カイリー・アービング

デュラントは憤慨「願わくばもうここに戻ってプレーしたくないよ」

ネッツとセルティックスのプレーオフファーストラウンド第4戦。TDガーデンの入場制限がなくなり、アリーナはセルティックスのファンで埋め尽くされた。彼らの『パブリック・エネミー』となったカイリー・アービングに向けられる敵意がどれだけのものかが注目されたが、試合を控えたジョー・ハリスはこの件をあえて無視して「金曜のアリーナは素晴らしい雰囲気だった。日曜はもっとすごくなるだろうね。プレーオフにスタンドの盛り上がりは欠かせないものだから」と語っている。セルティックスのトリスタン・トンプソンも「みんなアリーナからしばらく遠ざかっているから興奮しているだろうね。僕たちにエネルギーを与えてほしい」と、カイリーのことに触れようとはしなかった。

その第4戦でネッツの『ビッグ3』は期待通りのパフォーマンスを見せた。ケビン・デュラントはフィールドゴール20本中14本、11本のフリースローすべてを決めて42得点、カイリー・アービングはデュラントよりやや確率の落ちるフィールドゴール24本中11本ながらも、こちらもフリースロー11本をすべて成功させて39得点。ジェームズ・ハーデンは23得点18アシストを記録した。

セルティックスはケガを抱えながらプレーしていたケンバ・ウォーカーとロバート・ウィリアムズ三世が揃って欠場。第1クォーターこそジェイソン・テイタムがデュラントに負けないペースで得点を重ねて競った展開に持ち込んだものの、第2クォーター途中に突き放されると、挽回する力がなかった。第3クォーター中盤以降は20点前後の点差で推移。試合終盤にはセルティックスファンも敗戦を受け入れ、タッコ・フォールをプレーさせるようベンチに要求した。

アービングは第3戦では古巣ファンの大ブーイングに集中を乱されて16得点と不発に終わったが、この試合では見事なスコアラーぶりを披露。ネッツの指揮官スティーブ・ナッシュは「前回の試合ではあまり良いところがなかったが、彼はカイリー・アービングだよ。逆境をはねのけて、素晴らしい試合をする意思を見せてくれた」と、そのプレーを称賛している。

しかし、ケチが付いたのは試合後の事件だ。141-126で試合が決着した後、両チームの選手が健闘を称え合う中でカイリーは、コート中央のセルティックスのロゴをわざわざ踏みつけた。これに怒ったファンが、ロッカールームへ引き上げようとするカイリーに水の入ったペットボトルを投げつけて騒動に。カイリーの行為は子供じみているが、またファンの行きすぎた行為がクローズアップされることになってしまった。

ネッツにとっては3勝1敗でホームに戻る素晴らしい勝利だったにもかかわらず、試合後の会見でデュラントはプレー内容ではなく、カイリーを巡る騒動について語ることになった。「ファンには成長してほしい。1年半も家に閉じこもってストレスだったのは分かるけど、試合を見に来たら僕らがサーカスの動物じゃないことぐらい分かってほしい。自分の感情に振り回されずゲームを楽しんでほしいよ。カイリーのやったことに腹を立てているのは分かる。でも、それが子供じみたことをしていい理由にはならない。僕らは勝ったし、願わくばもうここに戻ってプレーしたくないよ」

中1日を挟んでブルックリンに戻り、第5戦が行われる。ここで勝てばネッツは勝ち抜けで、ボストンに戻って第6戦を戦わずに済む。カイリーを取り巻く騒動は別にしても、バックスはスウィープでファーストラウンド突破を決めており、ネッツとしてはセルティックスに勝ったとしても、戦いが長引けば次のシリーズが不利になる。『ビッグ3』が噛み合ったネッツがこのまま決めるか、セルティックスが意地を見せてもう一度ボストンでの戦いに引きずり込むか。いずれにしても、試合以外の騒動がフォーカスされない第5戦になることを願いたい。