デリック・ローズ

足首のケガは問題なし「できる限りハードにプレーしなきゃならない」

デリック・ローズは今も軽視できないスコアリングガードだ。史上最年少でMVPを受賞した時から10年が経過し、その大部分はケガとの戦いだったが、今のローズは膝の大ケガ以降で最高の状態にある。かつてのような爆発的な身体能力は見せられないが、自分の身体のことを知り、試合の流れと自分のリズムを合わせる術を学び、自らのプレースタイルを再構築した。経験を生かしたプレースタイルにはなったが、ベテラン臭いわけではない。オフェンス感覚は常に研ぎ澄まされ、常に自分で得点を狙いに行く気配をうかがわせる。相手にとっては実に厄介な選手に違いない。

ベンチから出るオフェンスの切り札、という役割は特別なものではないが、ローズは特別だ。相手のプレッシャーを落ち着いてかわし、パスでプレーメークすることも、自分でアタックすることもできる。もともとの武器であるフローターに加え、それより距離のあるミドルジャンパーの精度の高さが、そのプレーの幅を広げている。ニックスの主役はジュリアス・ランドルだが、ローズ抜きで東カンファレンス4位という成績は望めなかった。

「レギュラーシーズンの結果はポジティブに受け止めているよ。足首を捻挫して練習でも試合でも動きが制限されているけど、長引くようなものじゃない。チームはみんな集中しているし、街がザワついてるのも良い感じだね」とローズは静かにプレーオフへの意気込みを語る。

プレーオフ1回戦の相手はホークス。レギュラーシーズンでは3度の対戦で全勝している相手だが、ローズは「それは関係ない」と言う。「みんな理解しているから心配ないけど、レギュラーシーズンとは全く違う試合になる。1試合の持つ重みが違うし、インテンシティもすごく高くなる。だからまずはホームで戦う初戦と第2戦に集中して、できる限りハードにプレーしなきゃならない。目の前の1試合に集中してやっていくしかないけど、特に初戦の入りはすごく大事だ」

ホークスとの1回戦を前に、トレイ・ヤングをマークする先発ポイントガードの起用について、レギュラーシーズンを通じて先発していたエルフリッド・ペイトンに託すか、ディフェンス重視でフランク・ニリキナに変えるべきかでニックス周辺は盛り上がっている。それてもローズについての議論は存在しない。彼はシックスマンとして、必要な時に求められる仕事をする。そこへの信頼が揺らぐことはない。

ローズは足首のケガで5月13日のスパーズ戦を欠場し、続くレギュラーシーズン最後の2試合は調整の意味合いでのプレーとなったが、それまでは絶好調だった。優勝候補であるレイカーズとクリッパーズ、ナゲッツ、サンズとの対戦を含む6試合でフィールドゴール成功率は69.6%、3ポイントシュート成功率は56.5%の平均22.0得点を記録している。

ローズにとってはティンバーウルブズ時代の2018年4月以来、3年ぶりのプレーオフ。この時の彼はシーズン途中にキャバリアーズから移籍して来て、プレータイムは安定せずウルブズ加入後の平均得点は5.8しかなかったが、プレーオフになると突如として爆発。チームは1回戦でロケッツに1勝4敗で敗れたものの、ローズは平均14.2得点を挙げている。

当時は膝の状態もまだまだで、力をセーブしてプレーせざるを得なかったが、今の彼は良いバランスを保ってコートに立つことができている。足首の状態が彼が言うように「長引くものではない」としたら、このプレーオフでローズは大仕事をやってのけるかもしれない。『第2の全盛期』の予感に、ニューヨークはザワついている。