ブラッドリー・ビール

試合を通じて苦しむも、勝負どころで決定的なプレーを連発

東西それぞれのカンファレンスで8位シードを争う直接対決が行われたレギュラーシーズン最終戦は、『エースの力』の重要性を感じずにはいられない展開で、得点王となったステフィン・カリーに牽引されたウォリアーズと、試合終盤に意地を見せたブラッドリー・ビールを擁するウィザーズが制しました。

カリーは試合開始から8分間無得点でしたが、ディロン・ブルックの執拗なマークに苦労しました。カリーにとっては慣れている対応とはいえ、勝負の懸かった試合でのマークはより強烈となり、ボールを見ずに徹底したチェイスと常に身体を密着させてくる守り方によって、試合序盤はパスを受けることも厳しい状況でした。

カリーを囮にしたドレイモンド・グリーンのドライブや、控えのジョーダン・プールがアウトサイドから次々と得点を決めたことで、前半は何とか6点をリードしたウォリアーズですが、カリーは15本のフィールドゴールアテンプトがありながら13点止まりと、明らかにグリズリーズのディフェンスに手を焼いていました。

しかし第3クォーターになると、トランジションやオフェンスリバウンドなどブルックスのマークが外れている状態で生まれたシュートチャンスで、カリーは4本の3ポイントシュートを含む17得点のラッシュで一気にリードを広げました。試合トータルで46点を奪ったこと以上に、チャンスをつかんだ瞬間に勝負を決める爆発力はカリーならではでした。

ウィザーズのビールはケガからの復帰となった試合でしたが、なんでないミスを連発してし、よほど動きにくかったのか開始早々にテーピングを剥がしてしまう場面もあるなど、本調子から程遠いコンディションであることは明らかでした。前半はフィールドゴール11本中2本しか決まらず、ディフェンスでも一歩目の出足が極めて遅いなどチームの足を引っ張る出来。そのため頻繁にベンチに下げられていましたが、コーチ陣の判断に不満な表情を隠すこともなく、コートに出ることを望んでいました。

相棒のラッセル・ウェストブルックも、シーズン後半の働きすぎが祟ったのか、ビールが欠場していたここ数試合同様に疲労の色を隠すことができず、トリプル・ダブルこそ達成したものの、スピードに強いホーネッツディフェンスに対して、なかなか突破できず、第3クォーター残り2分40秒の時点でウィザーズは15点のビハインドを負っていました。

しかし、ここから試合終了までにビールとウェストブルックの2人で29点を奪い取り、逆転で勝利をつかみ取りました。特にビールはケガの影響が明らかだった前半とは別人のように果敢にドライブを仕掛け、守ってもホーネッツのスピードに負けることなく、最後まで走り続けました。本来なら試合に出るコンディションではなかったかもしれませんが、『エースの責任感』が肉体の限界を超えたかのようでした。

モラントとラメロはプレーインで『リベンジ』できるのか

一方で、大事な一戦で敗れたグリズリーズとホーネッツには、それぞれジャ・モラントとラメロ・ボールという若きスター候補がいましたが、いずれもカリーとビールのような存在感を放つことができませんでした。

9アシストを記録したモラントはゲームを作る役割はしっかりとこなしたものの、連携を遮断してくるウォリアーズディフェンスに対して、ドライブからシュートに行く判断が少なく、パスを狙いすぎて出しどころを失ってしまうシーンが目立ちました。通常のレギュラーシーズンの試合であれば、ここまで対策が練られることはありません。プレーオフさながらのディフェンスに『正しい判断』ができませんでした。

29得点を奪ったヨナス・バランチュナスの活躍が目立ったのも、モラントが自分で行く選択をしなかったことも関係しています。相手の対策を打ち破るのがエースの仕事だけに、モラントは強引にでも自分で決めきるプレーを増やす必要がありました。タフショットでも自分が決めきる意思を示したカリーとの差が大きく出てしまいました。

また、ビッグマンを並べるウィザーズに対して、ホーネッツはガードとウイングだけを起用してスピード勝負を挑むゲームプランで臨んできました。この狙いは完璧に機能し、チーム戦略ではホーネッツの圧勝でした。しかし、徹底してスピードのミスマッチを作って仕掛けたラメロは、チーム最多のフィールドゴールアテンプトとなりながら、手首のケガが影響してかドライブからのシュートタッチが極めて悪く、成功率が33%に留まったことがホーネッツの誤算でした。

同じポイントガードのディボンテ・グラハムは巧みなプレーで得点を重ねていただけに、試合終盤にラメロをあきらめてベンチに下げる選択肢もあったはずですが、最後までコートに立たせました。これは若きエースに苦しい状況を覆して勝利に導く奮起を期待されての起用でしょうが、ビールの圧力に屈してしまいました。

通常のシーズンであればモラントとラメロは歯がゆさだけを残してシーズンを終えることになっていましたが、今回はプレーインで『リベンジ』する機会が与えられています。場合によってはプレーオフ進出を懸けて同じ対戦カードに臨むことになります。若い2人が失敗を糧にステップアップできるかどうか、プレーインでの新たな注目点になります。