ニコラ・ヨキッチ&デイミアン・リラード

マレー不在でリラード&マッカラムはディフェンスで消耗せずに済む

新型コロナウィルス感染拡大の関係でオフが短かった今シーズンは、特にプレーオフで勝ち進んだチームほど欠場者が多く、チーム全体のコンディション管理に苦しみました。カンファレンスファイナルに進んだ4チームのうち、レイカーズとセルティックスは7位でプレーインに回り、ヒートも何とか6位に滑り込んだ形で、短いオフで十分な準備ができなかったことが大きな影響を与えたと言えます。

そんな中で唯一、ナゲッツだけが西カンファレンスの3位と健闘しました。しかし、試合が緊迫すればするほど勝負強さが輝くジャマール・マレーは左膝十字靭帯断裂の大ケガを負い、戦線離脱となっています。彼を欠くプレーオフではディフェンス面の重要性がより高まります。

MVP当確と言われるニコラ・ヨキッチに引っ張られ、開幕からオフェンス面では機能していたナゲッツですが、トレードデッドラインでアーロン・ゴードンを獲得したことでディフェンス面でも安定性が増し、4月以降はリーグ最高成績とマレー不在を感じさせない結果を残しています。

しかし、ウイングディフェンスを強化した一方でガード陣のディフェンスには不安が残ります。ファーストラウンドで対戦するブレイザーズはデイミアン・リラードとCJ・マッカラムのガードコンビが中心となるだけに、ナゲッツからすると避けたかった対戦相手かもしれません。

ドライブに対してはチームディフェンスでカバーできるものの、高いシュート能力を誇るリラードとマッカラムは1on1からアウトサイドシュートで得点を奪ってくるだけに、個人のディフェンス力が重要です。ノーマン・パウエルやカーメロ・アンソニーも含めて5月のブレイザーズの3ポイントシュート成功率は45%を超えており、アウトサイドから打たせない対応が求められます。

キーマンになるのは178cmと小さいファクンド・カンパッソです。高さで打ちきられてしまうことは仕方ないですが、平面でボールを奪い取るディフェンスをすることで少しでもリズムを乱していくことが求められます。特に細かいステップワークからのジャンプシュートを使ってくるマッカラムには2年前のプレーオフで平均26.4得点を奪われており、ナゲッツにとってはリラード以上に苦しめられた相手でした。サイズが小さいからこそフットワークの良いカンパッソがマッカラムから自由を奪うことが求められます。

一方のブレイザーズからすると、ナゲッツの強力なフロントラインを止めるのは容易ではありません。変幻自在のポジショニングでパスワークを作りだすヨキッチがディフェンスを崩し、超高確率で決めてくるマイケル・ポーターJr.を止めるのは極めて難しく、高いディフェンス力を誇るロバート・コビントンとユスフ・ヌルキッチを擁していても苦戦が予想されます。

ただ、ブレイザーズからするとマレー不在により、リラードやマッカラムがディフェンスでエネルギーを消耗しなくて済みそうなのは大きなメリットです。ディフェンスの弱点を使われるリスクが低い相手はブレイザーズにとって戦いやすく、オフェンスで取り返していくスタイルを徹底できます。

今シーズンのクラッチタイムにおけるフィールドゴール成功率が2位のブレイザーズに対し、ナゲッツは1位と勝負強さでは互角です。エースに絶対の信頼を寄せるブレイザーズはロゴショットでも迷いなく打つリラードと、多彩なフィニッシュスキルでタフショットも辞さないマッカラムがディフェンスがどう守ろうが打ちきっては決めていきますが、ナゲッツも巨体に似合わぬステップワークを使い、コンタクトしながらでも鮮やかに決めるヨキッチと、誰も届かない高い打点の3ポイントシュートで打ち抜くポーターJr.で一歩も引かないバトルを展開することになりそうです。

相手の長所を消しに行く対策がぶつかり合うのがプレーオフの醍醐味ですが、ナゲッツとブレイザーズの対戦カードではお互いの長所を封じ込める明確な武器が足りません。毎試合が接戦となり、終盤の競り合いで手に汗握るシリーズになりそうです。