宮澤夕貴

取材=小永吉陽子 構成=鈴木健一郎 写真=FIBA.com

延長戦を勝ち切るためのビッグプレーを連発

ワールドカップに参戦している日本代表は昨日、ベルギーと対戦した。初戦は世界2位のスペインに本気に勝ちに行った上での力負け。そこから間を置かずにすぐ試合となったため、選手は十分な休養を取ることができず、またチームとしても戦術的な準備に時間を使えない苦しい試合となったが、粘りに粘った末に延長戦を制して77-75で競り勝った。

1本のシュート、1本のリバウンドが勝敗を分ける際どいゲームで、決められたら逆転負けの3ポイントシュートに飛び込むブロックを成功させて勝利を決定づけたのが宮澤夕貴だ。その宮澤は延長に入って3ポイントシュート2本、フリースロー2本を決め、日本の9点のうち8点を稼ぎ出してもいる。プレータイムは両チーム最長の43分。消耗戦の中で誰よりも疲弊していたはずの宮澤の大仕事だった。

3ポイントシュート試投数は13本、うち5本を成功させて21得点。「スペインは(大会前の練習試合で)3戦やって完璧にアジャストされて、打つタイミングがなかったので、今日は昨日より楽に打てると思って、空いたらどんどん打っていこうという気持ちでした」と宮澤は言う。

それと同時に、自分の活躍を誇るだけでなく、第4クォーターにオープンで打ったシュートを2本連続で落とし、ベルギーを勢い付かせて逆転を許したことを忘れてはいなかった。「ああいう大事な場面で決められなかったのはこれからの課題です。でも、延長戦で決めたので、そこはチームを勝たせることができて良かったと思います」

そして最後、足が残ってないはずの場面でもしっかりと寄せてのブロックショット。相手の5番には10本中7本の3ポイントシュートを決められていたが、11本目は完璧に止めた。「スリーをやられたらもう終わり、絶対に来ると思って自分が出ようと」と、狙い通りだったと明かす。

「前のスペイン戦では40分ぐらい出て、そっちのほうがキツかったです。今日は確かにキツかったんですけど、まだ大丈夫で。慣れたのかな」と宮澤は笑った。

宮澤夕貴

リーダーの自覚「先頭を切ってプレーしたい」

ヘッドコーチのトム・ホーバスは、「ハーフタイムの時点で、ちゃんとやったら15点差ぐらいで勝つ試合だと思った」と明かすが、試合はどちらに転んでもおかしくないタフな展開となった。それでも勝ち切ったことに指揮官は「ベルギーが強い、間違いなくヨーロッパ3位のチームで、この試合に勝ったことは本当に大きい」と手放しで喜んでいる。

十分な準備ができないまま臨んだ試合でありながら、試合の局面に応じてアジャストし続けて競り勝ったのはチームの成熟度がモノを言ったからだ。宮澤も「チームとしても最後まで我慢して、攻めることも守ることも全員ができた。それが勝ちにつながったと思いますし、みんな強い気持ちを持ってコートに立っていたのがうれしかったです」と振り返る。

宮澤個人としても、際どい展開でも慌てることなく、自分のやるべきプレーを遂行したという意味で大きな成長が確認できた試合となった。「前はあまり余裕がなかったけど、年齢が上になってチームを引っ張る立場になったのもあって、そこは自分がしっかりしなきゃと思います。ベンチで見ていてもコートに入っている時も、どこが攻められているのかを一回一回言わなきゃいけなくて、それを言うことで自分自身が理解できているというか、落ち着いて考えて最後までプレーできました」

「スペイン戦では第1クォーターでファウルしてしまってベンチに下がって試合を見ている状況でした。今後からこれはやっちゃいけないと思って。今はセンターの層が薄いので、『だから自分が』という気持ちはすごくあります」

そうやって自分が引っ張ったチームが激戦を勝ち切ったことは、宮澤にとっても大きな自信になる。「日本のチームオフェンス、チームディフェンスは通用するっていうのが自信になりましたし、チームとしても自信になったと思います。これからも一人ひとりが自信を持ってコートに立ってプレーしてほしいですし、自分も先頭を切ってプレーしたいと思います」