クリス・ポールはクリッパーズからロケッツへ! 西カンファレンスに激震を引き起こすであろう仰天トレード『3者の思惑』

2017/06/29
NBA&海外
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写真=Getty Images

現実路線でエース退団の見返りを得たクリッパーズ

6月28日、クリッパーズが大きな決断を下した。今夏フリーエージェントになることが濃厚と見られていたクリス・ポールと交換で、ロケッツから7選手を獲得したのだ。

気になるのは、チームの核であるポールをなぜこのタイミングで放出したのか、ということ。

フリーエージェント選手との交渉が解禁される直前の時点で、ポールの移籍の意思が固いことを察したクリッパーズは、選手本人と話し合う機会を設けた。おそらく、その席でポールにプレーヤーオプションを行使するよう説得し、そしてトレードを成立させることを約束したのだろう。結果、クリッパーズはポールこそ失ったが、決して少なくない見返りを得ることができた。

クリッパーズにとってポールの放出は大きな痛手だが、何も見返りがないままフリーエージェントで出て行かれることは回避できたし、見返りも得られた。そもそも32歳というポールの年齢を考慮し、2億ドル(約225億円)を超えるスーパーマックス契約を提示することをリスクと見ての決断だった、という噂もある。

クリッパーズがポール放出の見返りとして獲得したのは、ビバリー、サム・デッカー、モントレズ・ハレル、ダレン・ヒリアード、ディアンドレ・リギンズ、ルー・ウィリアムズ、カイル・ウィルジャー。さらに将来的なドラフト1巡目指名権まで含まれている。

特にビバリーは派手なプレーはないものの汚れ仕事を厭わず、NBAが今年から設けた『ハッスル・スタッツ賞』に輝くなど、スタッツとは別の仕事でチームに貢献できる存在。その実力はプレーオフでも十分に証明された。さらにウィリアムズは熟練のシューターで、得点源として計算が立つ。

しかし、他の5選手が来シーズンの開幕ロスターに残るかどうかは分からない。解雇してキャップスペースを空け、フリーエージェントになるブレイク・グリフィンと再契約を結ぶ資金確保にあてる可能性は高い。

ハーデンとポールのデュオは大きな武器となる

いずれにしても、今回のオペレーションで注目すべきはクリッパーズよりもロケッツの方だ。昨シーズン55勝(27敗)したチームに、NBA最高レベルのポイントガードが加わったインパクトは果てしなく大きい。昨シーズンはジェームズ・ハーデンがポイントガードに転向して成功を収めたが、これで再び本来のポジションであるシューティングガードでプレーできる。

昨シーズンのハーデンは29.1得点、11.2アシスト、8.1リバウンドを記録。18.1得点、9.2アシストのポールと組むことで、NBA最強のバックコート・コンビが生まれることになる。ハーデンとポールの新たなデュオは無限の可能性を秘めているが、一方で懸念材料がないわけではない。

昨シーズンのロケッツは、ハーデンを中心に速いペースのオフェンスを展開。48分間でのポゼッションでリーグ3位となる102.5を記録した。だが、ポールが司令塔を務めたクリッパーズは、同17位の98.2。つまり、正統派ポイントガードであるポールがロケッツのハイペースなオフェンスを率いるのに適しているかは疑問符が付く。

どちらも自分で得点を取ることも、パスで味方の得点をアシストすることもできるタイプだが、アイソレーションを得意とする。2人のエースがアイソレーションを繰り返す展開になると、オフェンスはうまく回らない。ファイナルでのキャバリアーズがそうだったように、圧倒的な得点力を誇る選手が止められた場合、それで攻め手を失ってしまう恐れがある。

また、現役選手の中で最多のスティール数を記録しているポールは、相手からボールを奪う能力には優れているものの、その反面、指のケガが多く、昨シーズンは親指の手術により61試合の出場に終わった。このあたり、起用法に考慮が必要な選手であるのも確かだ。

もっとも、ポールとしてはロケッツのシステムに噛み合わなかった場合、来年またフリーエージェントとなって新たなチームを探すことができる。ロケッツに噛み合えば、そこで新たな大型契約を結べばいい。

クリッパーズとクリス・ポールにとってはメリットの大きい今回のトレード。しかしロケッツが損をしているわけではない。ウォリアーズ『1強』の西カンファレンスに風穴を開けるという強い意志を示し、注目度は飛躍的に高まる。クリス・ポールの高年俸も、ひとまずは1年負担すればいいのでリスクは少ない。新シーズン、ロケッツは文字通り『勝負の年』となる。

指揮官マイク・ダントーニの下で昨シーズンのNBAで大きな話題となったロケッツのオフェンスシステムが、ポールの加入によりどう変化するか。2017年の年間最優秀ヘッドコーチ賞に輝いたダントーニにとっては、また新たな『腕の見せ所』がやって来たと言える。