Bリーグ開幕が迫ってきた。日本のバスケットボール界が大きく変わろうとしている今、各クラブはどんな状況にあるのだろうか。それぞれのクラブが置かれた『現在』と『未来』を、クラブのキーマンに語ってもらおう。
今夏の補強は、あくまで計画があった上での『投資』です
──現在のブレックスが抱える課題には、どんなものがありますか?
鎌田 経営の部分で言いますと、収入の部分でスポンサー収入が半分以上ある中で、やはりチケット収入は今後もっともっと増やしていかないといけない。試合の価値を認めて会場に足を運んでくれるお客さんを増やしていきたいです。会場のキャパシティが決まっている中で大胆なことをしづらい部分ではあるのですが、徐々にお客さんは増えています。昨シーズンの平均は2600人でしたので、今シーズンは3000人を目指します。ただ、まずはいっぱいにすることですが、その先のことも考えていかないと。マックスになった時、それ以降をどうしていくかが今後の課題にはなってきます。
──収容人数5000人以上のアリーナ、というクラブライセンスの問題もあります。
鎌田 県立の体育館が2021年に完成して、2022年から使えるようになります。そこは5000人以上を収容可能で、ホームにしていく予定です。それまでは現在のブレックスアリーナを満員にしていくのが目標になります。
──満員にするための施策はありますか? Bリーグが始まることで露出はかなり増えていると思いますが。
鎌田 ブレックスを取り扱ってもらうためのアプローチは最大限にやっていかなければいけないですね。あとは今後、Bリーグが始まって様々なプロチームがある中で、エンタテインメントを自分たちとして強化しないといけない。旧bjリーグのチームは高いクオリティで盛り上げてやってきました。そこに負けないような、非日常のエンタテインメント空間を作っていく。そこに来たお客さんが、いつもと違う時間を過ごせる。バスケットを中心に、そういったアリーナの空間作りが必要です。
──旧bjリーグのクラブを参考にしたりはしますか?
鎌田 天吊りビジョンをやっていたり、照明や音響設備にかなり投資しているクラブもあるので、良い刺激になります。そこがスタンダードになってくると思うので、まずは追い付き、そして追い越していきたいです。
──栃木ブレックスは、バスケットファン以外にも知名度が高いと思います。そこには田臥勇太選手の存在が大きいのではないでしょうか。
鎌田 田臥はバスケット界でずっと取り上げられている存在で、そこはブレックスの強みだと思います。今は他の選手も田臥とともに様々なメディアに取り上げていただいています。日本人初のNBAプレーヤーという肩書きはありますが、田臥はプロバスケットボール選手として、ずっと本気でバスケットに向き合う姿勢が一番の魅力で、そういった部分がメディアはもちろん、他のチームメートやファンの皆さまに愛されている理由だと思います。
──竹内公輔選手とジェフ・ギブス選手。Bリーグ開幕を控えて、この夏は大きな補強をしました。
鎌田 過去2シーズン、セミファイナルで敗退している状況ですから、チームを強化する必要はあります。その夏は、これまでいた選手のほとんどが残ってくれたのが、まず良かった。そのおかげで昨シーズンに何が足りなかったのか、補強を絞り込めたというのがありますから。その中で竹内やジェフが必要だということで、今回獲得に至ったというわけです。
──優勝するためにかなり思い切った投資をしたわけですが、ギャンブルとも言えるのでは?
鎌田 会社経営なので、ギャンブルではないです。あくまで経営計画があった上での投資です。
──お金を投じてチームを強くすれば、ちゃんとしたリターンが見込めるというわけですね。
鎌田 そうです。補強で戦力を強化していると思われがちですが、大学から新卒で入団して下部チームからスタメンになったり、練習生が2シーズン目に正契約を獲得し試合に出ていたり、今いる選手はかなりの努力をして今の地位を獲得しています。スター選手を集めているわけではないことは分かっていただきたいです。古川(孝敏)も現在、代表に入っていますが、彼もこの数年で非常に伸びた選手です。日々の練習から努力をし続けている結果、今では代表でもかなりプレータイムをもらい活躍できるようになりました。
──ブレックスで伸びている選手がまずはいて、そこで足りないところを補強しているわけですね。
鎌田 そうです。補強すべき部分が絞られた上で、そこにアプローチしています。私たちは何としてもBリーグの初代王者になろうと考えていて、選手もそれで一丸となっています。新加入選手も、このチームだったら日本一になれると感じて来てくれています。そういう意味で、今シーズンの補強は本当にうまくいったと思います。
──竹内選手はブレックス移籍会見で、田臥選手と古川選手に「ここがバスケをやるには一番良い環境だから」と勧められたのが決め手になったと話していました。バスケに打ち込む環境には自信をお持ちですか?
鎌田 そうですね。もちろん私はGMという立場で、そう説明しています。ただ、すでにブレックスにいる選手が「このチームの環境は大丈夫だよ」と言ってくれるのは、非常に説得力がありますから。まだまだですが、そういった良い環境を作ってこれたところは間違っていなかったと思いますね。