来シーズンについては「僕自身は戻って来たいと思っている」
ニックスの偉大なシーズンは、最後は尻すぼみに終わった。ニューヨークのファンは「全員が成長して、プレーオフに返り咲いた素晴らしい1年だった」とこのシーズンを振り返るだろうが、プレーオフのことは誰も口にしないはずだ。口にはしなくても忘れられないファーストラウンドでは、『宿敵』となったトレイ・ヤングに散々にやられ、ジュリアス・ランドルとRJ・バレットはレギュラーシーズンの活躍が嘘のように消極的になり、1勝4敗でホークスに敗れ去った。
レギュラーシーズンでMIP賞を受賞したランドルは、プレーオフでは完璧に抑え込まれた。チームリーダーの彼がそうなっては、ニックスの躍進を支えた若い選手たちはみんな下を向いてしまう。ほとんど見るべきもののなかったシリーズで数少ないポジティブな出来事が、デリック・ローズの活躍だった。
5試合に出場してプレータイムは35.0分、チームトップの19.4得点を記録。今の彼の役割はセカンドユニットとして得点を繋ぐことだが、このプレーオフでは先発も任されてフル回転した。レギュラーシーズンは26.8分の出場で14.7得点だったのだから、相当な伸びだ。シーズン途中にピストンズから加わった時点で、ローズに期待されていたのは『若手にできない仕事をすること』であり、彼自身はその期待に応えた。
ただ、その彼も第5戦の終盤にはプレーしていない。第3クォーター残り3分にベンチに下がり、第4クォーターに入って10点前後まで差を詰めた状況でもコートには戻らなかった。
「前の試合で膝を打撲していた。スマートにプレーしなければいけなかったけど、あまり上手くはいかなかった。それでコーチは僕を第4クォーターに使わないと決めたんだ」とローズは説明する。
悔しさを隠せない若手たちとは対照的に、ローズはいつも通り淡々とした口調ながら「悔いはないよ。文句の付けようのないシーズンだった」と語る。「勝っているチーム、一緒にプレーするには最高のグループに加わったんだからね。みんなバスケをするのが大好きで、若いエネルギーに満ち、信じられないほどの相乗効果を引き出していた。もちろん、負けたのは辛いけどね」
結果が出た以上、ニックスは次に向かわなければいけない。若い選手にとってプレーオフの舞台に立ったことはポジティブな経験であり、躍進を1シーズンで途切れないための次のチーム作りが重要になる。そしてローズは契約満了によりフリーエージェントとなる。
ローズはニックス残留の意思を示すも、「僕が決めることじゃない。フロントがどう考えるかだ」と語る。「ニックスには大きな計画があって、そこに僕がまた入るかどうかは分からない。だから、このままにしておこう。僕自身は戻って来たいと思っている」
今オフのニックスでは、ローズだけでなくロスターの大半が契約満了を迎える。今後の核となるのはランドルにバレット、イマニュエル・クイックリー、ミッチェル・ロビンソンであり、ここにフリーエージェントの大物を加えることになる。ローズは言う。「ニックスで、ニューヨークでプレーしたいと思わない選手はいない。でもそれは僕が決めることじゃない。もっと大きな計画があるかもしれないからね。僕と同年代の選手なら、この若いチームのトップに立ちたいと思うものだ」
そしてローズ自身も、パフォーマンスに見合った契約が欲しいと考えているはずだ。キャバリアーズとベテラン最低保証額で契約した2017年夏、彼は文字通りゼロから再出発し、今シーズンの年俸も760万ドル(約8億3000万円)でしかない。自分の実績とパフォーマンスに見合った契約がいくらなのか、ローズが気にしていないわけがない。これはお金ではなく、プライドの問題だ。