町田瑠唯

文・写真=鈴木栄一

『超高速スモールバスケット』を引っ張る存在

女子日本代表は8月5日と7日にカナダ代表を相手に連勝し、9月のワールドカップへ向けてチームが順調に成長していることを示した。絶対的なリーダーとして長らく代表の屋台骨となっていた吉田亜沙美の不参加により、ポイントガードの座を巡る争いは激化しているが、その中でも一歩先行しているのが町田瑠唯だ。長らく吉田の2番手を務めた町田が先発へと繰り上がり、ここまで日本国内で実施された3つの強化試合すべてで先発出場している。

日本は攻守の素早い切り替えからインサイド陣を含めコートにいる5人全員が積極的に3ポイントシュートを打つスタイルを志向している。『超高速スモールバスケット』を遂行するのに、抜群のスピードと視野の広さ、非凡なパスセンスを持つ町田は打ってつけの司令塔だ。

リオ五輪では若手として先輩についていく形の町田だったが、あれから2年が経過し、若返りが進む代表にあって立場も変わった。まだ25歳だが、今回のカナダ戦に参加したメンバーの中では学年で言うと3番目に。「いきなり年齢も上になって、若い選手も増えているのでそこは自覚と責任を持ってやっています」と、本人もチームを支える立場になったことを意識している。

リオ五輪、アジアカップとタフな国際試合を毎年経験することで、自身の成熟にも手応えを得ている。「リオの経験があったからなのか、歳を重ねたからなのかは分からないですがが、ある程度は落ち着いてプレーはできるようになって、周りをしっかり見られるようになってきたという思いはあります」

町田瑠唯

「ポイントガードの1番を譲る気はない」

今回の代表チームは、大﨑佑圭が外れ、渡嘉敷来夢もケガで不在と、インサイドのサイズと経験が不足していた。だが、インサイド陣にパスを供給する町田によれば別段の心配はないそうだ。「髙田(真希)さんがメインでやってくれていて、すごく頼りになりますし、長岡(萌映子)もずっと一緒のチームでやってきた選手なのでやりやすさもあります。他は若い選手が多いので、経験が足りないところはあります。ただ、彼女たちの良いところもたくさんあるので、そこを生かしていければと思います」

さらに町田は次のようにチームの底上げに自信を見せる。「4月の代表スタート時に比べると、若手が本当に伸びてきています。選手層が厚くなって、ベンチメンバーもスタートとさほど力が変わらないです。試合ごとに前の試合とは違う選手が活躍するのはとても良いことです」

そして、町田の中でも一つ大きな変化がある。「吉田さんが不在なので自分だ、というよりも、スタートで出させてもらうことが多くなってから意識し始めました」という、先発ポイントガードへのこだわりだ。

「今、スタートで出してもらっていることへの自覚と責任感はあります。(先発なので)ポイントガードの中では1番上の位置になっているのを譲る気はないですし、引き続きスタートで出られるように頑張りたいです」と強い決意を見せる。

代表の先発ポイントガードには「リュウ(吉田)さんの後継者になりたいし、自分でなければならないと思っています」と語る藤岡麻菜美もいる。内部での激しい競争はチーム力を高めるために大事な要素だ。これからワールドカップ開幕まで町田、藤岡がともに先発の座を求めて競い合っていくことが、代表のさらなる強化につながることは間違いない。伸び盛りの若手のステップアップだけでなく、先発の座を守るべく町田がどんな進化を見せてくれるのかも楽しみだ。