「今、JTと優勝を分かち合えるのは最高だ」
今年のプレーオフ、セルティックスは圧倒的な強さで頂点に立った。特に際立ったパフォーマンスを披露したのが、イースタンカンファレンスMVPに続き、ファイナルでもMVPを受賞したジェイレン・ブラウンだった。
ファイナルMVPの正式名称は『ビル・ラッセルNBAファイナルMVP』。セルティックスの伝説的名選手の名前を冠したこの賞は、ボストンの選手にとってことさら特別なものだ。ブラウンも「正直に言って、なんて言ったら良いのかわからない。ビル・ラッセルは、ボストンでのキャリアにおいて大きな意味を持っている。このMVPは非現実的だよ」と語り、「誰もが受賞に値する。もちろんジェイソン(テイタム)が受賞してもおかしくなかった。僕たちはチームとして戦った。それが最も重要なことだ」と、周囲のおかげでこの栄誉に預かったのだと強調した。
ブラウンは優勝できた理由について、次のように振り返る。「これまでのすべての過ちや逆境からの学びが、僕たちをより強く、タフにした。シーズンを通してその成果を示せた。開幕から勝ち星を重ね、攻守の両方においてそれぞれが高いレベルでチームのためにプレーした。どんな過程もスキップせずに積み上げてきた結果だ。すべての経験…あと一歩で敗れた経験、ボストンの街をがっかりさせた経験、すべてが頂点へ繋がったんだ」
ブラウンとともにセルティックスのエースを張るテイタムは、ブラウンがドラフト全体3位指名で入団した翌年の2017年に、同じく全体3位で加入。ここまで二人三脚でチームを強くしてきたが、ここ一番で勝ち切れずタイトルを逃すシーズンが続いていた。テイタムとブラウンの2大エース体制では勝てないのではないか、という声も彼らの耳には届いていた。そういった見方が誤りだったことを証明した喜びをブラウンはこう語る。
「僕たちは一緒に成長してきた。7年一緒にプレーしてきて、僕たちでは勝てないという声を聞いてきた。そういった声を遮断して僕たちは戦ってきた。お互いを信頼して遂にやったんだ。今、JT(テイタム)と優勝を分かち合えるのは最高だ」
ブラウン自身も様々な批判を受けた。昨年夏に、5年総額3億400万ドル(約480億円)というNBA最高級の契約延長をかわした際は「高額すぎる」と非難されたが、このポストシーズンで大型契約に値することをしっかりと示した。
心身ともによりタフになったブラウンは、「批判的な人々は(優勝したので)今は黙っているけど、来年になれば再び戻ってくるよ。今はこの瞬間を喜んで、来年は再び同じことを達成するだけだよ」と周囲の雑音をまったく気にしていない。
ウォリアーズに2勝4敗で敗れた2年前のファイナル。敗れた最後の2試合で計10ターンオーバーを犯し、不完全燃焼のままシーズンを終えたブラウンは今回、個人としても悔しさを晴らす見事なプレーを見せた。一つの大きな壁を乗り越えたブラウンはこのポストシーズンで、名実ともにエリート選手の仲間入りを果たした。