文=丸山素行 写真=野口岳彦

ファジーカスが36得点の大暴れ

川崎ブレイブサンダースvsアルバルク東京の一戦は、気持ちのこもったディフェンスでA東京を今シーズン2番目に少ない67点に封じた川崎が勝利した。

シュート確率が上がらない川崎に対し、高確率でシュートを沈めたA東京が先手を取る。安藤誓哉のミドルシュートで2-9と先行されたところで川崎はタイムアウトを要求。これを機に、川崎がディフェンスから反撃を開始する。A東京を上回る気迫と高い強度のディフェンスを披露し、第1クォーターだけで9つのターンオーバーを誘発。シュートタッチがなかなか上がらないニック・ファジーカスだったが、それでもシュートを打ち続け10得点を挙げて、15-16と猛追した。

第2クォーターに入ると、ジョシュ・デービスがスピードを生かしたインサイドプレーで加点し川崎が逆転する。高いボールへのプレッシャーとシュートチェックでA東京の得点を止めた川崎がこのクォーターを20-13とし、6点リードで後半を迎えた。

後半に入っても川崎のディフェンスの強度は落ちない。ピック&ロールを仕掛けようとする馬場雄大に対し、ファジーカスが積極的にダブルチームを仕掛け、馬場のファンブルを誘ったシーンは特に印象的だった。竹内譲次が7得点を挙げるも、ファジーカスがそれを上回る10得点を挙げ、リードを9点に広げて最終クォーターを迎えた。

辻直人の好アシスト、3点プレーとなるバスケット・カウントで川崎が60-48と点差を2桁に乗せる。反撃に転じたいA東京は馬場が足を負傷し交代を余儀なくされた。田中大貴、安藤、ジャワッド・ウィリアムズの3ポイントシュートで追い上げるが、スクリーンプレーからミスマッチを作られファジーカスを止められない。馬場の不在もあり速攻が出せず、連続得点が奪えないA東京は最後まで流れをつかめなかった。

シンプルな1対1ではなく、デザインされたオフェンスからファジーカスが次々と加点し、10点前後の点差を維持した川崎が77-67で逃げ切った。

「失点を抑えられたことが一番です」

川崎の指揮を執る北卓也は試合後このように振り返った。「両チームとも入りが重かったですが、徐々に白熱したゲームになりました。A東京を67点に抑えることができ、選手もプラン通りのことをある程度行ってくれたと思うので、勝因はディフェンスでした。日に日にディフェンスが良くなっているとは思いますが、もっともっと良くなるように練習と試合をしながらやっていきたいと思います」

「前回の試合ではニックが40点取ったけど敗れました。今回も36点ですので、やはりディフェンスで失点を抑えられたことが一番です」とディフェンスでの勝利を強調した。

大暴れのファジーカスも「チームとして特にディフェスが良かった」と指揮官と同様の見解を示した。「今日のような試合ができて我々がリーグのトップチームのうちの一つだということを証明できた」と胸を張る。

序盤はシュートタッチに苦しんだが、後半は13本中10本のフィールドゴールを成功させた。もし自分のような選手を止めるにはどうすればいいかと問うと、「僕だったらすぐに5ファウルして他の選手に任せるよ」とジョークが飛び出すほど、昨日のパフォーマンスに満足していた。

田中「激しさを出せなかった試合でした」

一方、敗れたA東京のルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチは「川崎さんの勝ちたい気持ちが我々を上回ったの一言につきます」とコメント。

ハードワークとメンタルを重要視するA東京だが、昨日の試合ではそれが欠けていたと説明した。「正直、今日はいつもより集中力が欠けていた。出だしは良かったが、第1クォーターの途中からミスが目立ち、我々のミスからイージーバスケットをさせてしまった。川崎はチャンピオンシップを狙える力のあるチームなのでターンオーバーから簡単に得点を許すことはあってはならない。気持ちの面で全体的に我々らしさは出ていなかった」

チームハイ(タイ)の11得点を挙げた田中は「個人的にもチーム的にもリズムに乗れず、相手に簡単な点数を与えてしまった。自分たちが後手後手になってしまい、激しさを出せなかった試合でした」と振り返った。

「個々では頑張っていますけど、全員で戦っているという意識があまりなかったように感じました」とチームとして戦えていなかったと話すも、「若いメンバーもいますし、一番大事なことは同じことを繰り返さないことなので」とこの敗戦を糧にすると前を向いた。

今シーズン2度目の対戦は川崎が勝利し前回の雪辱を果たした。勝率5割を超えているものの、激戦の東地区ではまだ4位。それでも千葉ジェッツ、A東京と上位から勝ち星をもぎ取り、これから上昇気流に乗っていきそうだ。

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