富樫勇樹

Bリーグ通算600本目の3ポイントシュートは、守備の名手を翻弄する一発

10月24日、千葉ジェッツは88-71でアルバルク東京に快勝した。前日の第1戦はA東京が高さを生かして先勝していたが、この日の試合は指揮官のルカ・パヴィチェヴィッチが「千葉のモチベーションにマッチできず、ソフトに入ってしまった」と語ったように、ティップオフの瞬間から千葉が攻守にエネルギー全開。第1クォーターで36-17と大差を付け、第2クォーター以降もセーフティリードを保つ快勝となった。

第1クォーターの千葉はフィールドゴール17本中13本成功、うち3ポイントシュートは10本中7本成功と大当たり。中でも富樫勇樹は速い展開に持ち込むゲームメークをした上で14得点4アシストと突出した数字を残した。5得点と不発に終わった前日からの見事な復調であり、エースの富樫に引っ張られるようにチームもパフォーマンスを高めての快勝だった。

「シーズン前にはできるだけ波がないようにと言ったんですけど、逆に今はすごく波が激しいパフォーマンスになっていて」と富樫は反省しつつも、こう続ける。「でもそこは切り替えて。良い時悪い時があるのがこのスポーツなのでしっかり切り替えながらチームを勝たせることを一番に考えてやっていきたいです」

最高の第1クォーターを締めくくったのは富樫の3ポイントシュートだった。Bリーグでも屈指のディフェンス能力を持つ田中大貴を翻弄して決めたこの得点は、B1史上初となる通算600本目の3ポイントシュートとなった。この得点を富樫はこう振り返る。

「ショットクロックがないのでラストのシュートを打とうというだけで、ピックをしてドライブするフェイントを入れたことで大貴選手がちょっと遅れてきたので。決める決めないはもちろん大事ですけど、しっかりラストのシュートを打って相手にもう一回ボールを渡さずに終われたこと。一番意識しているのはそこです」

富樫勇樹

「監督次第では落とされてもおかしくないと思いながらやっている」

また、この日の試合は新たな日本代表ヘッドコーチに就任したトム・ホーバスが視察に訪れていた。フリオ・ラマスから指揮官が代われば選手選考の基準も変わる。ワールドカップ予選の初戦は1カ月後に迫っており、どの選手もアピールを意識するものだ。

それでも富樫は淡々とこう語る。「別に代表とか関係なく、プロでやっていく以上は上達していくよう全員が努力していると思うので、そこはあまり意識しないというか、常に同じ考えでやっています。オリンピックが終わって次からワールドカップ予選が始まりますが、まだ気持ちの中、頭の中で代表について意識したりとか考えたりすることはなくて、ヘッドコーチが決まったのも最近で、それまでどういう体制で行くかも分からなかったので」

富樫の場合、ホーバスの視線を感じるからと言ってプレースタイルを変えるわけではない。そこは身長の低い選手がトップレベルでやっていくために作り上げた自分のスタイルに自信があるからでもあり、変えることに意味を見いだしていないからとも言える。

「この身長でやっていく上で、もしかしたら代表はオリンピックが最後かもしれないと気持ちの上では思っていたし、監督次第では落とされてもおかしくないと思いながらやっているので、そこは監督次第です。だからと言って千葉でやるプレースタイルは変わらないので」

世界との戦いを見据える上で、富樫のスピードとシュート力を武器と見るか、サイズのなさを弱点と見るかで、評価は大きく分かれる。「それを評価してくれるんだったらもちろん頑張ろうと思うし、サイズのことでと言われればそれは理解しています。自分にできることを、まずチームを勝たせることが一番評価に繋がるので、と思ってやっています」

それでも、女子日本代表で銀メダルを獲得したスタイルをベースに新しい『日本のスタイル』を作るのならば、富樫の作り出すハイテンポなバスケ、そしてシュート力は必要とされるはずだ。

富樫は言う。「そうですね。オリンピックと同じ戦い方をするかどうかは分からないですけど、もしそうなったら自分にとってはプレースタイルが合っている感じになると思います。まあアピールするというか、評価してもらえるようにリーグで結果を残していきたいと思います」