ここまで3勝3敗、勝敗によって対照的なチームの失点と河村のプレータイム
今、Bリーグで一番の支配力を発揮しているのは横浜ビー・コルセアーズの河村勇輝だ。昨シーズンはリーグ5位の平均19.5得点、1位の8.5アシストと大暴れしシーズンMVPを受賞。今シーズンはまだ6試合を終えた段階とはいえ、10月15日の群馬クレインサンダーズ戦で40得点を挙げるなど、平均26.3得点、5.5アシストと圧巻のスタッツを残している。
ただ、当たり前だがバスケットボールはチームスポーツであり、河村が傑出した数字を残すことが横浜BCの勝利に直結するわけではない。それはここまでのチームの成績が良くも悪くも実証している。ここまでの横浜BCの対戦成績は3勝3敗。勝った3試合は平均69.3失点で、河村のプレータイムは26分以下。一方、負けた3試合は89.7失点で河村のプレータイムは30分以上と対照的な内容だ。
振り返ると、負けた3試合はいずれも第1クォーターで横浜BCのやりたいディフェンスができずに失点が増え、追いかける展開。そのため、なんとか追いつこうとエースである河村がコートに立つ時間が必然的に増えていき、河村は期待に応えて得点を重ねるものの劣勢を挽回しきれずに敗れている。逆に勝った3試合は、序盤から横浜BCらしいディフェンスで主導権を握り、セカンドユニットも良い流れをキープし、河村のプレータイムを抑えつつ勝つという理想的な展開となっている。
「やはり自分が26分以下で試合を終えた時は、自分がいない時間帯でもディフェンスの強度が高く、オフェンスの流れも良い、チームとしてやるべきバスケットができています。その結果として、26分以下の試合は勝率も高くなっています」
このように現在のチーム状況について河村は語る。その上で「自分は今、本当にチームが勝つためだけにバスケットをやっています」と、個人としてはチームのためにどんな起用法でも受け入れるのみと強調する。
Bリーグの過酷なスケジュールを考慮すれば、1試合のプレータイムを25分程度で抑えるのはコンディション面で理想的と言えるだろう。しかし、常にチームファーストの河村にそういった考えはない。「僕自身は若いですし、何分でもプレーしようと思えば全然やれます。自分が長い時間、チームを引っ張らざるを得ない状況になったら、チームが勝つために自分のやるべきことをやりたいだけです。プレータイムについては特に気にしていないです」
開幕から波に乗れないスコットについては「ビッグマンをうまく生かせていないのは僕に責任がある」
一方で、ディフェンスのパフォーマンスの安定とともに、オフェンス面で改善していきたいと考えているのがジョシュ・スコットとの連携だ。今オフに新加入したスコットはコンタクトの強さと機動力を備えたセンターで、1試合2桁得点、2桁リバウンドのダブル・ダブルを何度も記録しているBリーグ有数のビッグマンだ。
今シーズンもゴール下の堅実なディフェンス、味方のシュートチャンスを生み出すスクリーンなど献身的なプレーが光っているが、開幕6試合で平均3得点に留まり、そもそも1試合平均のフィールドゴール試投数が3.5本と極端に少なくなっている。横浜BCの外国籍は河村に次ぐスコアラーの地位を確立しているジェロード・ユトフ、出場時間の得失点を示すプラス・マイナスでチームトップの7.7を記録しているデビン・オリバーの2選手が持ち味を発揮している。それだけにスコットの噛み合っていないところが目立っている。
まだ、シーズンは始まったばかりかつ、スコットは周りとの連携によってシュートチャンスを作り出していくタイプの選手であることも考えるとあせる必要はないだろう。ただ、河村は「(スコットがオフェンスでもっとからむことは)やはり必要だと思います」と語る。
「今リーグの中でも3ポイントの成功数や、試投数でリーグ上位だと思います(試投数はリーグ5位、成功数はリーグ1位、成功率はリーグ4位)。だけど、ペイントの中での得点が自分のドライブなど、ペリメーターからのドライブによるところが多いです」
このようにオフェンスについて語る河村は、スコットが本来のプレーを出せていないのはビッグマンを生かす役割を担う自身の責任と語る。
「スコット選手はボックスアウトやスタッツに現れないところで献身的な動きをしてくれています。ビッグマンを生かし、成長させるのはポイントガード次第だと思っています。まだまだお互いのタイミングなどが、うまく合ってない状況です。試合を重ねるにつれて、彼のペイントの中での点数が増えれば増えるほど、オフェンスのバランスが良くなり、相手にとっても脅威になっていくと思います。彼の生かし方については、 僕に責任があるかなと思っています」
『FIBAワールドカップ2023』で河村は、日本だけでなく世界のバスケ界に存在を知られた。その結果として、40得点を挙げた群馬戦の彼のハイライトが海外のバスケメディアのSNSでも紹介されるほどだ。
将来的な目標とする海外挑戦に向け、自身をアピールできる絶好の機会ではあるが、それでも今の河村は、個人のスタッツは二の次であくまでチームの勝利のために自分が何をできるか、しか考えていない。だからこそ、スコットの不調も自身に責任があると言い切れる。傑出した個人の能力に加え、リーダーとしても河村はより凄みを増している。
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