「思っていた以上に、キングスの一員として意識していただいていた」
8月4日、京都ハンナリーズが新体制発表記者会見を実施。今オフ、生え抜きで14年に渡り在籍していた琉球ゴールデンキングスを退団し、電撃加入となった岸本隆一も出席した。
多くのバスケットボールファンは、岸本がこのまま琉球一筋でキャリアを終えると考えていたはず。それは京都のフロントにとっても同じで、松島鴻太社長も「私自身も最初は信じられなかったです。正直に『そんな来るわけないやん(笑)』というところから始まっています」と明かした。
そこから岸本の獲得という難関ミッションを遂行できたことについて「いろいろなご縁が重なり、タイミングも含めて様々なことが影響しました、私が語ることでもないと思っていますし、岸本選手の思いがこの結果を生んだというところに尽きると思います」と続けた。
岸本本人も移籍の理由を「この決断に至った理由は、一言で語れるようなものではないです」と明言を避けた。もちろん彼にとって琉球はこれからもずっとかけがけのない唯一無二のチームであり続ける。ただ、その中でも、これまでのキャリアを通して自身が大切にしてきた信念に寄り添った選択だったという。
「環境はもちろん大事で、むしろプロ選手として一番大事にしなけれければいけない部分です。ただ、それ以上にどういった人たちと、同じ思いを共有して日本一を目指したいかとなった時、今回は京都ハンナリーズではないか、という思いで結果的にこういう形になりました」
この移籍は大きな反響を呼び、岸本も「自分が見たくないような反応ももしかしたらあるかもしれない。それを踏まえた上での決断で、少なからず反響があるとは予想していました」と様々なリアクションが来ることを覚悟していた。その上で「想像以上でしたし、ありがたいことにたくさんの方たちから連絡をいただきました。自分が思っていた以上に、キングスの一員としてすごく意識していただいていたと実感しました」と感謝を強調する。

「岸本を知りたいと試合を見に来てもらうのが、プロ選手のあるべき姿」
琉球時代の岸本は、地元出身の選手としてチームの顔役を務め、1人のバスケットボール選手の域を超えた存在として愛され、『神』と呼ばれる程に支持されていた。さすがに京都で琉球のような大きな責任を背負う立場にはならないだろうが、京都でもチームの一員として大きな責任を持ってプレーしたいと語る。
「自分への見られ方は変わってくると思います。ただ、責任を負うところは昔から何も変わっていないですし、今は自分で責任を見出していかないといけないと思っています。これから応援してもらえるように振る舞い一つから気をつけていきたいですし、昔から応援してくださっている方に『今も頑張っているな』と思ってもらえるようにプレーしていきたいです」
岸本の加入もあり、京都への期待値は上がっている。琉球に多くの勝利をもたらしてきた岸本だが、京都でもチームを勝たせられる選手であることを示したい気持ちはある。ただ、個人に対する評価には全く興味はない。
「自分の力を証明したい気持ちはもちろんあります。ただ、言い方はアレですけど、自分のエゴというちっぽけなことのために京都に来たわけではないです。みんなと協力して優勝をつかみとるため、ベストを尽くしたい思いだけです。とにかくバスケットを通して、しっかり京都の街に貢献していけるように日頃から活動していきたいです」
現在は自ら積極的に情報を発信する選手も増えており、今回の移籍についてSNSなどで詳細を明かすこともできた。だが、岸本はこうした流れも尊重しつつ、「自分は古いタイプだろうと思っています」と言い、あくまで背中で語ることを大切にする。
「いろいろな活動をすることについて、何も否定的な思いはないです。ただ、自分を客観的に見た時、岸本隆一という人間を知りたいと思ってもらえるプレー、振る舞いが何よりも大事となります。『岸本隆一を知りたい、見るためには試合を観にいかないといけないよね』という状況が、プロ選手としてのあるべき姿だと思います。」
「京都に来てから、何回かは鴨川の様子を(自分のSNSで)発信したいと思った時もありましたけど、『まぁ、やらないでいいかと』となりました。純粋に自分のプレーを見て応援していただればいいですし、逆に失望させてしまうこともあると思います。それを含めてのプロ選手で、この姿勢はこれからも大切にしていきたいです」
14年在籍したチームを離れ、新天地で力を発揮するのは簡単ではない。だが、「いつもと違う状況を楽しんでいます。分からないことがあれば、川嶋(勇人)選手に聞けばいいかな、ってところもあります。すごく充実した時間を過ごせています」と、岸本は京都で順調なスタートを切った。選手としての矜持は何も変わらない岸本が、新たな環境となる京都でどんなプレーを見せチームを変えていくのか。今シーズンのBリーグを代表する見どころとなる。
