
「ギリギリのラインを攻めるのが自分のディフェンス」
バスケットボール男子日本代表は、先週末に『日本生命カップ2025』でオランダ代表と対戦。1試合目に70-78で敗れた後、2試合目を74-53と圧勝した。2試合とも勝敗を分けた要因となったのは守備のプレッシャーだ。1試合目、日本代表はオランダ代表の前から積極的に仕掛けるトラップディフェンスに苦戦しターンオーバーからリズムを崩した。しかし、2試合目は相手の仕掛けに落ち着いて対処すると、トム・ホーバスヘッドコーチが「昨日は相手のディフェンスプレッシャーに負けましたが、今日は逆になりました。自分たちがプレッシャーをかけ、相手を疲れさせました」と振り返ったように、守備からリズムをつかみ勝利へと繋げた。
そして2試合目にディフェンスでチームに勢いを与えたのがジャン・ローレンス・ハーパージュニアだ。22歳の若手ポイントガードは、持ち前の豊富な運動量を生かした密着マークによって、相手オフェンスのリズムを崩す立役者となった。
試合後、ハーパージュニアは「ファウルにならないギリギリのラインを攻めるのが自分のディフェンスです。昨日はファウルが多かったですけど、今日はしっかりとアジャストできたのはよかったです」と、2試合目の守備に対する手応えを語る。
また、6アシストを記録したオフェンス面について、守備と同じくアグレッシブなプレーを心がけている。「受け身になったらダメと感じていて、何事にも挑戦するのが大事です。ボールプッシュできるのが自分の強みで、仲間が気持ちよくプレーできるように空いている時にパスを出し、それを決めてくれたのがよかったです」
ハーパージュニアは、今年2月の『FIBAアジアカップ2025予選WINDOW』のモンゴル戦で代表デビュー。18分40秒の出場で7得点3リバウンド3アシストを記録し、出場時間の得失点差ではチームトップの18と勝利に大きく貢献した。Bリーグでも大学最後のインカレを終え昨シーズン途中に加入したサンロッカーズ渋谷でローテーション入りを果たすなど、今回アジアカップのメンバー入りを狙える位置と順調にステップアップしている。

「目標としているのは勇輝で追いつかないと意味がない」
だが、本人は現状に全く満足していない。何故なら「目標としているのは(河村)勇輝で追いつかないと意味がないと思っています」と福岡第一、東海大の先輩で今NBA挑戦中の河村の位置に到達することしか考えていないからだ。この大きな目標達成に向け代表でも成長に貪欲で、ホーバスは「彼は良いチームメート、良い人です。うまくなりたい気持ちが強く、いろいろと質問してきます」と、その姿勢を評価する。
これから強化試合が続き『アジアカップ』に出場する12名の枠を巡る争いは本格化する。ハーパージュニアは、「持ち味であるアグレッシブなディフェンスは、みんなと違う部分だと思います。オフェンスではペイントアタックに自信があるので、この両方を生かしていきたいです」とアピールしていきたい部分を語る。
特に「自分は小さいですし、どこで勝つといったらエネルギーです」と、攻守ともに自ら仕掛ける強気なプレーを大切にする。
今の代表はかつてないサイズ感を誇り、オランダ戦において181cmのハーパージュニアは最も小さかった。だが、彼はウイングスパンが190cm以上とリーチの長さがある。そしてホーバスがやりたい守備において、高さよりも長さが重要だ。指揮官はこう語る。「4年前に男子のヘッドコーチに就任した時から、スティールを増やしたいと考えていました。そのためには身長というより、リーチの長さが必要です。ディフェンスのローテーションを早くしてもリーチがないとパスを弾いたり、スティールすることは難しいです」
まさにハーパージュニアは、リーチの長さを武器にホーバスが求めるディフェンスを体現している存在だ。振り返れば河村が、日本代表で最初に存在感を示したのは前回のアジアカップだった。偉大な先輩が通ってきた道を辿るためにも、ハーパージュニアにとって8月の『アジアカップ』はメンバー入りはもちろん大きなインパクトを与えたい舞台となる。