「彼らの名前を使って話題を作るのは愚かな行為だ」
セルティックスはNBAの前身であるBAAのスタートに合わせて1946年に設立された古豪で、レイカーズと並びNBAで最多となる17回の優勝歴を誇る。輝かしい歴史と多くのファンがいるからこそ、アンチも抱えている。レギュラーシーズンで64勝18敗と圧倒的な勝率を記録し、プレーオフでもヒートとキャバリアーズに4勝1敗、ペイサーズにはスウィープと強さを見せ付けているが、それでもセルティックスを認めない者は少なからずいる。
東カンファレンスのレベルが低い、プレーオフで対戦した相手はすべて重要な選手(ジミー・バトラー、ドノバン・ミッチェル、タイリース・ハリバートン)をケガで欠いて万全ではなかった、という2つはよく言われるところだが、チームの顔であるジェイソン・テイタムとジェイレン・ブラウンが悪意ある議論の対象となることもある。
この手のトラブルはどの選手も避けられない。現役選手で最も勝利を積み重ねてきたレブロン・ジェームズでさえ、多くの批判や疑念と向き合いながらプレーしなければならない宿命にある。テイタムもブラウンも過小評価を気にしてはいない。それは2人に限らず、NBAで名を挙げた選手なら誰しも同じだ。
しかし、内部での対立がまことしやかに噂されるようであれば、黙ってはいられない。NBAファイナル進出を決めてから、常に冷静にメディア対応に応じている指揮官ジョー・マズーラが、ただ一つ怒りを隠そうとしなかったのがこの件だ。
チームには序列があり、スター選手であれば自分が一番であろうとする。生まれたのは1年半違い、ドラフトではブラウンが2016年の1巡目3位指名で、テイタムが2017年の1巡目3位指名。2人はいずれもセルティックス一筋でキャリアを重ねてスター選手へと成長した。同世代のスターデュオが関係を悪化させて決裂に至った例は多い。それは彼らとは無関係の過去なのだが、それを根拠に2人が『誰がエースか』を巡って対立しているとの噂が作られ、人々の間で広まっていく。
テイタムがオールNBAファーストチームに選ばれ、ブラウンはサードチームからも外れた。この評価の差から2人の軋轢が生まれる──。そんな噂にマズーラは「この話題にどこまで踏み入るべきか迷っている」と言いつつも、ストレートな感情を言葉にした。「私は怒りを感じている。それは彼ら2人にとってフェアじゃないからだ。2人のことを知らない人たちが、彼らの名前を使って話題を作るのは愚かな行為だ」
「彼らはお互いに認め合い、毎日の練習でコミュニケーションを取り、励まし合っている。2人ともキャリアを通じて成功を収め、だからこそ普通なら人々はさらなる活躍を期待するものだろう。彼らが最高の選手であるだけでなく最高のチームメートであることを知らない者が憶測でモノを言う。私は2人を一緒にコーチできて光栄だが、2人を同じものとして扱わなければいけないとは思わない」
試合の勝敗とは別の次元で、マズーラは憤っていた。「この話は彼ら2人にとってフェアじゃない。そしてボストンの外だけで作られる。彼らの人間性をもっと知ってもらいたい。それが私の願いだ」