ウドニス・ハズレム

ビッグマンが揃って欠場する中、41歳がペイントエリアを死守

ヒートはケガ人続出で、現地12月23日のピストンズ戦ではジミー・バトラーとバム・アデバヨの看板選手2人に加え、PJ・タッカーやマーキーフ・モリスなど頼りになる戦力が抜けた状況での戦いを強いられた。

ケガ人がビッグマンに集中する中で、他のチームであれば新たに契約を結んだ『助っ人』に頼るところだが、ヒートにはウドニス・ハズレムがいる。レブロン・ジェームズと並ぶ現役最長のキャリア19年目、41歳の大ベテランは、2015-16シーズンの出場37試合、平均プレータイムは7分以降は一歩引いた立ち位置を取り、チームの精神的支柱としてヒート一筋のキャリアを続けてきた。『バブル』の一昨シーズンは出場4試合、昨シーズンの出場は1試合のみ。それでも彼はただの『お飾り』ではない。必要とされればコート上できっちりと仕事をこなせる正真正銘のNBAプレーヤーだった。

ケガを押して先発出場したドウェイン・デッドモンが5分しかプレーできない状況で、第3クォーター残り5分、73-72と競った状況で投入されたハズレムは、そこから気持ちのこもったプレーを見せる。

この試合を前に、ハズレムはチームリーダーとして若手の成長をこう評していた。「このチームではプレータイムが何分の選手でも、同じ努力をしている。チームの勝利のために全員がハードワークをしている。彼らに限界はなく、日頃の努力がこういう時にこそ発揮されるはずだ」。ヘッドコーチのエリック・スポールストラも「彼が一人ひとりが何のためにここにいるのか、こういう状況で証明される」と語っていた。

いずれの言葉も、若手だけでなく今日のハズレムにぴったり当てはまるものだった。ピストンズはケイド・カニングハムを欠いていたが、若いチームには勢いがあり、手負いのヒートを攻め立ててほとんどの時間帯でリードしていた。そこに立ち向かったのがハズレムだ。特別な何かをするわけではない。ただペイントエリアで身体を張り、ルーズボールに飛び込み、トランジションで走った。その姿がチームメートを何よりも奮い立たせた。

第4クォーター残り1分、カイル・ラウリーが相手のダブルチームにボールロストしそうになりながらも踏ん張ってボールを繋ぐ。ここでタイラー・ヒーローが難しい3ポイントシュートをねじ込んで逆転に成功。さらにゲイブ・ビンセントのアシストからマックス・ストゥルースの3ポイントシュート、チームの窮地にステップアップした『脇役』が勝ち越し点を奪う。

そして最後はハズレムだった。同点を狙う3ポイントシュートがリングに嫌われた後、逆サイドから戻って来たハズレムがリバウンドをがっちりと抑えて、ここで試合終了のブザー。下位に沈むピストンズからの1勝ではあるが、ヒートにとっては大きな1勝となった。

「自分にどれだけ出番があるかは分からなかった」とハズレムは言う。「でも、毎日のように誰かがケガで欠けていく中では『自分がやらなくては』という意思を全員がそれぞれ持たなければいけない。僕だけじゃなく、若手も同じ。今この時期にみんなが成長することは、絶対にこの先に生きる。シーズンが進むにつれて若手も含めたメンバーで戦えるようになる。それが最後には大きな武器になるよ」

『お飾り』ではない自分のパフォーマンスについて、ハズレムは誇りを持ってこう語る。「表には見えない部分で貢献することが増えたけど、僕はまだまだ若手と一緒に競い合えるよ。君たちは目にしないけど、僕は毎日、このリーグでトップレベルのジミー・バトラーとやりあっている。彼のアタックを止めて、それを試合に出た時に生かそうとしている。彼らの準備をサポートしながら、自分の準備もしているんだ。だから自信は常にあるよ」

マイアミのファンは、地元出身の『ヒートの象徴』の活躍に大きな喝采を送った。試合直後のインタビューの最後にファンへのメッセージを求められたハズレムは、厳しい表情を笑顔に変えてこう答えた。「みんな、メリークリスマス!」

https://youtu.be/xTjJaTlAKXE