「日本人が頑張らないと盛り上がっていかない、そこへの意地と責任感は持っている」
今オフ、Bリーグでは複数の中心選手の移籍が起きたが、その中でも一番のサプライズは岸本隆一が14年間在籍した地元の琉球ゴールデンキングスを離れ京都ハンナリーズに移籍したことだ。Bリーグの開幕とともに選手の移籍が活発になったが、『クラブの顔』として琉球を支え続けたフランチャイズビルダーの岸本だけは琉球一筋でキャリアを終える。大半のBリーグファンがそう思っていた中での移籍は大きな衝撃を与えた。
「なぜ琉球を離れる決断をしたのか」。このオフシーズンを通して岸本は何度もこの質問をされてきた。このことについて聞くと、「慣れたと言えば慣れました」と答えたあと、誠実な彼らしい言葉を続ける。
「ただ、理由はこれが決め手というモノは本当になく、自分なりにいろいろな面を考えて決めたことです。だから、自分でも『歯切れが悪いな』と思いますし、はっきりした答えがなくて申し訳ないです。ただ、何も隠していないですし、伝えられる範囲で伝えているつもりです」
毎年メンバーが変わるとはいえ、14年ずっと同じチームでプレーしてきた岸本にとって、プロになって初めての移籍は慣れない部分もいろいろとある。だが、岸本は新たな環境について「大きく言えば刺激です。まったくネガティブな感情はなく、日々トライ・アンド・エラーで、すべてが自分の糧になっている実感を持ちながら日々を過ごせています」と言い、「本当に充実しています」と笑顔を見せた。「球団には家族のこともすごく気にかけていただいていますし、すごくやりやすい環境を提供してもらっています。今は本当にストレスなくやれています」
Bリーグ初期には主力としてプレータイムを確保するのに苦しんだ時期もあったが、長らく岸本は琉球の中心選手として、自分のやるべきプレーが確立された選手だった。当然ながら京都では担う役割が変わるが、何かを大きく変えるつもりはない。「自分の中で、自信がある部分を変えるつもりはありません。そこを評価してもらってハンナリーズに入る機会をもらったと思ってので、変わらずにやっていきたいです。ただ、レギュラーシーズンを戦うことで見えてくることがたくさんあると思います」
また、今シーズンから、Bリーグはルールが変わりオン・ザ・コートフリーとなることで、外国籍の3人が同時出場できるようになった。この点について「ある程度は難しくなる部分もあると想定していて、そこに向けて準備はしているつもりです」と話しつつ、その中でもしっかりと存在感を示したいと覚悟を語る。
「今まで自分が培ってきたことへのプライドはあります。それに日本のリーグなので、日本人が頑張らないと盛り上がっていかない。そこに対しての意地というか、責任感を自分なりに持っているつもりです」
「バスケットがどれだけ自分の救いになっているのか改めて感じています」
琉球時代の岸本は、地元出身の生え抜き選手という背景もあり、チームの象徴として常にスポットライトを浴びてきた。この見方について、「自分で良くも悪くも勘違いして意識はしていました部分はあります。ただ、リーグ優勝した後はそこまで特別に意識することはなく自然体でいたかと思います」と振り返る。
だからこそ琉球を離れたことで、京都ではイチ選手として背負うものも少なくなり、気楽にプレーできるようになるのか。こちらの問いに「現段階では何かを背負っている感覚はないです」と語る岸本だが、一方で責任は見つけないといけないし、背負っていくべきものと続ける。
「ただ、シーズンが始まって結果が出てくると、いろいろと自分の中で背負わないといけない部分は出てくると思います。今は割と気楽ですけど、キングスを離れることになって肩の荷が下りたとは思っていないです。むしろこれからもっと自分なりに、責任を見出していかないといけない部分が多いです」
そして、「京都に来て僕はまだ何も仕事をしていない。そういう緊張感は持っています」と、強い覚悟を語る。
15年目で初めて所属チームを変えるという大きな挑戦に踏み切った岸本。キャリアの転機を迎えるにあたって彼に去来している思いは、原点回帰だ。
「根本としてやっぱりバスケットボールが本当に自分は好きで、当たり前かもしれないですがバスケットがどれだけ自分の救いになっているのか改めて感じています。生活環境も変わり、いつもと勝手が違う部分があっても、練習したら心がすっきりする。プレシーズンで『もっとできたかな』と感じる充実感や危機感、いろいろな感情が湧いてきます。バスケットボールが本当に自分の人生を彩ってくれていると改めて感じています。できる限りコンディションを保って、今まで以上のパフォーマンスを発揮できるしたいとより強く感じています」
チームが変わっても岸本のチームに全てを捧げる忠誠心に変わりはない。琉球に続き京都でも看板選手として大きな責任を背負う覚悟でコートに立つ。

