本橋菜子

文=丸山素行 写真=鈴木栄一

鮮烈デビューから信頼度は右肩上がり

9月22日に開幕する女子ワールドカップに向けた国際強化試合『三井不動産カップ』を、3戦全勝で終えた女子日本代表。長らく代表を支えてきた吉田亜沙美と大﨑佑圭がチームを離れ、渡嘉敷来夢が足の負傷により帯同せず、藤岡麻菜美もケガが完治していないため欠場となったが、主力と若手、そして新戦力すべての選手が持ち味を発揮しての全勝は価値あるものだった。

特に6月8日のチャイニーズ・タイペイ戦で12アシストを挙げ、圧巻の代表デビューを飾った本橋菜子は、続くカナダとの第1戦ではチームハイの17得点を記録するなど、3試合すべてで結果を出し、代表生き残りへ最高のアピールができたと言っていいだろう。

本橋も「自分では全然分からないですけど、自分の今持っている力は全部出しきれているので行けると思っています」と代表定着に自信を見せた。その自信はプレーに表れている。カナダとの第2戦でも、ベンチからコートに入るや否やドライブから得点を記録。その後も強気なボールプッシュで日本が目指す速い展開を操り、的確な状況判断でベストなプレーを選択した。

代表で活躍するには外国人選手とのマッチアップでそのサイズ感に対応することがまず求められるが、本橋に不安はない。「大きい選手がマークについた時はスピードで勝てる自信がついてきました。ブロックされると思ったら、もうワンドリブルついて外に出たりとか、そういう状況判断はできるようになりました」と、堂々たるプレーを解説する。

本橋菜子

「ここまで残れただけでも奇跡だと思っているので」

もっとも、代表で生き残るのは簡単な道ではない。吉田が代表を離れた後、先発起用されている町田瑠唯、ケガからの回復が待たれる藤岡、3ポイントシュートに特化した三好南穂、そして本橋の4人で代表の座を争っており、おそらく1人がワールドカップを前に落選することになる。

本橋はデビューとなったチャイニーズ・タイペイ戦後に「町田さんみたいなパスもできないし、三好みたいにシュートもあまり入る方ではない」とライバルと比較し、ややネガティブな発言をしていた。だが続く2試合でも結果を残したことで自信は高まっている。

それでも「性格はマイペースって言われます」と自分で言うように、代表に絶対に生き残りたいという熱さは見られない。「ここまで残れただけでも奇跡だと思っているので、自分のプレーが出せればいいかなという感じでやっています」

「今回の国内試合の時は結構良いパフォーマンスができたと思うんですけど、まだ波があるので。コンスタントに力を発揮できるようにして、信頼してもらいたいと思っています」と語るそのその言葉も、またマイペースな本橋らしい。

それでも「自分のプレーが出せればいいかな」という言葉は偽らざる本心なのだろう。「これで選ばれなかったら選ばれなかったで後悔はないです」という本橋の言葉は、それだけ納得がいくプレーができたことの裏返しであり、嘘偽りない本心なのだ。

世代交代の中で激しいメンバー争いが繰り広げられている女子日本代表。その中に身を置きつつも無心でベストを尽くす本橋は、明確な結果を残している。トム・ホーバスヘッドコーチの判断はいかに。