篠山竜青

大阪のディフェンスは想定内だったにもかかわらず、術中にはまる。

川崎ブレイブサンダースは現在17勝6敗、東地区で千葉ジェッツと勝率トップで並んでいる。過去2シーズンの川崎はこの時期に故障者に苦しんでいたが、今シーズンは序盤にマット・ジャニングが数週間欠場するも長期離脱者はおらず順調な歩みを見せている。

12月に入ってからは6勝3敗だが、アルバルク東京、千葉ジェッツ、大阪エヴエッサと勝率5割以上のチーム相手にそれぞれ1勝1敗。上位相手に同一カードで連勝するのは簡単なことではなく、想定の範囲内と言える。ただ、ここにきて気になる課題が見えてきているのも事実だ。

26日の大阪戦、川崎は守備が崩れて81-90で敗れた。大阪の特別指定選手、高島紳司が3ポイントシュート5本を含むフィールドゴール9本中9本成功による23得点と予想不可能な大暴れだったのは痛かったが、それでも大量失点を喫したのは、川崎が拙攻から自滅した側面が大きい。佐藤賢次ヘッドコーチは26日の敗戦後、こう総括した。

「ウチのオフェンスの良さ、目指しているものを徹底的に潰された印象です。ウチはピック&ロールが多いチームですけど、そこを全てアンダーで対応され、アウトサイドからシュートをいつでも打てるような状況でしたが、そのシュートが入らない。チームでオフェンスができず、ボールが孤立していました。難しい試合になるとしたらこういう展開になるだろうと想定していた通りになってしまいました。最後は我慢しきれず余計なファウル、簡単なターンオーバーと自分たちから崩れた印象です」

川崎の大きな武器は、ニック・ファジーカス、ジョーダン・ヒース、パブロ・アギラールを同時起用する3ビッグで、203cmのアギラールが3番でプレーすることで生まれるサイズのアドバンテージを利用したインサイドアタックは迫力満点だ。それと同時にリーグでも屈指の3ポイントシュートを打つチームで、ここまでの試投数はリーグトップの島根スサノオマジックからわずか5本少ないだけのリーグ2位の684本。一方で成功率は本数を多く打っているからこその面はあるが、ワースト5位の33.3%と低調だ。

そうなると相手が外を犠牲にしてもゴール下を閉じてくるのは妥当な選択肢だ。特に今節の大阪はカイル・ハントがコンディション不良で欠場し、インサイドの層が薄かった。だからこそ佐藤ヘッドコーチが語るように大阪の守り方は想定内だったが、それでも相手の術中にはまってしまった。

「こちらから伝えたゲームプランは、自分のタイミングで自信があっていつも練習しているシュートは打ち切ろう。それが上手くいかなかった時はチームとしてオフェンスをする。インサイドを軸にオフェンスをしようと話していましたが、そこのコントロールが上手くいかなかった。空いたら打つ、を続ける展開で相手に走られてしまったので、そこのコントロールは伸ばしていかなければいけないです」

川崎ブレイブサンダース

適切なプレーを選択できない結果、フラストレーションを溜める内容に

川崎は勝った25日も敗れた26日も、藤井祐眞、篠山竜青、マット・ジャニングとガード陣の3人でフィールドゴールの半分以上のシュートを打っている。これは明らかに打ちすぎで、3ポイントシュートは25日は26本(うち8本成功)、26日は21本(うち5本成功)と、打つように仕向ける大阪の要求通りとなった。それで外から確率良く入れば問題はないが、シュートは水物であり、入らない時は入らない。アウトサイドシュートは外れるとロングリバウンドとなり、そこから相手に走られやすいデメリットもより際立つ。

川崎のオフェンスで相手が最も恐れるのは、5人が連動するチームオフェンスで少しのズレを大きな綻びへと広げられ、イージーシュートのチャンスを作り出されること。だからこそ、そのきっかけを作り出すビッグマンはファウル覚悟の激しいディフェンスに晒される。そんな状況でボールタッチが減り、自分の頭越しに次々と放たれるシュートが入らず、そこから相手に走られたらフラストレーションが溜まっていくの自然の流れだ。

今回の敗戦も、最後はニック・ファジーカスがファウルへの判定への抗議でテクニカルファウルを取られるなど、我慢できなかったのが決め手となった。まさに今の川崎が克服しないといけない課題が浮き彫りとなった。

「負ける時はこういうパターンです。どこのチームもファウルすれすれで、ズレができないように密着してきます。今日もそうなると言っていて、それでシュートが入らないとビッグマンもどんどんフラストレーションを溜めていく。そこで声をかけて乗り越えないといけないと話しましたが、乗り越えられなかった」

川崎のビッグラインナップに対抗できるサイズのあるメンバーを有しているのはごく一部のチームのみだ。これからも今回の大阪のような対策を取られることは容易に想像できる。そこで相手の望み通りのシュートセレクションを続けるのではなく、相手の嫌がることを続けていける我慢強さ、タフな試合運びができないと川崎が東地区の上位争いを勝ち抜くのは難しい。

佐藤ヘッドコーチは「まだまだ、強くない」と言い切る。それと同時に、ここで立ち止まるチームではないと信じてもいる。「これを乗り越えるのが優勝できるチームの条件で、これからどんな方法があるのか選手と一緒に考えていきます。見ていてください。必ず乗り越えます」

まずは年内最後となる29日の茨城ロボッツ戦、前回は2連勝したが初戦は残り1分の時点で同点と苦しんだ相手に、どんなプレーを見せるのだろうか。