ラッセル・ウェストブルック

同じ日、ホークスのトレイ・ヤングは観客から唾を吐かれる

ウィザーズはセブンティシクサーズ相手のプレーオフファーストラウンドで第1戦、第2戦を落とした。現地5月26日に行われた第2戦の終盤、ラッセル・ウェストブルックは右足首を捻挫し、コートを離れることに。ロッカールームへと続くトンネルの入口に差し掛かった際、その上の客席からポップコーンが投げつけられた。ウェストブルックは激怒するも、スタッツや警備員に制止されてロッカールームへと引き上げた。

そのファンはすぐに特定され、アリーナから退場させられたそうだが、ウェストブルックの怒りは収まらない。「これは僕の手に負えない。ファンには試合を楽しんでほしいが、一線を越える者もいる。道端で誰かが僕の頭にポップコーンをかけたらどうなると思う? 選手は守られるべきで、NBAがどうするか見てみたい」

ウィザーズのヘッドコーチ、スコット・ブルックスは「非常に無礼な行為」と、ブラッドリー・ビールは「不愉快極まりない」と非難した。

ウィザーズにとって、フィラデルフィアの試合ではまだ記憶に新しい事件がある。2019年12月、当時ウィザーズでプレーしていたアイザイア・トーマスが、タイムアウトの際に観客席に入っていき、自分を侮辱していたファンに詰め寄った。「両手の中指を立てて『Fuck you, bitch!』と何度も言われた。『失礼だぞ、僕は選手である前に一人の人間だ』と言うと、彼は謝罪した」とトーマスは説明している。それでもNBAは選手が観客席に立ち入ることを禁じており、トーマスには退場処分と罰金が科された。

ウェストブルックにとっても今回のケースは初めてではない。4年前にはフィラデルフィアでファンに突き飛ばされたし、2年前にはユタで暴言を吐いたファンと口論になっている。

ウェストブルックは言う。「これまでも事件はたくさんあった。自分たちがアンタッチャブルな存在だと思っているから、彼らは言いたい放題だ。僕は見て見ぬふりをすることを学んだ。でも、そうするのも限度がある。試合会場のファンが好き勝手なことをしたり侮辱するようなことを言ったりできないように、何らかのルールを作るべきだ」

「今回が初めてじゃない。同じようなことが繰り返されることにうんざりしている」

客席に誰もいなかったアリーナにファンが戻って来た時には、そこに生まれる熱狂や緊張を誰もが歓迎した。しかし、そこには問題も出てくる。相手チームのファンから『敵』と見なされる選手は人種差別を含む暴言や侮辱を浴び、時にはポップコーンまで投げつけられる。同じ日にはニックスファンの『敵』となったホークスのトレイ・ヤングが観客から唾を浴びせられている。

ヤングはコメントしなかったが、チームメートのケビン・ハーターは「ラス(ウェストブルック)に起きたこともトレイに起きたことも許されない。アリーナはそういう場所じゃないんだ。もし何の障壁もなくNBA選手と対面してそんなことをしたら、自分の思い通りにはならない。そのことは覚えておいてほしい」とコメントしている。

「見て見ぬふり」では状況は良くならない。選手たちはこれを機に、声を上げることになりそうだ。