ヨキッチへの最善の対策は「ダメージを与え続けて冷静さを失わせること」
現地11月8日に行われたナゲッツvsヒートは後味の悪い幕切れとなった。113-96でナゲッツが完勝を収めたのだが、試合終盤にニコラ・ヨキッチとマーキーフ・モリスが衝突、両チームの揉み合いへと発展したからだ。事の発端はヨキッチに対するモリスのハードファウル。パスを出そうと腕を上げ、がら空きとなったヨキッチの脇に、走り込みながら肘打ちを見舞う一発だった。だが問題が大きくなったのはここから。その直後、カッとなったヨキッチが、背中を向けていたモリスに背後からタックルを浴びせたのだ。
背後からの不意打ちを食らったモリスはしばらく立ち上がれず、ヨキッチはすぐに審判とチームメートに止められた。『仲間をやられた』ヒートの選手たちは収まらない。特にコート上で相手を煽ったとしてテクニカルファウルを受けたジミー・バトラーの怒りは試合終了後も収まらず、ナゲッツのロッカールームの手前で「チームバスの駐車場で待っているぞ!」と叫び、『騒動をエスカレートさせた』との理由でリーグから3万ドルの罰金を科されている。
フレグラントファウル2を宣告されたモリスには5万ドルの、そしてヨキッチには1試合の出場停止が科された。
この騒動はSNSを通じて両者の家族へと広がった。マーキーフとは双子の兄弟であるクリッパーズのマーカス・モリスは「見たか、あいつはマーキーフが背中を向けるまで待っていた」と投稿。ヨキッチが背後から不意打ちしたことを糾弾した。これに対し、ヨキッチの兄は「オレたち兄弟を脅すのはやめろ。先に汚いプレーをしたのはお前の弟だ。まだやりたいのであれば、受けて立つ」と返している。
ヒートの指揮官、エリック・スポールストラは試合後の会見で「危険で許されない行為」とヨキッチの反撃を非難している。そのヨキッチは「愚かな行為だった。ああいう反応をすべきではなかった」と反省のコメントを残している。
プレーが止まった後のヨキッチの暴力行為は許されるものではない。しかし、言葉にしなかったが彼にも言い分はある。彼はずっとハードファウルの餌食となっている。得点もアシストもできる万能のポイントセンターを止めるには、激しいマークは必須だが、今はどのチームも『ヨキッチをイライラさせるために』過剰に激しく削りに行っている。
一昨シーズンのプレーオフでドワイト・ハワードがオンボールだろうがオフボールだろうが常にフィジカルに仕掛け、彼のストレスをひたすら溜めさせる作戦が功を奏したことで、その傾向はさらに強くなった。昨シーズンのプレーオフでは、サンズ相手に0勝3敗と追い詰められた試合でイライラを爆発させたヨキッチが乱暴にスティールを狙ってキャメロン・ペインの顔を殴ってしまい、第3クォーター途中で実質的にナゲッツは試合を放り出すことになった。
昨シーズンのMVPとなったヨキッチはそう簡単には止められない。彼を止める最も簡単な方法は試合を通してあらゆる方法でダメージを与え続け、冷静さを失わせることだ。モリスとの一件でヨキッチが受けた肘打ちのシーンをよく見ると、肘と同時に膝も入っている。ヨキッチは数試合前に右膝を痛めていたばかり。ここを狙われたことが彼をキレさせた決定打となったのだろう。その直前、バム・アデバヨのシュートがヨキッチに阻まれて外れていたのだが、ナゲッツの速攻を止めるためだとしても、身体ごと飛び込み急所を狙うモリスのファウルは行き過ぎたものだった。
今のところ、審判は彼を守ろうとしない。ヘッドコーチのマイケル・マローンはコート上での教え子の暴力を詫びながらも「二コラの気持ちは分かる」と擁護した。そして同時に「だが、それでも自分の感情をコントロールしなければいけない」とも語っている。今回の一件は次のヒート戦への遺恨を残しただけでなく、他のチームが彼を狙って削りにくる動機となるだろう。ヨキッチには酷な話だが、乗り越えるしかない。