
「決められなかった。それが現実だ」
スパーズはNBAファイナルを1勝4敗で落とし、2014年以来の優勝を逃した。5試合すべてが接戦だったが、勝った第3戦を除けば第4クォーターで10点、8点、16点、11点のマイナスで、クラッチタイムにひっくり返される悔しい負け方の連続だった。第4戦で最大29点差をひっくり返されて敗れた後、チームの合言葉は「リードをどう守るか」だった。しかし、結局は第5戦も、第4クォーター残り8分で10点のリードがあったにもかかわらず、逆転負けを喫した。
クラッチタイムの勝負強さという点で、カンファレンスファイナルを勝ち抜くまでのスパーズに隙は見えなかったが、ニックスとの差は歴然としていた。それは端的に言えば、ジェイレン・ブランソンのタフなメンタルに支えられたクラッチ力が、スパーズにはなかったことになる。
その意味でディアロン・フォックスには批判が集中している。第4戦で敗れた時点で、プレーの面でもリーダーシップでも力不足と見なされたが、第5戦でも第4クォーターにブランソンが15得点を挙げたのに対し、フォックスは無得点に終わり、アシストもなく、その差は数字でも印象でも冷徹に突き付けられる。
試合後のフォックスは、言い訳をすることなく負けを受け入れた。「別に『僕たちのほうが優れていた』なんて言うつもりはない。どの試合でもリードが溶けていくのをただ見守るような展開になってしまった」と彼は言う。「僅差の試合で勝つチャンスはあったけど、試合終盤の勝負強さを欠いた。僕自身も過去に決めてきたようなシュートを打つところまではいけたけど、決められなかった。それが現実だ」
もっとも、経験あるベテランとは言ってもまだ28歳だし、これまでのキャリアでプレーオフを戦ったのは2022-23シーズンだけ。この時はウォリアーズとの『GAME7』に競り負け、ファーストラウンド敗退に終わっている。
ビクター・ウェンバニャマやステフォン・キャッスル、ディラン・ハーパーほど若くはないにせよ、フォックスもまた今回の経験を糧にもう一段階ステップアップできる立場だ。ただ、ファンは非情なもので、彼の伸びしろを信じることなく「トレードに出せ」という声もある。それは年齢だけでなく、高額年俸も関係してくる。フォックスとスパーズが昨年オフに締結した4年2億2100万ドル(約330億円)の大型契約は来シーズンから始まり、今シーズンは3700万ドル(約56億円)だった年俸は4950万ドル(約74億円)に跳ね上がる。
来シーズンの年俸はウェンバニャマとキャッスル、ハーパーの3人を足しても4000万ドル(約60億円)で、フォックスの『コスパ』に不満を感じるのは分からなくもない。しかし、キャッスルとハーパー、来シーズンが3年目と2年目のバックコートコンビの伸びしろがすべてを解決すると見るのは楽観的すぎる。
試合終盤のプレッシャーの掛かる場面、勝敗の責任を引き受けるのはいつだってフォックスだった。ウェンバニャマ、キャッスル、ハーパーはスタミナの問題を抱え、重圧に尻込みするようなシーンも何度かあった。シーズンを通してその重荷を背負い、プレーオフでは足首の捻挫を抱えながらも戦い続けたフォックスの貢献は過小評価すべきではない。
彼とブランソンとの差がNBAファイナルの勝敗を分けたのは事実で、フォックス自身もそれを理解しており、この経験を次のステップアップに生かすつもりでいる。
「開幕前に僕らが60勝したり、NBAファイナルに行くと思っていた人はいなかったはずだ。僕らは団結して、それを成し遂げた。才能ある選手たちが打ち解け、支え合ってここまで来たんだ。このチームのみんなと一緒に努力し続け、個人としてもチームとしても成長したい。僕たちは本当の意味でこういう経験をしたのが初めてだった。だから間違いなくここから積み上げて成長できると思っている」
そして彼は、印象的な言葉を発した。「チャンピオンは、実際に優勝する前に作られるものだと思う。僕らはその積み上げをしていくんだ」