「呼んでいただいた以上、全力で『川崎』の名を背負って頑張っていきたい」
藤井祐眞は拓殖大を卒業後、NBLの東芝ブレイブサンダース神奈川(現川崎ブレイブサンダース)に入団し、8年目を迎えている。
藤枝明誠の2年生だった藤井がウインターカップで挙げた79得点は現在も破られていない1試合の最多得点記録だ。その爆発的な得点力は現在も錆びついておらず、Bリーグ誕生以降も平均10得点前後をコンスタントに記録している。キャプテンを任された今シーズンも、ここまで平均12.5得点とキャリアハイを更新する勢いだ。
チームメートの篠山竜青は、前フリオ・ラマス体制ではキャプテンシーとディフェンス力を評価されて日本代表に定着。東京オリンピック出場こそ叶わなかったが、『日本代表の顔』としてワールドカップ出場に大きな貢献を果たしてきた。藤井は川崎でその篠山のバックアップガードを務めてきたが、平均得点は藤井の方が高く、アシストなどの主要スタッツも篠山と同等か、それ以上の数字を残してきた。もちろん単純な数字だけの比較に意味はないが、これまで藤井が代表に選ばれないことに違和感を持っていたファンも多いはずだ。
身長は178cmと高くはないが、強靭なフィジカルと抜群の跳躍力を有し、チェイスダウンブロックを見舞うシーンを何度も見せてきた。底なしのスタミナを持ち、前戦から激しいプレッシャーをかけ続け、コートに身体を投げ出してボールを奪う。ディフェンスの名手でもある彼は、2シーズン連続でBリーグのベストディフェンダー賞を受賞している。
このように攻守ともにハイレベルで、先発でも遜色ない実力を持つ彼は、2019-20シーズンに『レギュラーシーズンベスト5』と『ベスト6thマン賞』を同時受賞するという、矛盾するような快挙を成し遂げている。
トム・ホーバス新ヘッドコーチは高さではなくフットワークで守り、高速トランジションと3ポイントシュートに繋ぐバスケで女子日本代表を世界の2位にまで引き上げた。彼が男子でどのようなバスケスタイルを構築するかはまだ分からないが、これまでのようなサイズアップの縛りがなくなり、スペシャリストよりもオールラウンダーを好むように思える。ハードワークを厭わないコンボガードの藤井が重宝され、このままベンチ登録の12人に食い込んでも不思議はない。
すべてのプレーを高いレベルで体現できる藤井が代表候補に挙がるのは必然。代表招集のリリースで彼は「呼んでいただいた以上、全力で『川崎』の名を背負って頑張っていきたい」と意気込みを語っている。すでに29歳と長く待たされたが、満を持して代表争いに加わる。