菅野翔太

文・写真=鈴木栄一

「自分の力を試したい、トップレベルを肌で感じたい」

今オフの三遠ネオフェニックスは、チャンピオンシップ出場を果たしたBリーグ1年目からの成績ダウンを受けて、積極的な血の入れ替えを行なった。その期待の新戦力の一人が、福島ファイヤーボンズからの加入となる菅野翔太だ。ここ2年間はB2の中位だった福島からステップアップを果たす菅野は、190cmのサイズと3ポイントシュートを武器とするフォワード。大学卒業から地元の福島に4年間在籍し、オフに三遠からオファーが来た時の思いを次のように振り返る。

「プロとしてやっている以上、トップリーグでやりたいという気持ちははすごくあるので、オファーが来た時は本当にうれしかったです。地元の福島で4年間ずっと育ててもらった感謝もあるので、決断するのに時間はちょっとかかりました。ただ、自分の力を試したい、トップレベルを肌で感じたい思いが強く、最終的には地元を離れてチャレンジするという気持ちで来ました」

当然ながら、B2とB1ではレベルが違う。「B1とB2だと相当レベルの差もあると思うので、やっぱり最初は不安でした」と語る菅野だが、それも今は解消されている。「練習でチームのみんなとやっていく中で徐々に慣れていって、今はもうその不安はないです」

日頃の練習からB1の選手たちと切磋琢様することで感じられる成長への手応えもある。「みんな身体の使い方だったりが本当に巧いです。一つひとつのプレーの細かいところが上手なので、一緒にやっていても勉強になり、やっている中で自分もレベルアップしていると感じます」

菅野翔太

福島で生まれ育った『叩き上げ』が新たなステージへ

三遠を率いる藤田弘輝ヘッドコーチは、2014年から2シーズンは福島の指揮官を務めており、菅野とも師弟関係にあった間柄。それだけに「一緒にやってきた2年間があるので話しやすい」という関係は、新天地へのスムーズな順応へ大きな手助けとなる。

B1への挑戦を成功させるためのカギを、菅野は次のように見ている。「自分の持ち味は3ポイントシュートなので、ピック&ロールからポップして狙っていくこと。今までの3番に加え、4番でも起用されることになりますが、相手の日本人ビッグマンをディフェンスで止められれば自分がオフェンスになった時に攻められる自信はあります。まずは藤田コーチが求める身体を張ったディフェンスをして、そこからチームのオフェンスをしっかり遂行していくことです」

新たなステージでの挑戦を心待ちにする菅野だが、一方で地元の福島を思う気持ちに変わりはない。福島県出身のBリーガーといえば栗原貴宏(栃木ブレックス)、鎌田裕也(川崎ブレイブサンダース)らがいる。だが、この2人は大学から福島を離れてのバスケのエリート街道を歩んできた。一方の菅野は、言い方は悪いが高校、大学と全国的に無名の存在で、そこから福島でプロとして実績を積み重ねていた叩き上げだ。

だからこそ「僕も内気というか、あんまり前に出ていけない子供でした。福島出身の地元でプレーしてきた僕がトップカテゴリーで活躍することは、そんな子供たちに勇気を与えられる。福島からでも、そういう舞台を目指せる選手になれるという希望になります。そこは毎日の練習、試合でも考えてやっています」という強い思いを持っている。

故郷への変わらない愛情、そして新天地である三遠の力になりたいという決意。2つの確固たる思いを胸に、菅野はB2からB1へのステップアップへの成功を目指していく。