に限らず多くの試合が年明けから中止となっており、バスケロスを嘆くファンも少なくない。こうして信州が様々な意味でプロフェッショナルの矜恃を見せたからこそ、オンライン配信を通して久しぶりのバスケ観戦で充実のひと時を過ごせた人は沖縄、長野、そして日本全国にたくさんいるはずだ。だからこそ、琉球の4強入りへの祝福とともに、信州への感謝が真っ先に思い浮かぶ一戦であった。