文=鈴木健一郎 写真=小永吉陽子

井上監督の「ポストの守り方」が効いて桜花学園が優位に

『JX-ENEOSウインターカップ2016』大会6日目、女子のファイナル。3冠を狙う桜花学園(愛知県)と前年王者の岐阜女子(岐阜県)の『2強』による激突となった。

立ち上がりにペースをつかんだのは桜花学園。昨日の準決勝の後に井上眞一コーチは「ポストの守り方がカギ」と話していたが、その通りしっかり対策を打ってきた。岐阜女子の強みは『柔』のディヤイ・ファトーと『剛』のバイ・クンバ・ディヤサン、2人の留学生センターが交互にコートに入り、常にフレッシュな状態でインサイドを支配することにある。

桜花学園はフットワークのあるファトーには馬瓜ステファニーを当てて、190cmのディヤサンが投入されるとすぐさま186cmの梅沢樹奈を入れてマッチアップさせた。ファトーにはまずパスを入れさせず、持たせてもタフショットしか打たせなかった。ディヤサンにはパワー勝負でペイントから締め出す。

これで岐阜女子の武器を封じると、守備でリズムをつかんだ馬瓜が鋭いドライブからのレイアップを立て続けに決め、司令塔の山本麻衣に2本の3ポイントシュートが飛び出したこともあって一気に抜け出し、第1クォーターで24-15とリードを奪う。

それでも桜花学園の一方的なペースにはならない。ルーズボールへの執着心を見せてディフェンスから落ち着きを取り戻した岐阜女子が、ポスト一辺倒から小野佑紀や藤田歩のドライブインへと攻め手を切り替えると、次第に点差が縮められていく。

第3クォーターに入ってすぐ、山本が自陣で保持したボールを背後から飛び込んだ石井香帆に突つかれて奪われ、素早く展開されて石坂ひなたの3ポイントシュートを許す。これで岐阜女子を勢いに乗せてしまった。次のポゼッションでも石坂に3ポイントシュートを決められ、35-37と一気に逆転される。

意地と意地がぶつかり合うライバル同士の対戦、ここから互いに得点を奪い合い、目まぐるしくリードチェンジする展開に。それでも40-42とビハインドを背負った残り5分23秒に取ったタイムアウトを機に、桜花学園がまた抜け出す。

井上コーチが「岐阜女子の流れを切るため」と言う狙いどおりのタイムアウト。逆転された時も「インターハイでもあったことなので、ここで焦らなければ返せると思っていた」という馬瓜がゴール下の得点をしぶとく決めて42-42と追い付くと、ファトーに厳しいプレッシャーをかけてタフショットを打たせ、そこからの速攻で佐古瑠美の3ポイントシュートが飛び出す。岐阜女子が敷いたゾーンディフェンスを瞬時に攻略し、11-0のランで51-42と突き放した。

岐阜女子の猛反撃、逃げ切りを図る桜花学園との攻防

第4クォーターに入り、岐阜女子はもう一伸びの猛追を見せる。これまで攻守にフル回転していた馬瓜の運動量が落ちると、沈黙していたファトーがゴール下で得点を量産し始める。相手のエースにも意地がある。第3クォーターまで6点に抑えていたファトーは最終クォーターに10得点を挙げる大暴れ。昨年もマッチアップしていた馬瓜は「去年の反省をもっと生かさなければいけないところでした。何とか勝てたんですけど、まだ足りないです」と振り返った。

それでも、ファトーを16点に抑えたことには価値がある。岐阜女子の安江満夫コーチは、去年の決勝を含め何度も対戦してきた2人のマッチアップをこう振り返る。「勝負っていうのは負けたほうが蓄積するエネルギーは大きい。ファトーがサボってたわけじゃないですが、その負けた悔しさのエネルギーが馬瓜のほうが大きかったと思います」

同じくディヤサンも前日の10得点から決勝では4得点と抑えた。梅沢はしぶとくジャンプシュートを決めて4得点。このマッチアップでタイに持ち込んだことも大きい。

残り5分を切り、当たっている石坂にこの試合4本目の3ポイントシュートを決められ、ファウルトラブルでベンチに下がっていた小野もコートに戻って桜花学園を攻め立てる。ファトーの連続得点で、残り5分の時点で8点あったリードがみるみるうちに消えていく。

石井に3ポイントシュートを決められ67-65、残り1分。桜花学園は赤木里帆のトラベリング、さらにはリスタートからのバックコートバイオレーションと命取りになりかねないミスを犯すが、残り30秒でのタイムアウトで逃げ切り方を確認。石坂にタフショットを打たせ、そのリバウンドを粟津ががっちり抑える。

「どう転ぶか分からないので、絶対ミスできないと必死でした」と振り返るラスト数秒を乗り切り、馬瓜がボールを宙高く放り上げたところで試合終了のブザー。67-65で桜花学園が逃げ切り、ライバルを下した。

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