「自分の役割はディフェンスとリバウンドと3ポイント」
「ケガをして自分のパフォーマンスが下がっている時に、プレーだけじゃなくて気持ちも下がったらダメだとずっと思っていました。気持ちだけは絶対に切らさないように、前を向いて頑張ろうっていう気持ちでした」
3ポイントシュート8本中5本成功の19得点を記録したナイジェリア戦を終えて、宮澤夕貴はケガとの戦いをこう振り返った。リオ五輪の後に3ポイントシュートに磨きを掛け、トム・ホーバスの下で『日本のエース』へと成長した宮澤だが、今年は肩のケガが長引き、無理にプレーを続けたもののフォームが崩れ、代表活動が始まっても調子はなかなか戻らなかった。その彼女がここに来て完全復活を印象付けるパフォーマンスを見せた。
「あとは本当にやるしかない。そこまで実際に戦ってきて、最後に選考落ちした人たちの分もやらなきゃいけないですし、強い気持ちを持ってコートに立とうとは思っています。自分の中では徐々にコンディションが上がっていると感じていて、あとは結果がすべて。でも結果だけじゃなく、シューティングをしている時の自分のタッチだとかを大事にして、気持ちを切らさずやろうって思っていて、強化試合の時もだんだん調子は上がってきている感じはありました。オリンピックでも結果は出ていなかったですけど、タッチは戻っていると感じていて、今回何本入ったかは見ていないですけど良かったです」
これまではエースとして、先発して30分近くプレーすることも多かったが、今の宮澤の役割は長岡萌映子とローテーションで出場するシックスマン。渡嘉敷来夢のケガで『超スモール』となったチームでスモールフォワードからパワーフォワードへとポジションを下げ、ディフェンスの負荷も増した。それでも「自分の役割はディフェンスとリバウンドと3ポイント」と言う宮澤は、自分の中で役割を整理し、迷いなくプレーできている。
「ドライブとかは他の選手がやってくれるので、自分が空いたタイミングでしっかりシュートを打つ、あとはディフェンスとリバウンド、走るところをしっかりやりたい。誰が出るか分からないので、出た時に自分の仕事をちゃんとやるように」
「もうブロックされてもいいから次の試合は打とうと思いました」
先のアメリカ戦では9本の3ポイントシュートを放つも成功3本の9得点と不発に終わった。それでも宮澤にとっては、これが一つの転機となった。「アメリカ戦ではもっと打てたと思いました。打ったらブロックされるんじゃないかと思ってワンドリついたりしたのがあって、もうブロックされてもいいから次の試合は打とうと思いました」と言う。宮澤自身がその積極性を持ったところに、チームメートから良いパスが出てきて、この結果が生まれた。
「あの時はパスが面白いように回ってきて、相手もクローズアウトしてくるんですけど、打ち切るところ。ピックした時にポップがメインになるんですけど、その部分でこの前のアメリカ戦では完全に対応されてシュートチャンスがありませんでした。今回はドライブでキックしてシュートだとか、スクリーンだけじゃない3ポイントシュートが多かった。流れの中での3ポイントシュートで結構打ちやすかった」と宮澤は振り返る。
町田瑠唯から宮澤へのホットラインは、宮澤が新たに加入する富士通レッドウェーブでも大きな武器になりそうだが、それはまだ先の話。日本代表ではどこからでもチャンスを作り、バランス良く得点できることが強みになっている。「フリースロー、2ポイント、3ポイントのバランスが大事とトムさん(ホーバスヘッドコーチ)がいつも言っていて、それが良い時は得点が伸びている、試合展開が良いことが多いです。3ポイントシュートが入ると相手が外を張って来るので、次は中が空く。そういうのが今日は良かった」
ただ、その中でも3ポイントシュートはやはり日本代表の生命線だ。これまでは三好南穂が引っ張ってきたが、今日のナイジェリア戦では林咲希と宮澤が爆発。こうなると相手は止められない。「本当にそう思います。どれだけ3ポイントシュートを決められるかによってインサイドが空いたりするので、アメリカ戦みたいな確率の低さだと世界とは戦えない。今回は結構入った印象なので、次の試合もしっかり決めきれるよう頑張りたい」
ここに来てエースが復活したことは、日本代表にとって本当に大きな力となる。決勝トーナメントでも宮澤を始めとする日本の選手たちの3ポイントシュート攻勢で、強敵をなぎ倒してもらいたい。