名古屋ダイヤモンドドルフィンズ

文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE

ボールシェアから走る展開に持ち込み主導権を握る

アーリーカップ東海大会の決勝は名古屋ダイヤモンドドルフィンズvsシーホース三河の顔合わせに。張本天傑が代表活動で不在、笹山貴哉がケガと、主力2名を欠く名古屋Dだったが、チームバスケットが機能し、ほとんどの時間帯でリードする内容でライバル三河を撃破した。

名古屋Dは立ち上がりから、行けると見れば個々が果敢に仕掛けるアップテンポな展開に持ち込み、スピードで優位を作る。これに対して受け身に回ってしまった三河は、第2クォーターにジェームズ・サザランドを投入してアイザック・バッツとインサイドで組ませるが、どちらもクリエイトできないために、人もボールも動かない重い展開一辺倒に。

名古屋Dはその逆で、ポイントガードの小林遥太、笠井康平がシンプルにパスをさばいて全員でボールをシェア。中東泰斗とジャスティン・バーレルがクリエイトの役割を担い、速い展開を作り出した。前半を終えて39-35とリード。この時点でファストブレイクポイントでは13-0とバスケットの内容では名古屋Dが上回っていた。

ただ、そんな状況で点差が離れなかったのは金丸晃輔の存在があったから。シンプルなスクリーンプレーで一瞬のフリーを作り出すと、不十分な体勢からでもシュートをねじ込み続ける鬼のスコアラーぶりで、試合を通じて両チーム最多の28得点を記録。名古屋Dを苦しめ続けた。

名古屋ダイヤモンドドルフィンズ

カミングス、クラッチプレー連発で勝利の立役者に

59-50と名古屋Dがリードして迎えた第4クォーター立ち上がり、重量級センターのバッツが試合開始からフル出場を続けているにもかかわらず決死のランニングプレー2連発を決めて試合の流れを変えようとするが、名古屋Dも引かずに壮絶な打ち合いとなる。

マーキース・カミングスが3人が守るゴール下に切り込んでバスケット・カウントをもぎ取れば、金丸がファウルを誘いつつ空中で体勢を崩しながらもジャンプシュートをねじ込むバスケット・カウント返し。チームでクリエイトしたコーナースリーのチャンスを中務敏宏が確実に決めれば、金丸も巧みな動きでパスを引き出し3ポイントシュートを返す。

残り2分を切って72-66と名古屋Dの6点リードという場面で、攻守の要であるバーレルが足を痛めて続行不能に。試合の流れが変わりかねないアクシデントだったが、ここでカミングスが独力で突破しシュート、これを外すも自ら拾ってねじ込み8点差に。続くポゼッションでも独力で切り込んであっさりとレイアップを決め、その次は相手の注意を自分に引き付けて小林のイージーレイアップをアシストした。

バーレルが負傷交代した後のチャンスをすべて得点につなげるカミングスの大仕事が決定打となり、最終スコア78-71で名古屋Dが三河を振り切って優勝を決めた。梶山信吾ヘッドコーチは「どこのチームもいろんなことを試しながらやっていたと思いますが、優勝できたことは素直にうれしい。笹山、天傑がいない中、10人で頑張ることができたのも皆さんの応援があったからこそ」と会場に集まったブースターに感謝した。

三河にとっては司令塔の橋本竜馬が移籍した後、個々の能力を引き出すゲームメーク、試合展開に応じたコントロールの面でまだまだ向上が必要といった印象。一方で名古屋Dは、笹山がいなくなってむしろボールシェアが進んだし、張本不在によるリバウンドも全員で拾うことで影響を感じさせなかった。そして何より『苦しい時のバーレル頼み』の傾向が強かったチームが、カミングスというクラッチプレーヤーを得たことは大きい。接戦をモノにする力を得たとなれば、今シーズンの名古屋Dは非常に楽しみなチームとなる。