トレイ・ヤング

徹底マークをかわして35得点10アシスト「集中して戦えている」

カンファレンスセミファイナルの初戦を終えて、セブンティシクサーズの誰もが考えをあらためることになった。

ウィザーズとのシリーズを5試合で制した時、アリーナには「We want Brooklyn!」のチャントがこだました。そして今回、選手入場でジョエル・エンビードはお気に入りのプロレスラーであるトリプルHを従えて、自由の鐘を鳴らすド派手な選手入場で観客を煽った。膝のケガで出場が危ぶまれていたエンビードがこれだけのパフォーマンスでプレーする意思を示したのだから、会場に楽観的なムードが漂ったのも当然だ。

しかし、試合は第1クォーターから42得点とオフェンス絶好調のホークスが支配する。ホークスのエース、トレイ・ヤングはサイズのあるベン・シモンズ、経験豊富なダニー・グリーン、ディフェンスのスペシャリストのマティース・サイブルの誰がマークしても止められず、35得点10アシストと暴れ回った。ニューヨークと同様にフィラデルフィアのファンもヤングの集中を妨げようとブーイングと侮辱のチャントを合唱したが、それが逆効果なのは証明済みだ。

ヤングは自分でアタックするだけでなく、自分へのトラップやダブルチームの裏を突く効果的なゲームメークも見せた。ジョン・コリンズとボーヤン・ボグダノビッチがそれぞれ21得点、ベンチから出たケビン・ハーターが15得点とチームオフェンスが機能し、シクサーズの倍となる20本の3ポイントシュートを決めたことで打ち勝った。

シクサーズの指揮官ドック・リバースは「いきなり口にパンチを浴びたようなものだ。ホークスは我々よりもフィジカルでアグレッシブだった」と試合を振り返る。シクサーズは試合終盤になってようやく噛み合い、残り3分半での14点ビハインドから1ポゼッション差まで猛追したが、時すでに遅し。最後はベン・シモンズのフリースロー失敗が重なり、ホークスをとらえられなかった。

エンジンがかかるのは遅かったが、終盤のシクサーズの勢いは本物で、ホークスが敵地の雰囲気に飲み込まれてもおかしくはなかった。猛追された時間帯、ヤングはチームメートに「正しいプレーをし続けるんだ」と声を掛けていたそうだ。

ヤングはこう続ける。「僕たちはお互いを信頼し、アグレッシブに戦い、そしてプレーを楽しんでいる。全員が細かいところにまで気を配りながら、周囲に左右されずに自分たちに集中して戦えている。そんなチームのメンタリティが最近の試合では素晴らしい形で発揮できているし、僕はすごく気に入っているよ。スタッツは気にしない。ただ目の前の試合に勝つだけ。そうやって一歩ずつ前に進むのがプレーオフの目標だ」

敵地での初戦を勝ったことには大きな意味がある。ホークスとヤングはプレーオフの経験こそライバルに比べると見劣りするが、今はまさに1試合ごとに大きく成長している最中だ。一歩ずつ前に進むその先には、これまでとは違うホークスと、そのエースの姿があるはずだ。