世代屈指のスコアリングガードが大学最終学年度を前にプロの世界へ

千葉ジェッツは12月24日、川崎ブレイブサンダースと対戦。第4クォーターに32得点と勝負どころでのオフェンスが爆発して89-85で逆転勝利を収めた。

千葉Jは、試合の出だしからゾーンディフェンスを敷く川崎に対して3ポイントシュートやハイポスト付近でのミドルシュートをオープンで放つ機会を作り出すが、思うように決め切れない。また、川崎の強度の高いディフェンスからのトランジションを止めることができずリードを許す。

しかし、インサイドの要を担うジョン・ムーニーを欠く中でもゴール下の攻防で互角に渡り合うと、ターンオーバーからの得点で21-7と大差をつけたように持ち味の激しいプレッシャーディフェンスを見せて第3クォーター終了時点で6点ビハインドと食らいつく。そして、第4クォーターではこれまでリングに嫌われていたアウトサイドシュートが効果的に決まったことで試合をひっくりかえし、中地区首位の川崎を撃破した。

この試合、勝敗が決した残り1秒には、先日千葉Jとプロ契約を結んだばかりの小川麻斗がコートに立った。福岡第一では同級生の河村勇輝と、高校バスケ界の歴史に残る破壊力抜群の高速ガードコンビを結成し、2年と3年にウインターカップ連覇を達成。日本体育大に進学後も下級生の時から中心選手として活躍するなど世代屈指の選手として活躍してきた小川だが、今はまだ大学3年生。あと1年の間大学でプレーできる中、バスケ部を退部してのプロ転向を決断した背景をこう語る。「もともと今年のインカレで結果を残して4年生でプロに転向したい気持ちはありました。ただ、インカレは2回戦敗退と悔いが残ったので、4年生で優勝したい思いも強くなって悩みました」

大学への深い愛着もあるが、それでも小川がこのタイミングでプロ選手を選んだのは、確固たる目標があるからだ。「大学のチームメートと監督には迷惑をかけることになります。それでも将来は日本代表となり、海外でもプレーをしたいと思っています。今回はその一歩を踏み出せるチャンスで、Bリーグで結果を残したいと思って退部を決意しました」

そして、プロ生活のスタートに千葉Jを選んだ理由をこう続ける。「プレータイムをもらえるかは、自分次第だと思います。ポイントガードでは代表のトップである富樫(勇樹)さん、ベテランの西村(文男)さん、2番ポジションでは原(修太)さんなどの練習から見て学べるのは自分にとってプラスになると思ったので千葉ジェッツを選びました」

「負けたくない気持ちは持っていますが、勇輝からガードとして学んでいきたい」

冒頭で紹介したように小川は、高校時代に河村と一時代を築いた。小川も実力を高く評価されているからこそ、これからは河村との比較は避けられないだろう。河村は大学2年終了後に一足早くプロに転向しているが、今回の自身の転向は全くの無関係と語る。「そうとらえられてもおかしくない状況ではありますが、勇輝がプロ転向したから自分も行きたいという気持ちにはならなかったです」

そして「意識してないと言ったら嘘になると思います」と語るが、すでに日本代表にも定着するなど国内屈指のプレーヤーとなった同級生をリスペクトしている。「勇輝はガードとして学ぶことが多く、自分に持っていないものを持っています。負けたくない気持ちは持っていますが、勇輝からガードとしていろいろと学んでいきたいと思っています」

現状、千葉Jは大倉颯太が故障で長期離脱中となっており、ポイントガードが1枚足りていない。学生時代は、非凡な得点力を強みとした2番もこなせるコンボガードとして活躍してきた小川だが、このチーム事情もあり、まずは司令塔としての出番を目指すことになる。福岡第一の井手口孝コーチと親交がある指揮官のジョン・パトリックは、小川を次のように評価している。「井手口先生の下、福岡第一でプレーしていてコンボガードもできます。得点も取れるし、あのサイズでボールハンドリングもあるのでポイントガードとして起用する予定です。明るい子でよく個人練習が好きな選手です。彼には明るい将来が待っていると思います」

小川本人は、プレータイムを得るために最も意識すべきは守備と強調する。「得意なプレーは得点やドライブですが、プロでは簡単に得点を取れないと思っていて、もっと磨かないといけない。そして千葉ジェッツはディフェンスのチームなので、まずはディフェンスからアグレッシブに頑張っていきたいです」

リーグ屈指の選手層を誇る千葉Jで出場機会をつかむのは簡単なことではない。だが、彼が目標とする日本代表や海外でのプレーを実現するためには乗り越えないといけない壁だ。そして、見方を変えれば小川がプレータイムを得た時、それは千葉Jの王座奪還に一歩近くことを意味する。

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