『オフェンスに振り切る』痛快バスケのナゲッツで復活を期すアイザイア・トーマス

2018/08/14
NBA&海外
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アイザイア・トーマス

文=神高尚 写真=Getty Images

昨シーズンのナゲッツはニコラ・ヨキッチ、ギャリー・ハリス、ジャマール・マレーの若手を中心に、オールスターのポール・ミルサップも加えて期待値の高いチームでしたが、ティンバーウルブスとの最終戦に敗れプレーオフを逃しました。2016-17シーズンもトレイルブレイザーズと最後まで熾烈な争いを繰り広げながらプレーオフ進出を逃しており、2年続けて失意のシーズンとなっています。

そのナゲッツはこのオフにアイザイア・トーマスの獲得に成功しました。昨シーズンはケガの影響もあり苦しい時間を過ごし、低調なプレーぶりに批判を受けることもあったトーマスですが、オフになるとケガの完治をアピールしており、新たなチームで心機一転、再起を図ります。

『NBAで最も小さな選手』が必要とするチームスタイル

身長175cmとNBAで最も小さい選手でありながら高い得点力を発揮するトーマスは、かなり特殊な選手のため、加入すればそのままチーム力のアップになるとは言い切れない面もあります。昨シーズンは1月にケガから復帰したキャブスでプレーの低調さから批判された一方で、レイカーズにトレードされると25分以上プレーした試合でチームは5割の成績を残すなど、負け癖がつき始めていたチームに快進撃をもたらす働きを見せてもいます。

トーマスがコートにいる時のレイカーズはオフェンス力が一気に高まりましたが、トーマス本人のスタッツはキャブス時代と同じくフィールドゴール成功率は40%を下回ったままでした。それでも速いテンポで仕掛けていくリズムが若いレイカーズにフィットし、速攻での得点が大きく伸びるなど、多少強引でもシュートに繋ぎ、ディフェンスを引き付けてのアシストもしてくれるので、周囲はトーマスを信じて走ることができました。

これらはレブロン中心にハーフコートで組み立てるキャブスではマイナスに作用しました。トーマスが出てくると試合のペースが大きく上がり、そこに周囲が追いつかないためオフェンスリバウンドに絡めなくなり、逆にカウンターの速攻を決められました。この特徴はデリック・ローズにも当てはまっており、ともにキャブスのシステムと個人の特徴が合わなかった故に苦しんだといえます。

早い展開が好きなトーマスですが、その分ミスも多いため自分を支えてくれるハードワーカーが必要になります。自分がチームの中心だったセルティックスでは、周囲はそんなハードワーカーで固められていましたし、レイカーズの若手たちもよく走ってくれました。支えてくれる選手がいないとトーマスの良さはチームの結果に繋がりにくくなります。

また、スピードがありファールをもらうのが非常にうまいので、ドライブで切り込むのは有効なのですが、サイズが小さいためインサイドではキックアウトパスが使えないとブロックされやすい特徴もあります。

セルティックス時代はアウトサイドシュートの上手いビックマンとのピック&ロールやハンドオフでのパス交換でミスマッチを作り、効果的なドライブができていましたが、昨シーズンは相棒の不在でドライブの得点が減少してしまいました。

シュートが全般的に不調だっただけでなく、インサイドでのイージーシュートが減少したこともフィールドゴール成功率を落とした一つの要因であり、同時にターンオーバーの増加にも繋がりました。テンポの良いパス回しとシュートのうまいビックマンもトーマスが活躍するには必要な要素です。

オフェンスに振り切ったナゲッツとトーマスの相性

新天地となるナゲッツはポイントセンターとしてトリプル・ダブルを量産するヨキッチだけでなく、ミルサップにトレイ・ライルズというシュートのうまいビックマンが揃っており、アシスト数がリーグ5位と小気味よくパスを繋いでいくスタイルが特徴です。しかも全員が走るのでリーグ8位の速攻、リーグ2位のオフェンスリバウンドとトーマスの好きな展開を発揮しやすい環境にあります。

もちろん良いことばかりではなく、最大の懸念事項はディフェンスです。早い展開が増えるため生じるカウンターのリスクを抑え、ハーフコートでもサイズの小さいトーマスが狙い撃ちされるのでフォローする必要があります。

この点でもナゲッツは問題のないチームです。なにしろトーマスに関係なくそもそも守れません。リードを保つためにゲームをコントロールし始めると積極性が失われ得点が取れなくなり、逆転されることもよくありました。ターンオーバーからの失点がリーグで最も多いなど、リスク管理ができない中で勝ってきたのがナゲッツというチームなので、最後まで攻め勝つことを目指すはずです。トーマスに期待されるのは、セルティックス時代のように数々のクラッチショットを決めて勝利をもたらすことです。

ただし、セカンドチャンスからの失点はリーグで5番目に少なく、ビックマンはリムプロテクトできる選手が並んでおり、ディフェンスでもトーマスをフォローすることは可能です。

頻繁にイージーシュートを許し被フィールドゴール率がリーグで最も悪いナゲッツなので、トーマスが加わったからといってこれ以上ディフェンス力を低下させることも難しいはずです。むしろセルティックス時代の調子を取り戻し、高確率でシュートを決めフリースローを稼ぐことが出来れば、カウンターのリスクが減り、余計な失点は減るかもしれません。

2年連続で目の前にあったプレーオフを逃したナゲッツは、コアとなる若手選手にミルサップとトーマスというオールスターが加わる豪華なチームとなりました。全神経をオフェンスに振り切ったような夏の補強により、そのチームカラーを色濃くし、さらに面白い試合を魅せてくれそうです。