ティンバーウルブズのカール・アンソニー・タウンズは、インサイドの強さもあれば、3ポイントシュートを決めるシュート能力もある現代型のセンターとして、ルーキーシーズンから注目されてきました。昨シーズンはウルブズにジミー・バトラーが加わった関係でシュートアテンプトが3.7本減り、得点も25.1から21.3に下がり、スケールダウンした印象を受けます。そこだけを切り取って見ると「NBAの未来を担うセンター」という地位もジョエル・エンビートやニコラ・ヨキッチに譲ってしまいそうです。
ケビン・デュラントに比肩するリーグトップのシュート成功率
ティンバーウルブスが個人技をベースとしたオフェンスを構築していることもあり、プレー内容としても大きな進歩がなかったように感じる昨シーズンでしたが、1試合の印象ではなくシーズントータルのスタッツを確認すると、昨シーズンは3ポイントシュートを42.1%と高確率で決め、フリースローも85.8%と、こちらもシューター顔負けの高確率を達成しています。
シュートの上手いビックマンには、そのシュート力への自信から積極的に3ポイントシュートを打つものの、その結果としてインサイドプレーが減り、フィールドゴール成功率が下がってしまう傾向があります。センター登録された選手の中で平均3本以上の3ポイントシュートを打った選手は18人いましたが、その中でフィールドゴール成功率が50%を超えたのはタウンズだけでした。
センターに限らず、これだけの高確率を残せる選手は一握りしかいません。昨シーズンに50試合以上出場した選手でフィールドゴール成功率50%以上、3ポイントシュート成功率40%以上、フリースロー成功率85%を上回ったのはケビン・デュラントとタウンズの2人だけでした。タウンズはターンオーバーも減少させており、その得点能力はビックマンとしてもシューターとしても非常に素晴らしく、『新時代のセンター』としてその完成度の高さは突出しています。
華麗なだけではなくタフで献身的な現代型センター
タウンズが素晴らしかったのは得点面だけではありません。オフェンスリバウンドはリーグ11位の2.9本でしたが、タウンズよりも上位にいる9人は3ポイントシュートを打つタイプではありません。センタープレーヤーが「ゴール下で強いタイプ」か「アウトサイドもこなすスキルタイプ」に二分されてきた中で、アウトサイドシュートを武器にしながらリバウンドの意識も欠かさない献身性も見せたタウンズは、その両面でリーグトップクラスという希少価値の高いセンターなのです。
デビューから3年間で1試合も欠場がなく、この2年間はセンターで最も長い時間プレーし、最も長い距離を走っています。試合展開が早くなっている現代のNBAでは、フィジカル的な負担の重いセンターはプレータイムをシェアするのが一般的になりましたが、ゴール下で身体を張り、高確率でシュートを決め、そして誰よりも頑丈なセンターでもあるのがタウンズです。
『新時代のセンター』と言いながらも、根性論でも優れている希有な存在のタウンズ。毎年ケガ人で苦労しているウルブスを支えているわけですが、まだ22歳の若者に負担をかけすぎているのも事実で、チームにはコンディションとプレータイムの管理を徹底してほしいところです。
スタッツ以上の印象度が求められる新シーズン
これだけのスタッツを残しながらも、そこまで高い評価を受けていない理由はチームが勝てなかったこと、そしてディフェンス面の難にあります。オフェンスでは優れた状況判断でいち早くスペースを見付け、フリーで打てるポジションを取るのですが、ディフェンスになるとスペースを埋める判断が遅く、マークマンを離してしまい、またフェイクに簡単に引っかかる場面も多く見受けられます。
センター同士の個人の勝負では抑えることができるのですが、チームの連携で攻めてこられると途端に苦しくなります。特に苦手にしたのはロケッツのクリント・カペラで、フィールドゴール33本中25本成功と全く止められませんでした。カペラは得点のほとんどがガード陣との合わせのプレーなので、より賢くチームで連携して守らないといけません。これはタウンズ一人の責任ではないものの、正しいポジショニングやヘルプのタイミングといった戦術的な部分を学ぶ必要があります。
ルーキーシーズンから素晴らしい成績を残したタウンズは、3ポイントシュートとフリースローの確率を毎年向上させ、シューター顔負けの高精度の得点力を身に着けました。その一方で勝利のためにはディフェンス面での改善が欠かせません。オフェンスだけでなくディフェンスでも存在感を発揮し、スタッツ以上の印象度を残し、名実ともにウルブスの顔になることが新シーズンの課題です。