津山尚大

取材・写真=古後登志夫 構成=鈴木健一郎

津山尚大はこの夏、高校卒業とともに加入して4シーズンを過ごした琉球ゴールデンキングスを退団し、ライジングゼファーフクオカへと移籍した。地元出身の生え抜きとして琉球のファンに愛された津山だが、福岡大附属大濠のエースとして活躍したことで福岡でも『秘蔵っ子』の扱い。「寮も学校もあった六本松が変わりすぎてて新鮮です」と4年ぶりに暮らす福岡の変貌ぶりに目を丸くするが、「大好きなもつ鍋や水炊き、ラーメンを食べられて幸せです」と博多の暮らしを早くも満喫している。それでも話がバスケになれば表情を引き締め、「ヨーロッパでプレーするためには、今回の移籍が必要でした」と語る。その津山に、大いに語ってもらった。

津山尚大は福岡の『秘蔵っ子』に(前編)「海外でプレーする夢へ向け、挑戦の年」

「今まで自分が選択してきた道に悔いはない」

──大学に行かずに高校卒業後にそのままプロになる、というのはBリーグの時代になった今もレアケースです。大学の代わりにキングスで4年間を過ごす形になり、先ほど「僕ももう22歳」という言葉がありましたが、その選択に悔いはないですか?

ないですね。今まで自分が選択してきた道に悔いはないし、今この時点で「悔いがあります」と言ったら何もうまく行かないと思うので。

──沖縄は地元ですが、福岡は高校時代を過ごした場所です。生活に変化はありましたか?

沖縄では沖縄そばを結構食べていたんですが、こっちに来たらラーメンです(笑)。あとはもつ鍋や水炊き。沖縄じゃ鍋ってあまり食べないので。高校時代は寮なので、父兄の方にご馳走になるぐらいで、あまり食べられなかったんです。今は自分で食べられるので幸せですね(笑)」

──福岡大附属大濠には行きましたか? 片峯聡太監督からは激励されましたか?

何度か顔を出して練習にも参加させてもらいました。片峯監督には移籍を決める前から相談させてもらって、それで僕に必要なのはプレータイムと結果だと。「ブレずにやっていけたら活躍できる」と言っていただいたので、高校3年間お世話になった片峯監督の言葉を信じます。

今年は田中先生(國明、総監督)が亡くなられて、その年にオファーをいただいて福岡に戻って来れたというのは、田中先生から「福岡に貢献して頑張れ」と言ってもらえているような気がします。そこは福岡県のために、という気持ちでこの1シーズンを戦っていきたいです。

──アーリーカップでは内容も結果も出ませんでした。チームの状況はどうですか?

ケガ人が多くて5対5の練習もままならない状況で、僕自身もケガで練習を離れていた時期が少しあったので、みんなと息を合わせるのが難しかったです。ましてや僕はポイントガードとして1年目、自分がどうプレーすべきか迷う中での試合でした。ただ、試合を見返すと徐々に良くなっているとは思います。

個人的にはボールのシェアの部分です。今はフォーメーションのコールを早くしたり、単純なポイントガードのスキルを学んでいるところです。それでもコントロールだけになると得点能力や3ポイントシュートという自分の持ち味がなくなってしまうので、コントロールしながら積極性を次第に出せるようになっています。そこは我慢強く継続してやっていきます。

個々の能力が高いチームではありますが、外国籍選手にボールを集めて起点を作るよりも、リバウンドからのブレイクを徹底するとか、日本人選手が1点でも2点でも得点を積み上げられるオフェンスを作ればB1でも戦えると思っています。チームとしっかりコミュニケーションを取って、開幕は栃木ブレックスが相手ですが、自分たちのプレーをすれば良い戦いができるはずです。

津山尚大

「前評判は低いですけど、その予想を覆すつもり」

──日本人選手の得点となると、小林大祐選手と城宝匡史選手というスコアラーに期待したいところです。メインのポイントガードにはベテランの山下泰弘選手がいて、そこに代わって津山選手が入った時に、どういう展開を作っていきますか?

城宝さんや大祐さんがプレーしやすい展開に持っていくのも大事なんですが、そこだけになると試合は難しくなります。その仕事をこなしながらも、自分が点を取りに行って高確率でシュートを決められるポイントガードになりたいです。僕自身は平均2桁得点を取りたいです。

──開幕を半月後に控えた今の時点で、福岡には期待と不安の両方があります。不安はやはりB1に残留できるのか。昨シーズンは昇格組の2チームがともに残留を果たせませんでした。

まだケガ人が戻って来ていない状況なのでイメージするのが難しいんですが、先ほど言ったように日本人選手が得点を積み上げる展開に持っていくこと、あとはディフェンスをもっともっと強化することが大事です。不安なのはディフェンスリバウンドですね。B1になると選手個々の身体能力が高くなるし、特にリバウンドに強い外国籍選手が多いので、そこでリバウンドをどう取るか、それがないと早い展開に持っていけないので。

残留争いに巻き込まれてしまうんじゃないか、という不安はあります。でも、その不安があるからこそみんな練習して成長していきます。まずはチームとして一つずつ成長することです。今のメンバーは誰が出てもレベルが変わらないと思うので、河合ヘッドコーチの目指すバスケをみんなが高いレベルで遂行していけば戦えると思います。

もちろん、ワクワクする部分もあります。僕たちは初めてB1で戦うので、相手も僕らのことを分かっていません。前評判は低いですけど、その予想を覆す試合を見せるつもりです。

──今シーズン、チームの目標と個人の目標をあらためて教えてください。

目標はB1残留と言っていますが、一つひとつの試合に集中して、とにかく一つでも多く勝ちを取ることに集中します。そして自分自身は平均で2桁得点を取って、チームを勝たせるポイントガードになりたいです。B1では経験があったり能力の高い相手ばかりですが、どんな場面でもしっかり顔を上げてチームを引っ張っていけるような、強いメンタルを持ったポイントガードになりたいです。ファンの皆さんには、昨シーズンまでとは違ったライジングゼファーフクオカを見せられると思うので期待してもらいたいです。僕自身は福岡のために全力でプレーするので、試合を見てもらいたいです。