川崎の強みを無力化、パスがよく回り打ち合いで優位に立つ
ここまで2勝10敗と苦しむ茨城ロボッツが、ホームに川崎ブレイブサンダースを迎えた。今シーズンも9勝3敗と好調の強豪、川崎に対して苦戦が予想されたが、試合の多くの時間でリードしたのは茨城だった。
川崎の佐藤賢次ヘッドコーチが「しっかりウチに対して対策してきたのでディフェンスが機能せず、打ち合いの試合となりました」と語る展開で、第1クォーターで11得点を挙げたエリック・ジェイコブセンを筆頭に2点シュートを63.2%と高確率で決めた茨城が27-22と先行する。川崎は茨城のディフェンスを攻略できず。1対1を決め続けて13得点を挙げたニック・ファジーカスのおかげで何とか食らい付いた格好だった。
その後も点差は開かなくても茨城がリードする展開が続く。ファジーカスに中央をこじ開けられて逆転を許すも、続くポゼッションでチェハーレス・タプスコットがファジーカスとのスピードのミスマッチを突くバスケット・カウントで逆転し、主導権を明け渡さない。帰化選手のファジーカスにジョーダン・ヒースを筆頭とする強力外国籍選手を同時起用できる高さとパワーが川崎の強み。それを茨城はスピードに乗ったアーリーオフェンスと3ポイントシュートで打ち消し、川崎を相手に打ち合いで上回った。
そんな茨城のオフェンスをさらに勢い付けたのがフィリピンから来たアジア特別枠、ハビエル・ゴメス・デ・リアニョだ。チームへの合流が遅れて今月に入って試合に出始めたゴメス・デ・リアニョのチームへの順応が進み、この試合では13得点を記録。縦への突破力がある彼の存在により茨城の速い攻めは際立った。
テンポの速い展開の中で、福澤晃平が8、平尾充庸が7、多嶋朝飛が5とガード陣が快調にアシストを伸ばす。またマーク・トラソリーニもディフェンスを引き付けてはパスを回して6アシストを記録。チームのアシスト総数は31を記録した。
第4クォーターに入り、ファジーカスを休ませて藤井祐眞と篠山竜青の2ガードでスピードで対抗できるようになった川崎に逆転されるが、ここでもゴメス・デ・リアニョの3ポイントシュート、平尾の窮屈なジャンプシュートが外れたところをトラソリーニがタップで押し込んだりとオフェンスの好調は止まらず食らい付く。そしてヘジテーションで引き付けた相手をよく見た福澤が平尾の3ポイントシュートをアシストし、続いて自ら3ポイントシュートをねじ込んで、残り1分で96-96の同点に追い付いた。
「川崎はミスが少ない、自分たちは真似しなければいけない」
勢いは完全に茨城にあったが、この先の1分間で出たのは『勝ちきる力』の差だった。アダストリアみとアリーナが大いに沸いた福澤の3ポイントシュート成功の直後、藤井のピックプレーに2人が釣られ、ヘルプに2人が寄ったことで他の選手がガラ空きに。右コーナーで待つ川崎の仕事人、長谷川技はここまで無得点だったが、大事な場面でやって来たチャンスを確実に決めて茨城の勢いを断ち切った。
ここから茨城は崩れる。慌てる必要はない場面で慌ててしまい、長谷川とファジーカスに挟み込まれた福澤のターンオーバーから速攻を浴びる。残り39秒でタイムアウトを取って仕切り直すも、本来あるべき冷静さはもうどの選手にもなかった。ファジーカスにヒース、パブロ・アギラールが並ぶビッグラインナップに対して正面から突っ込んでしまい、ボールに食らい付くことでセカンドチャンスを得るも、それでも正面から突っ込んでチャンスを潰してしまう。それまで39分間できていた、川崎の弱点を突く攻めを遂行できず、逆に川崎は試合巧者ぶりを見せてフリースローで突き放す。同点からのラスト1分で0-9のランを浴び、茨城は大金星を逃した。
平尾は「勝負どころでのターンオーバー、シュート精度、リバウンドがまだまだ自分たちには足りない。川崎は最後の最後、勝負を仕掛けてきたタイミングでミスも少ないし、しっかり組み立てられていた。自分たちは真似しなければいけない。明日またチャンスがあるので、しっかり修正したい」と語る。
茨城にとっては悔しい負けとなったが、B1初挑戦で苦戦は織り込み済みの状況で、シーズン序盤で川崎と接戦を演じられたことには意味がある。敗戦から学びを得て成長していかなければならない中で、今日は同じ負けでも収穫の多い試合となったはずだ。とはいえ、接戦をしたとは言っても今日の試合を勝ちに持っていくにはまだまだ相当な努力が必要となる。
一方で川崎は、試合巧者ぶりこそ発揮したものの、それ以外は見るべきものが多いとは言えない試合だった。ファジーカスは「自分たちの持ってる力を最初から出さなければいけないことが今の課題」と語る。勝った川崎にとっても反省の多い試合だっただけに、明日は今日を大きく上回るパフォーマンスが求められる。