24歳の林翔太郎のプレータイムは、今シーズンになって半減している。川崎ブレイブサンダースのように優勝を義務付けられたチームで、若手がプレータイムを得るのは簡単ではない。特に今シーズンは即戦力の選手が加入したことで、チーム内での序列が一歩後退した状況にある。それでも林は明るい表情で、「そういう人たちに勝たないと生き残れない世界。自分の気持ちは燃えました」と力強く語る。前向きに、ひたむきにバスケに取り組む林に話を聞いた。
「僕もできるんだと証明したいです」
──序盤戦、チームは非常に好調です。林選手自身はここまでをどう受け止めていますか?
チームとしては昨シーズンよりも確実に優勝に向かっています。本当に調子が良くて、このまま優勝まで突っ走っていきたいと思います。個人としてはプレータイムがだいぶ減ってしまったのですが、熊谷(尚也)さんや大塚(裕土)さんの加入でチームのコミュニケーションが良くなり、雰囲気もガラッと変わりました。経験ある2人がいろんなアドバイスをくれたり、試合でも声を掛けてくれるので、良い経験になっています。
2人ともすごい選手だと分かっていたし、クマさん(熊谷)は特に同じポジションだしプレースタイルも似ているので、プレッシャーはもちろんありました。でも、プロはそういう人たちに勝たないと生き残れない世界だと思っているので、自分の気持ちとしては燃えました。「この人たちに勝てば試合に出られる」と自分の中で明確になり、ネガティブにはなりませんでした。
──佐藤賢次ヘッドコーチは、ベンチの12人全員で戦うと常々言っています。
選手にとっては試合で使ってもらえることが一番ありがたいです。プレータイムを勝ち取ることは自分で意識すべきことだし、練習でも試合でももっともっとアピールが必要だと思います。試合に出られなかった時は、どういう経緯なのかヘッドコーチから説明されたりしますし、アシスタントコーチ陣が自分のミスした部分の映像をまとめて共有してくれたりもします。
もちろん、ダメな部分を指摘されて気分が良い人はいないと思いますが、それが事実ですから。コーチ陣も言いづらいと思うし、言ってもらえることが本当にありがたいです。
──青木保憲選手は千葉ジェッツとの試合で勝利に直結するパフォーマンスを見せました。同じような立場にいる同期の活躍は刺激になったのでは?
同期がああいう舞台で、あれだけのビハインドを背負っている中でバスカン2回で逆転に持っていきました。あの活躍は本当にうれしかったです。それと同時に僕もベンチで見ているだけじゃダメだ、やってやろうとも思いました。「僕もできるんだ」と証明したいです。
「自分がやるべきことを一つひとつやれば」
──今シーズン開幕前の夏の練習は相当にハードだったと聞きます。実際いかがでしたか?
鬼キツかったですよ!(笑)
──それこそ東海大九州も厳しい練習をするチームですよね。それよりもキツかったですか?
キツさが違うんですよね。大学の時は走って怒られての繰り返しでしたが、プロになっての夏の練習はバスケットのキツさです。覚えないといけないこと、やらないといけないことがすごく多くて、頭も身体もパンクしそうでした。いろんな意味でキツかった思い出しかありません。
──このチームで信頼されてプレータイムを得るには、やはりディフェンスが大事ですか?
そうですね。基本的に川崎はディフェンスのチームです。チームディフェンスはコートにいる5人のうち1人でもできなければ成り立たないので、自分が出た時にその歯車を狂わせないことです。オフェンスでは自信を持ってリングにアタックしたり3ポイントシュートを打てたりしているので、ディフェンスをしっかり遂行できるようになれば、と思っています。
日頃の練習から日本代表の選手を相手にしているので、試合に出た時にも「いつもの練習の方が絶対にキツいぞ」と自分に言い聞かせています。実際、今日も練習で辻(直人)さんとマッチアップしたんですけど、やっぱり本当にすごい選手なので。そこでしっかりやることで、試合でも自信を持ってプレーできると思います。
──チャンスさえ与えられれば結果を出せるという自信はありますか?
これまではそういう自信がなかったんですけど、今は「試合に出してもらえばやれる」という気持ちで準備しています。ただ、バスケット選手であれば試合に出るのが一番の目的ですけど、それ以上に今年は日本一になりたいという気持ちがとても強いんです。だから、「チームが日本一になるために、自分には何ができるのか」をいつも考えるようになったし、出られないことに対してのストレスや焦りはあまり感じないですね。
昨シーズンにこういう状況だったら焦っていたと思いますが、今は自分を客観的に見ることができていて、自分がやるべきことを一つひとつやれば、いずれ試合に出られると思っています。
──年末はハードな日程が続きます。そして年明けには天皇杯があります。
僕にとってはチャンスだと思うので、そこで持ち味であるドライブやシュートを自信を持ってやっていくこと。ディフェンスではハードに、「これが川崎だ」というディフェンスを僕も体現できるようにやっていきたいです。
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