山本麻衣

「自分がシュートを決め切れなかったところで勝負が決まったかなと」

女子アジアカップ2023、日本代表は中国代表に71-73で敗れ準優勝で終わった。優勝を逃したことで満足できる結果ではないが、昨年9月のワールドカップ以来となるFIBA公式戦でチームとしてステップアップした姿を見せられたことは間違いない。そして、個人として飛躍が目立った1人が司令塔の山本麻衣だった。

五輪最終予選(OQT)への出場を決めたグループリーグ最終戦のオーストラリア戦では3ポイントシュート9本中5本成功の19得点5アシストを挙げ、勝利の立役者となった。そして大会全体では平均23.5分の出場で10.6得点、全体トップとなる5.2アシストを記録し、大会のオールスター・ファイブにも選出されている。

「みんなでディフェンスにフォーカスし、途中まで守り切れていたところはありました。ただ、最後のほうでコミュニケーションミス不足から、3ポイントシュートを連続でやられてしまいました。そして最後はオフェンスの遂行力に欠けましたし、自分がシュートを決め切れなかったところで勝負が決まったかなと思います」

このように中国との決勝を振り返った山本は、30分のプレータイムで9アシストと攻撃の起点となったが、フィールドゴール13本中2本成功の5得点に留まった。自身が悔いるように、勝負どころで持ち前の得点力を発揮することができなかった。特に第4クォーターでは、相手ガードの密着マークを剥がすことができなかった点を反省する。

「相手の4番(ガードのリ・ユアン)が出ている時、すごいプレッシャーがかかっていた訳ではないのに、スクリーンの基本的なところでおろそかになった部分がありました。それでズレができにくくなり、焦ってしまったところはあります。第1クォーターみたいに、しっかりとした状況判断をして対応できたらよかったと思います」

山本麻衣

「リーダーシップの部分などでワールドカップ以上に得るモノがありました」

今大会の山本は平均23.5分の出場と、ワールドカップでの平均9.3分出場から大きくプレータイムを伸ばした。特に中国戦では29分46秒に渡ってコートに立っており、名実ともに日本のエースガードを担った。だからこそ、決勝戦の敗因として自分に強くベクトルを向けている。オールスター・ファイブ選出の感想を聞くと、「この賞をもらったのは本当にみんなのおかげです。自分がもらってよかったのかなって……」と悔し涙を流し、次の舞台での雪辱を誓った。

「みんなに助けられてこういう賞をいただけたので、感謝したいです。そして、次のOQTでしっかり結果を出せるようにしていきたいです」

山本が言及したように、日本代表にとって次の大会は来年2月に開催予定となっているパリ五輪の切符をかけたOQTとなる。「(昨年の)ワールドカップに比べたらチーム力に加え、戦う気持ちの部分でも違った雰囲気でした。ここから、もう一段階上がるために、みんながそれぞれの場所で頑張り、このまま成長を続けていけたらと思います」

こうチームの進化について語る山本は、個人としてのアジアカップを次のように総括している。「まずはアジアのNo.1ポイントガードになることを目標にやってきましたが、今大会ではなることができませんでした。ただ、スタートとしてより責任感を持ってプレーをさせてもらうことで、リーダーシップの部分などでワールドカップ以上に得るモノがありました。この経験をしっかり次に生かしていきたいです」

日本の武器がスピードと長距離砲のスモールバスケットボールであることは、今や女子バスケットボール界では誰もが知るところとなった。だからこそ司令塔であり、チーム屈指の外角シュート力を持つ山本は徹底マークを受ける。しかし、山本はこの試練に真正面から立ち向かう気概を見せる。そこには、チームを引っ張っていきたいという揺るぎない覚悟がある。「やっぱり海外のチームは日本と対戦した時、ガードをつぶしてくると思うので、そこは自分がこれから乗り越えなきゃいけないところです。ポイントガードとして自分のリズムが日本のリズムになってくる。自分に波がないようにこれからやっていきたいです」

今回の悔しさを糧に山本が、どんな進化を遂げるのか。秋にスタートする新しいシーズンでのパフォーマンスがより楽しみになる彼女の涙だった。