ヒートはバトラー&アデバヨ中心の多彩な攻めで昨シーズンの再現を狙う
昨シーズンのバックスはリーグ最高成績を挙げたチームでしたが、プレーオフでは1回戦こそマジックを無難に下したものの、続くセミファイナルではヒートに弱点を徹底的に突かれ、1勝4敗で敗れ去りました。ヤニス・アデトクンボとの契約更新に成功して、意気込み高く迎えた今シーズンですが、レギュラーシーズンの戦いぶりはプレーオフでの反省点を生かしたとは言い難いものです。むしろ、これまで以上にヤニス・アデトクンポやクリス・ミドルトンのアイソレーションに頼る回数が増えており、戦術的な積み上げがない中でヒートと対戦することには大きな不安があります。
今シーズンも破壊的な能力を発揮したアデトクンポですが、フィニッシュスキルの改善は小さく、80%以上の確率で決めるゴール下を除けば、ペイント内でもフィールドゴール成功率は35%程度に留まっています。ヒートのディフェンスは3ポイントシュートを打たせること以上に、ドライブを始めるとゴール下まで侵入したがるアデトクンポの特徴を見切った対応でコースを限定し、スピードで抜け出すか、スピンムーブかの2択しかない状況に追い込みました。
シーズン中はバックスが2勝1敗とリードしているものの、アデトクンポは平均16.7得点と抑え込まれており、この関係性はプレーオフでも続きそうです。それでもバックスが勝ち越せたのはアデトクンポ以外で効率良く得点できたからで、特に勝った2試合でいずれもチームで最も多くのシュートを打ったドリュー・ホリデーは、今シーズンに加わった新たなオプションです。戦術的な積み上げには乏しいものの、ホリデーの存在はヒートを悩ませることになります。
強力な個人能力を使って高確率で決めてくるアデトクンポとミドルドンですが、そのプレーはバリエーションに乏しく、磨き上げた得意の武器させ封じ込められれば停滞します。これに対してホリデーは2人ほどの破壊力はなくても、緩急を織り交ぜたプレーで惑わせてくるため、どう守るにしても完全に止めるのは難しい選手です。ヒートはビクター・オラディポをケガで欠き、スピードのあるガードを止めるディフェンダーが足りていない事もあり、バックスの展開になるとすればホリデーの出来がカギになるでしょう。
ヒートのオフェンスはバックスほどの力強さはないものの、ジミー・バトラーとバム・アデバヨを中心とする攻撃パターンは多彩で、6人が平均2桁得点を記録しています。的を絞らせないオフェンスでファイナルまで進んだ昨シーズンの再現を狙いますが、シーズンを通して入れ替わりで離脱者が相次いだこともあり、昨シーズンほど磨き上げられたわけではないのが気がかりです。
特に試合の終盤になっていくにつれシュート成功率が落ち、オーバータイムでは3ポイントシュートが17%しか決まっておらず、4試合すべてに負けています。昨シーズンはプレーオフになるとルーキーだったタイラー・ヒーローまでも勝負強さを見せつけましたが、今シーズンも再現できるかは未知数です。
プレーオフでのヒートの怖さを最も知っているのがバックスかもしれません。それでも、優勝するには避けては通れない対戦相手です。東カンファレンスで最も戦術的多彩さを持つヒートを倒せば、他のチームにも自分たちのスタイルを貫いて戦うことができます。ファーストラウンドからタフな相手を迎えることになりましたが、昨シーズンのリベンジを果たすとともに、長いプレーオフを勝ち抜くための勢いを手にしたいところです。