加藤嵩都

「アップテンポなバスケットに繋げていくことが僕の役割の1つ」

名古屋ダイヤモンドドルフィンズは、10月11日、12日に行われた大阪エヴェッサ戦で同一カード連勝を達成。2試合とも相手を70失点以下に抑えるなど、ここまでディフェンスの安定感が光っている。昨シーズンのスティール王であるアーロン・ヘンリー、昨シーズンは不在だったアジア特別枠・帰化枠で獲得したカイル・リチャードソン、さらにパワー満点のアラン・ウィリアムズといった新戦力がフィット。就任5年目のショーン・デニスヘッドコーチは「私が名古屋に来てからこのグループが一番ディフェンスが良いです」と手応えを語っている。

ここからさらに貯金を積み上げていくためには、オフェンスで連携を高め、個々のタレント力をうまく生かしていくことが重要だ。名古屋Dにはリーグ屈指のゲームメーク力を誇る齋藤拓実がおり、見事なオフェンスの舵取りを行う彼の出場時間における得失点は、昨シーズン、チームトップの数字だった。

見方を変えれば齋藤がベンチに下がっている時も、いかに質の高いチームオフェンスを遂行していけるかが、安定したオフェンスを構築するための大きなカギとなる。そしてこの重要な役割を担うのが、加藤嵩都だ。昨シーズン、B2の福島ファイヤーボンズから名古屋Dに加入した加藤は、1年目からB1のレベルに順応しローテーションの一角に入った。今シーズンは開幕から2番手ポイントガードのポジションを確立し、より大きな期待を受けていることが分かる起用法となっている。

自身の役割について加藤はこうとらえている。「まずチームとして良いディフェンスをし、自分たちがやりたいアップテンポなバスケットに繋げていくことが、僕の役割の1つだと思って試合に臨んでいます。昨シーズンもプレーしているので、ショーン(デニスヘッドコーチ)さんの求めていることの整理はしっかりとついています。今はガードとして周りをどう生かしてゲームメークしていくのかを学んでいる最中で、試合を重ねながら精度を上げていきたいです」

加藤の持ち味は、一瞬でトップスピードに入る加速力を生かした高速ドライブで、この武器がB1でも通用することは昨シーズンにすでに証明済み。しかし、今は何より司令塔としていかに周りの選手たちの力を引き出すかを意識してプレーしている。

一見すると、自身の持ち味である個の強さを全面に押し出せていないのはもったいない。だが、加藤は「今の役割をするために名古屋に来ました」と歓迎している。

加藤嵩都

「自由になるためには一度、型にはまる必要がある」

加藤は言う。「ポイントガードとしてチームを勝たせる方法を知らなかったので、それを学びにきました。これまではどちらかと言えば『自由にやって良いよ』と言われていましたが、このチームに来てオフェンス能力の高い選手たちをうまく生かしてオフェンスを組み立てていくのは楽しいです。もちろん自分がボールを触って得点・アシストを伸ばしていけたら気持ち良いですけど、チームが勝つためには自分のことを考えていられないです」

そして、置かれた状況がより上のステージになったことへの手応えを語る。「これまでとフェーズが変わったと思っています。今は個人としてスタッツが出ていないので活躍していないように見られるかもしれません。ただ、僕の中では『こうやって味方を使っていけたらいいんだ』などスポットライトの当たらないところで成長を実感できています。このチームに来られてよかったと思います」

本人の言葉の通り、加藤は数字にこそ出ていなくても着実に司令塔としての総合力を高めているが、もちろん、自身の武器を生かすことを忘れてはいない。「自分はアタックファースト、スコアファーストの選手だと思っていて、そこのこだわりは今も捨てていないです。時が来たら、その部分も出していきたいです。拓実さんのように自分で攻めるところと味方を生かすところのバランスが取れた選手になれるよう、判断の精度を高めていければすごく良いガードになれると手応えを感じています」

また、指揮官の次の言葉を心に留めて、日々の研鑽に励んでいるとも話した。「ショーンさんには練習中から『身体で表現する前に、頭を使って味方をどうやって生かすかと考えないといけない』と言われています。ショーンさんが『自由になるためには一度、型にはまる必要がある』と言ってくれていて、今の自分はその段階にあると思います」

良い意味で型にはまることを選んだ加藤が司令塔としての地力を身につけ、その型を外すタイミングが来た時、どんな大化けをするかが楽しみだ。