佐藤涼成

起用法がズバリ的中の井手口孝コーチ「冴えてました(笑)」

福岡第一と福岡大学附属大濠のウインターカップ福岡県予選決勝は、伝家の宝刀であるプレッシャーディフェンスからの速攻でアドバンテージを得た福岡第一が69-60で制した。

福岡第一は新型コロナウイルスの影響で練習できない日々が続き、対外試合がほぼできない状態で予選に臨むことに。そのため、井手口孝コーチも「5対5ができたのが何週間か前。思ったような強化ができず、どんな試合になるのか怖かった」と不安を抱えていた。それでも、決勝では小まめにメンバーチェンジを繰り返し、佐藤涼成と轟琉維のダブルエースが得点を量産して、粘る大濠を退けた。

結果的にこのメンバー起用が勝敗を分けた。バックアップセンターのカマレムレマ・フランシスがハッスルし、セカンドユニットもスタートと変わらぬ強度を保った。指揮官は戦術と起用法が的中したことで笑顔を見せた。

「今日は3年生を多く出そうと。決して上手い留学生ではないんですけど、フランシスを使いました。スタッフも「『えっ?』て言ってたんですけど、ルーズボールとか頑張って300点です。使った僕が偉い(笑)。センターは大濠さんのほうが強く、勝っているところが何かと考た時にウチのガードのほうがイケる。『今日はお前らで全部点取ってこい』と。ガードのところの点数で勝ち、セカンドメンバーも繋いでくれた。10人くらい使ったのはなかなか珍しいです。シミュレーション通りのゲームになって、ちょっと冴えてました(笑)。当たる時もあるんです」

それでも、決して簡単な試合ではなかった。第2クォーターには最大15点のリードを奪ったが、そこから岩下准平に2連続3ポイントシュートを許すなど、2点差に迫られて前半を終えた。苦しい時間帯、井手口コーチは「我慢してバスケットをしろ」と叫んだ。その我慢が実を結び、何度迫られても跳ね返す強さを見せ、逆転を許すことなく勝ち切った。井手口コーチは言う。

「佐藤と岩下(准平)君の我慢比べなんです。いつも佐藤のほうが先に切れてしまうので、我慢しろと。そこが勝負だと思っていました。ディフェンスに関してはよく頑張っていたと思う」

キャプテンの佐藤はコーチの期待に応えるパフォーマンスを見せた。前線からのプレッシャーディフェンスでボールを奪い、速攻を成功させるシーンは何度も見られた。このターンオーバーからの得点で大きく上回ることができたことが、勝利に大きくかかわっていた。佐藤も「オールコートディフェンスは最大の武器で、ここをしっかり強くというのをチーム全体で話していました。後半に向けてさらに強くできたのが良かったです」と胸を張った。

佐藤は「ミスから点差を縮められてしまった部分は、自分にとってこれから大きな課題になってくる」と、ダメな部分にも目を向けた。それでも「試合の経験が全然足りなかったのですごい不安だったんですけど、ここで力を発揮できたのはチームにとっても大きな自信となりました。ここからスタートという気持ちで頑張っていきます」と話し、ウインターカップに向けて確かな手応えをつかんだようだ。