文・写真=泉誠一

本調子ではない満原だが「僕にとっては幸せなことです」

1カ月前は、イラン・テヘランの地で日の丸を背負い、『FIBA ASIA チャレンジ』を戦う最中にいた。平均12.8分の出場時間だったが、198cmの体躯で大きな海外の相手に体をぶつけてマッチアップする満原優樹は死に物狂いで戦っていた。

現在のコンディションを聞けば、「はっきり言って良くはないです」と答える。それは満原だけではない。「さっき辻(直人)と『お互いに顔が疲れている』という話をしました。イランに行ったメンバーはまだまだ体調は優れていないですね」

本調子ではない満原だが、Bリーグが開幕し、喜びを感じてもいる。先発出場を任される試合もあり、何よりもこれまで10分台だった出場時間が、平均24分と大幅に伸びた。

「これまで試合に出られなかった苦しさを味わってきましたが、今はコートに出た中で考えたり、反省点を得られているので、僕にとってはすごく幸せなことです」

この第4節が始まる前までは、5勝1敗で中地区首位だったサンロッカーズ渋谷だが、川崎ブレイブサンダースに74-89で敗れ、5勝2敗となり3位まで順位を下げた(10月15日現在)。4戦目以降、ケガのため出場できなかったカディーム・ジャックが、川崎戦の前に契約解除になったのも痛い。

帰化枠であり日本代表のアイラ・ブラウンはいるが、外国籍選手を一人欠いた状態でのNBL王者との対戦は、15点差で敗れた。リバウンド数は川崎の40本に対し、SR渋谷は24本と大きく差を付けられている。

ヘッドコーチのBTテーブスは、「もう一人、外国人のビッグマンがいてくれれば、リバウンドの数字はもう少し変わってきたと思う。インサイドの3人だけではなく、全員がリバウンドに対して数字に貢献できるようにしてほしい」と注文をつけた。

SR渋谷のインサイドの3人とは、208cmのアールティー・グイン、帰化枠のアイラ・ブラウン、そして満原だ。彼らはインサイドもさることながら、アウトサイドシュートも得意としている。70.8%の驚異的な3ポイントシュート成功率を誇るブラウンは現在リーグ断トツ1位、48.6%のグインも3位と続く。この試合でもブラウンは4本、グインは3本の3ポイントシュートを決めている。1本も決められなかった満原だったが、積極的に5本の3ポイントシュートを試みていた。

明るい青山学院大学記念館に、驚きと安心

同じようなタイプである3人の役割について、「オフェンスに関して彼らの役割は明確であり、ポストアップもできるし、外から仕掛けることもできる」とヘッドコーチのテーブスは言う。一方のディフェンスは、「まだまだ不明確な部分があり、そこは自分の責任でもある」と模索中のようだ。

満原自身は、「オフェンスでもディフェンスでも体を張らなければいけないというのは分かっています。そこをやらなければ勝ちにつながらないことも分かっています。その部分が僕個人としてまだできていないことなので、絶対にやらなければいけないと思います」と冷静に受け止めている。

今年の夏は日本代表を通じて様々な国際試合で経験を積み、「接触の部分で当たり負けする感覚はない」と自信を持つ。スタッツには表れないスクリーンプレーや、泥臭く体をぶつけて味方を生かすプレーでの貢献度は大きい。一方、「ノーマークのシュートを決めないと勝てないことは分かっています。そこはチームの足を引っ張る部分でもあり、逆に言えば勝たせられる部分でもある課題点」として挙げた。

学生時代、「確か、1回ここで試合しました」と言う青山学院大学記念館。2008年10月12日、関東大学リーグ戦で使用されていた。東海大学出身の満原が1年生の時であり、16得点10リバウンドと活躍したが、60-64で青山学院大学に惜敗。相手には同期の辻がおり、奇跡的だが川崎戦の審判を務めた平原勇次レフェリーが、あの日も吹いていた。

当時は「古くて暗い体育館だな」という印象だったが、ホームとなって再び戻ってきたら「すごいキレイになっていて驚きましたし、安心しました」と話し、モチベーションは高い。さらに、プレータイムを与えられていることで、「これまでとはモチベーションは全然違います」。

「僕らは勝つために戦うことはもちろんですが、バスケが好きで職業にしているので、試合に出られていることが幸せです」

川崎との連戦は本日は14時からティップオフ。次戦の青山学院大学記念館でのホームゲームはしばらく空き、1カ月後の11月19日まで行われない。秋晴れの心地よい陽気の青山で、ショッピングやランチとともにバスケ観戦をしてみてはいかがだろうか。